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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
誘拐された花と堕ちた令嬢
212/365

伯爵夫人の思惑

『姫様。大丈夫でしょうか?』

「うん?また魔物?」

『いえ、どの辺りでしょうか。雄花達が拠点としている場所の範囲辺りの植物から、雌花を追っている人間がいるという情報を入手しました。』

「雌花?」


 ケリンさん達は雄花である。雌花ではない。


『でな、植物の間で話題やら謝罪やらがごった返していてよく分かんねえんだが…その辺りで誘拐された雄花がいるとか、雄花が殺されたとか…まあ、よく分かんねえんだわ。』

「どう言うこと?」

『あれじゃ。植物の間でパニックになっていると考えるのが無難じゃの。じゃから何が正しいのか分からずここまで情報が流れないのかも知れぬ。』

「うーん。」


 私として疑問点は2つ。雌花の所在と、雌花弱すぎないかである。まず、ケリンさんが雌花はレアケースと言っている。話によると私の他に既に婚約している雌花がいるとのことだが…私同様どうせ監視されている。追われる前に雄花が人間を襲撃しないのか?と言う点である。また、私なら追われる云々の前に植物から人間の情報が来る。敵意あるなしに問わず人間など捕まっているはずなのである。取り分け私とは違い前世人間とかじゃないなら捕まえると言うより殺すだろう。むしろそれが出来ない雌花は故郷で生きれない。いや、生まれた直後や成長途中ならあり得るが…だったらなんでこんなところにいるの?である。成長過程ならおばあちゃん木の側にいるはずである。こんな養分が乏しい場所におばあちゃん木があるわけがない。


「とりあえず、誘拐された雄花の所在って分かる?」

『少々調べてみます。』


 植物間で揉めるとはどう言ったことなのだろう。予想より少々遅れて情報がやってきた。


『少々前、新たに開拓された街道でしょうか?そこに連れ去られた雄花が閉じ込めてある動く檻みたいなのがあるようです。ただ、マントか何かが掛けられており、見た目は荷馬車とあまり変わらないとのこと。中の様子は分からない様です。』

「そう…うーん、まあ…潰すか。間に合いそうだし…。放置したらケリンさん辺りが逆ギレして腹いせにデレナール領潰しに来そう。」

「お姉ちゃん?若干顔色良くないけど大丈夫?」

「あー」


 私が植物から情報を採取中、どうやら機嫌を損ねたような顔をしていたらしい。シュウ君の私に対する観察力はかなり高い。まあ、私が植物と会話中…シュウ君は植物の声は聞こえないが、私の声は聞こえている。物騒な私の声が聞こえれば心配になるのも無理はない。その時、ベランダの扉が開き…そこにはムサビーネ夫人が立っていた。


「あ、マイ。ちょっと聞きたいんだけど。」

「はい。」

「この辺りって、前開拓がされた場所の近くよね。雄花達が住んでいる…」

「まあ、もう少し進めば分かれ道があるみたいですね。開拓された方に進むと…拠点ではありませんが近づけますが…」

「そう。」

「ムサビーネ伯爵夫人。今貴女が考えていること当てましょうか?」

「あら?」

「雄花に会えないかとか…テイム出来ないかとかではありませんか?」

「残念。ハズレよ。」

「え?」

「報告があったでしょ。ここら辺の雄花が盗賊に襲われているって。貴女、植物の声が聞こえるのよね。現場検証したいのよ。折角ここには精鋭部隊も揃っているし。」

「まさか…」

「あら?貴族とはこう言うものよ?」


 護衛にしては多すぎないかと思っていたが…本題は護衛ではない。どうやら犯人探しの糸口集めだったようである。本来そんなこと貴族がやるか?と思ったが…命令はするだろうが、当本人がくるか?…この貴族、魔物のためなら手段を選ばないのか…そんな気がした。まあ、夫人はここで何かしら恩を売っておけば誰かしらテイム出来るのでは…と言う考えみたいであるが…それは本人の心中のため誰にも分からなかった。


「そうですね…糸口かは知りませんが、丁度被害者が捉えられている檻があるみたいです。仕掛けてみますか?いや、選択肢はありません。デレナール領が崩壊します。」

「どう言うことかしら。」


 私は丁度先程聞いた情報を夫人に話す。側ではシュウ君が聞いており…側を飛んでいたアースや後衛として歩いているメリーさんも聞き入っていた。


「お姉ちゃんの仲間が狙われてるなら助けなきゃ!お姉ちゃん!僕も手伝う!」

「うーんー。悪い人間への悪戯ー!ゴーレムで踏みつけるなんでどうー?」

「私、リーダー説得して来る!悪人なんてそこら辺の魔物よりタチ悪いんだから!」


 三種三様ではあるが…全員私の味方になってくれる様であった。


「さて、そうと決まれば私も旦那に言ってこなきゃ。シロにもね。デレナール領代表として私達も出来る限りのことはするわ。」


 ムサビーネ夫人はそう言うと、馬車の中に入って行った。私は馬車が止まるまでの間、空を…木々を見ていた。雲はあるが快晴に近い。良い空気である。


(植物達が混乱しているから植物から情報を全部聞きだすのはキツそうだけど…出来そうなことからやってみましょうか。)


 結構無理をすることになると分かっていたが…仲間を助けるに悪いことなどないはずである。結果として間違えていても…その結果誰かに怒られたとしても…やりたい事をせず終わらせるのは良くないだろう。私の決心が付いた。

 予め、この章はかなり残虐な内容にしています。ご了承ください。

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