魔物退治
「リーダー。探知魔法に何か引っかかったよ。数は…8かな?いや、もうちょっといるかも。」
「よし。ベイル。いつも通りで大丈夫か?」
「おう。」
ベイルさんは馬車の前の方に行く。司令塔はリールさん。前衛アタッカーがベイルさんみたいである。
「俺たちも手伝える限りで手伝いましょう。伯爵様、よろしいでしょうか?」
兵士たちはそもそも論は貴族を守るためとは言え、魔物よりも対人専門である。まあ、デレナール領は敵国が攻め込むような場所じゃないから、魔物ともそこそこ戦えるらしい。
「気をつけるんだぞ。」
「ハッ!」
前衛にベイルさんと護衛2人が並ぶ。馬車とちょっと前の距離を歩いている。囮作戦かな。
「あ!人間が歩いてるー悪戯して…」
「アース?」
「ちぇー。終わったらーうん、シュウ悪戯ー。反応面白いー!」
「ええっ!」
シロが警告して、シュウ君が反応した。良くも悪くもシュウ君はアースに気に入られたらしい。この子、人外を虜にする何かあるのかな?
「リーダー。敵が街道に出てくる動きが見えた。」
「馬車を一回止めてくれ。ベイル。そっちは頼んだ。」
「あいよ。」
馬車が止まる。私は体を乗り出し…いや、見つかるのが面倒臭いので植物から情報を貰うことにした。既にオーク5匹とベイルさん含めた3人が対峙しているらしい。
「さてと、ようやく仕事かしら。メリー、シュウ、マイ。敵がベイル達に気を取られているうちに木陰に入るわよ。メリーは探知魔法でこっちに来そうなやつがいたら教えて頂戴。」
「分かった!」
「死角だったらー作ってあげるよー!」
木陰の方から何かが歩いてくる。いや、4m級のゴーレムだった。馬車の方へ歩いた後に向きを変え、敵の方へ歩いていく。巨大な上見た目は強力。恐らくオークの群れはそっちを見ただろう。
「恐ろしいわね…妖精も…。」
「アースちゃん凄い!」
「皆、ゴーレムが前衛の方へ行ったら移動開始よ。」
私、シュウ君、ウィリーさんと発言である。ウィリーさんのアースに対する適応能力には驚きである。まあ、Bランクハンター。朝飯前なのだろう。
「シロ、状況は聞いたわ。貴方も暴れて来なさい。オーク肉は美味しいらしいわよ?」
「ふん。言わずもがなだ。」
シロも前衛らしい。夫人が従魔に命令していた。馬車は丸坊主な感じがするが…一応後衛の側にあるから良いのかな。私達が移動中、既に前衛では戦闘が始まっていた。敵は魔物…いや、人間だとしてもここにルールは存在しない。生き残った方が勝ち。卑怯だろうがなんだろうが負けたら死である。
「シュウ君お願い出来ますか?」
私はそう言いながら木に登った。敵をあまり視覚に入れたくないのだが…逆に見られてしまうからね…敵と仲間の混戦では見ないと全員私のターゲットになってしまう。
「マイ?私も高いところ運べる?」
「うん?何処が良いですか?」
「あそこ。」
「了解。」
ウィリーさんの注文である。ツルを使って運ぶと木の枝の上にある木陰に着地した。体制を整え弓を構えて矢を放つ。敵に的中したらしい。
「シュウ君?見たい魔法ある?」
「うーん…強そうなの見てみたい!」
「あー、森ごと吹っ飛ばしちゃうからなぁ…リーダーに怒られるからまた今度。まあ、迫力あるのが良いよねー。」
メリーさんはどうやら隠れているオークを狙ったらしい。探知魔法と併用だろうか?敵側の木陰の方で爆発が起こった。炎が燃え上がる。
「メリー!やりすぎよ!」
「魔法って、こういう時調整難しいの!」
水魔法で鎮火に走ったメリーさんであった。
「おおー凄い!」
「ムムー。ボクだってシュウ驚かすんだー!」
前衛を歩いていたゴーレムが動き出す。どうやらゴーレムは強力だが行動が遅いみたいである。とはいえ、オークの1匹を殴り潰したらしい。地震とまではいかないが、地面を叩き潰す地響きがした。
「わわわ!」
「はぁ…メリーといい、アースといい…最近の女の子は皆脳筋なのかしら…。」
ウィリーさんが嘆いていた。私はなんだか放っておいて良さそうと判断したので、植物に依頼し不意打ちを仕掛けて来そうな輩がいないかを監視する。私の植物情報網的に不意打ちは不可能である。まあ、危険はなさそうではあるが…念のためであった。リールさんもどうやら自分は出ないと判断したらしく、司令塔の役割である。前衛3しかいなく、敵は9いたらしいが…あっという間に敵は全滅してしまった。私報告以外何もしてないわ…シュウ君もそうであった。
「うむ。まあ、そこそこいけるな。」
野生の本能だろうか?既にシロは死骸を食べ始めていた。死骸のオークは食べれそうなところは分解し今後の食糧や王都で売り飛ばすとのことである。ここら辺は栄光メンバー3人が手際よく進めていく。シュウ君とメリーさんは見よう見まねでチャレンジしていた。貴族や護衛は早くして欲しい雰囲気であったが、ハンター達の収入源の一つである。自分達は魔物の死骸に興味がないとはいえ、あまり文句も言えなかった。
「それ食べて美味しいのかなー。」
「そのまま食っても美味いぞ?」
アースとシロは全く異なる意見である。アースは解体状況を見ながら飛び回り、シロはハンターが残骸として捨てているものを食い漁っていた。
「マイ?お前も食わないか?」
「あー、私は光合成でもしてるから地面にでも埋めておいてください。」
私もツルを使えば獲物を溶かして吸収出来る。ただ、ケリンさんみたいな雄花じゃないし…下手に吸収すると花から蜜が漏れてしまう…人間換算でおむらしはゴメンである…私は光合成主義であった。地面の土は微妙だが養分0ではない。0ならば、草さえ生えないのだから。光合成をしながら他に襲撃がないか…光合成のため帽子を抜いてしまったため魔物に気づかれ隠れて襲撃していたが…監視するのであった。そして、翌日…移動していて…オークより面倒臭い事象が起きることになる。きっかけを生むのは勿論、植物の声が聞こえるマイであったが…まだ、誰もマイがブチ切れ、本性を出すとは思っていなかった。
一応ですが、主人公のマイもサブ主人公のシュウもチートではありません。無双系は期待しないでください。




