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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
人間との出会い
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介護

「…う…お腹…空いた…」


 あーなるほど。要は飢餓状態か。私は植物の魔物だから食べると言うことをしたことがないが、人間は…と言うより全ての動物は食べなければ生きていけない。不便なものである。だから殺し合いが起きると言うのに。


(助けたからにはちゃんと最後まで面倒見なきゃね。意識戻れば何があったか聞けるかもしれないし。)


 人間の言葉が分からないのではと疑問視していたが、どうやら魔物と人間で発音は同じらしい。これは良いことである。…うん?本当か?だったら私を襲った魔物達の声は私にはわかるはずである。まあ説得出来るとも思わないけど。追々分かることであるが、知能が高い魔物の種は人間の言葉を理解出来且つ喋れるらしい。まあ、それが分かるのもかなり先の未来の話であるが。


(食べ物なんてあったかなぁ…)


 私は食べると言うことにおいては無縁の生き物である。そのため、ここら辺に食べ物…人間が食べれそうなものなどあるかすらも分からない。この状態だと、まずは水だろうがここら辺に湖とかあるとは思えないし…そこら辺の水辺や水溜りの水が仮にあったとしても、そんなもの飲めば腹壊すだろう。余計悪化する。


(初っ端最終手段かぁ。先が思いやられるなぁ。)


 私は頭を左に傾けた。花の蜜が花弁を通り左手で受け止める。何度も言うが、花弁には神経が通っているのでくすぐったい違和感である。ただもうこれは覚悟せざるを得ない。


「はい。今はこれしかないけど我慢して。」


 寝転んでいる子供の口元に花の蜜を垂らす。子供は口に水が当たったのが分かったのか、口を開きゆっくり飲み始めた。普通に考えれば口に水を垂れされたとき毒物と思うかもしれない。ただもう子供は空腹の限界なのだろう。どうせ食べなければ死ぬ状態。まあ、実際のところ5歳の子供がそんなこと考えずにただ口に何かいれたいだけだったのだが…それについて私は知る予知もない。


「…甘い…」


 男の子は若干安堵の顔をした。男子とは言え可愛い。私はこの子の行動が妹のユイやメイと一致していた。


(この子は私が守る!もう同じ過ちは犯さない!)


 50年強、1人で行き続けてきたし…おばあちゃんが死んでから誰かを育てることなど既に諦めていたが、一気にやる気が出てきた。この出来事が私の人生を大きく変えることになる。この子はある程度花の蜜を飲んで満足したのか、眠ってしまった。多分この体で登山したため疲れがどっと出ているのだろう。私は彼が寝ている間に食べれそうな木の実を探すことにした。どっか行かれると困るので子供の体はツルで縛っておく。回りの植物にはここいら一帯の魔物について引き続き調査させると共に人間が食べれそうな木の実を探して貰った。結構近くにあることが分かったので、片手のツルを伸ばしてほぼ手探りで探っていく。魔物は側にいないし、植物に案内して貰いながら採取していった。定期的に子供が目を覚ます度に嫌々ではあるが花の蜜を提供。安堵した顔を見るたびに私自身が癒されていく。弟を育てている感覚である。


(可愛いわぁ~、と言うより、気付いたら大分暗くなってる。)


 森は暗くなるのが早い。夜行性の動物や魔物も厄介である。私の寝床はツルで出入り口を塞いでいるし、苔があるので万一の際には大声で起こして貰う。耳元でギャーギャー騒がれば嫌でも起きる。魔物とかが狙っているのであれば撃退しないと睡眠が永眠になってしまうのでしょうがない。とは言え、月に一回起きるか起きないか。夜行性の生き物が少なくて助かる。まあ、人間の頃からある程度遅くまで起きるなど日常なので今さら感ではあるが。夜だと視界は悪いが植物が位置を教えてくれるので聴力で縛り付けていた。私の強みは私自身ではなく植物との共生であった。そして次の日、いつものように日当たりが良い場所へ光合成しに行くと、男の子がバッチリ目を覚ましていた。


「おはよう。」


 私の方から声をかけてみる。子供は首をキョロキョロしていたが動く様子はない。あ、ツルで縛っていたわ。


「あ、ごめんね。勝手にどっか行かれると困るから。ちょっと待ってね。」


 私は手でツルをほどいてあげる。私は幸運にも見かけは10歳ぐらいの少女。魔物と気付かれて警戒されると逆に面倒くさくなりそうなので立ち回りには気を付ける。


「お、お姉ちゃん…?」

「え?」


 予めであるが、この子の姉では私はない。


「えっと…うーん…」


 不味い。生前の人間の時から含めコミュ力がなかった。とは言え、何も言わないとこの子も何もしゃべらない。会話を続けないと。


「えっと…お名前は?」

「…シュウ。」

「シュウ君で大丈夫かな。」

「うん。お姉ちゃんは?」

「あー、えっと…」


 そう言えば私名前ないわ。どうしたものか。


「私名前覚えていないの。シュウ君の好きなように呼んで大丈夫。」


 大人なら何かしら疑問に思うかもしれないが、この子は子供であった。


「うーん、じゃあお姉ちゃん!」

「あ、うん。」


 そうして、妹同様シュウ君も私のことをお姉ちゃんと呼ぶようになった。なお、妹とは違って呼び捨てにはしない。この子は血縁関係ない言わば後輩的なポジションである。

 私は時折思いますが…経験が離れすぎた先輩も後輩もどっちも面倒臭いです。どっちにも振り回されてしょうがない。私も自由に生きたい。

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