気楽な大地の妖精
「ふう。意外と硬かったな。」
「だな。…しかし…」
ベイルさんが感想を言いながら戻ってくるが、リールさんは疑問形の顔だった。
「俺も気になるな。あのゴーレム。ただ歩いていただけだ。俺らが仕掛けても歩き続けていただけだ。何だったんだ?」
シロが唸り声を上げながら発言した。
「あ、リーダー!何かがこっちにやってくる!」
「何だ?!まだ何か来るのか?」
「違う。さっきのゴーレム…探知魔法に引っかかってなかったよ?今、引っかかってたのが来る!」
「本命はそっちか?え?」
ベイルさんがメリーさんの見ている方向を向く。ウィリーさんは弓を構える。シロもそっちを向く。すると…
「ちぇっー。折角ゴーレム歩かせてびっくりさせようと思ったのにー、壊すなんて酷いよー。ブーだ。」
見かけ4歳児の女の子妖精がフワフワ浮いていた。
「お前は?!」
「アースちゃん?!」
栄光メンバーが4人同時に驚いていた。
「妖精だと?」
シロも目を疑う。
「アース?やりすぎるなって言わなかったかしら?」
「えー?ゴーレム歩かせただけだよー?誰も攻撃してないよー?驚かせただけだよー?ドッキリ大成功!やったねー!!」
「はぁ…。」
私はため息をついた後、全員に言う。
「護衛としてアースこと大地の妖精にお願いしました。ちょっと、こんな感じでやんちゃなんですけど…実力はさっき見た通りです。しばしよろしくお願いします。」
「ホイホイーよろしくー。あーっと、君君??シュウって言うマイお姉ちゃんのテイマー?」
「え…う、うん。」
私の側で隠れていたシュウ君のそばにアースが飛んできた。
「うーん、驚けー!」
「え?」
その途端、彼の側から魔法陣が展開され、3m弱のゴーレムが出てきた。そのゴーレムはシュウ君を意図も容易く両手で持ち上げると、肩車した。
「うわ!!」
「驚いたー!よし、まずはお姉ちゃんの魔物使い攻略完了ー!!」
「アース?あまり調子に乗ると容赦しないわよ?」
「えー。とりあえず護衛なんでしょー。だったらこんなところでボーッと突っ立ってないでとっとと皆んな前進んだらー?」
ゴーレムはシュウ君を肩に乗せたまま街道を歩き始めた。他は全員唖然であったが…まあ、目的一緒みたいだし…ゴーレムの強さも折り紙付き。仲間なら心強いとのことで全員で前進するのだった。この後、私はリールさんに「ちゃんと事前に全部話しておけ。」と怒られてしまったが…。アースは「秘密にしておけ」だったので理不尽だった。第一私は魔物である。人間に怒られる義理などないのであるが…。寧ろ、トラブル起こしたアースがお咎めなしは更に理不尽であった。後々この愚痴は全部シュウ君行きである。魔物使いも大変なのであった。
「あ!ちょっと行ってくるー!」
午後になっても、アースのフリータイムは変わらない。
「あ、お姉ちゃん!アースちゃん…行っちゃった。」
「放っておきなさい。どうせ、人間見つけたで悪戯云々よ…。」
「え…だけど…」
アースは向かいから来る…まあ、普通の人2人を見つけたと思ったらどっかへ飛んでいく。
「キャ!」
二人の前で泥が何故か跳ねた。
「な、何よ!汚れっちゃったんだけど!」
「もう!折角先日洗ったばっかりなのに!」
横目で見る。クダラナスギタ。二人は汚れを叩くとそのまま私達の横を通り過ぎていく。まあ、豪華な馬車である。しばし、じーっと見ながらであったが通り過ぎていった。
「悪戯大成功ー…あわわ!!」
木陰からアースが出てくると、ベイルがアースの手を掴む。
「お前、護衛っていうの分かってるのか?」
「ちぇー、いいじゃんいいじゃん。どうせ暇なんだしー。」
「暇って…お前。」
「ほらー、置いてかれてるー。」
「うん?」
アースが私の方向を指した。私は馬車から降りていた。動いている馬車から降りると転倒してしまうが…ツルを使って木にぶら下がれば何とか行けた。魔物についてアラートが鳴ったのである。1.5kmぐらいに小さめの魔物。まあ、こっちに気づいていなさそうだったが…少しずつこっちに来ているようだったので…面倒臭くなる前に駆除しておいただけである。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
「うん?まあ、そこらへんの魔物固定しておいただけよ。」
ツルを使って、側にあった木で勢いをつけで馬車に追いつく。そんな離れていないので、シュウ君は走って馬車に追いついた。
「あー、すまない。ちょっとだけ止まってくれ。」
リールさんが馬車を止め私は元いたベランダの場所に戻った。なお、ゴーレムは目立ち過ぎるので今は消えている。
「マイ。すまないが、勝手に戦闘を始めないでくれ。」
「え、だって魔物がいたら駆除じゃないんですか?」
「…メリー?魔物いたか?」
「うーん、私の探知魔法には引っかかっていなかったかな。」
「ここは森の中じゃないんだ。団体行動だし…メリーの探知に引っ掛かっても距離が離れていれば避けるという選択肢もあるし、そのまま通り過ぎるということもある。全部に対応していたらキリがない。」
私は更に不機嫌になるのであった。私としては半径2km以内は全部射程だし、植物がアラートを鳴らせば街中じゃないんだから速攻駆除なのだが…ダメらしい。
「お姉ちゃん怒られたー!」
「アース?暫く私のストレス解消台にでもなる?」
「お姉ちゃん!アースちゃん!喧嘩はダメ!」
「全く、どっちも能力は恐ろしそうなんだが…こう見るとどうしようもないな…。」
シュウ君の発言に対しムサビーネ夫人の従魔、シロが呟いていた。
「そう言えばアース?シロは平気なの?」
妖精にとって魔物は天敵である。大丈夫なのだろうか。
「だってこいつー、初めて見たとき攻撃しようとしたら魔法カウンターされたんだもん!仕掛けたくても仕掛けれない天敵ー。お姉ちゃん、ボクの代わりにやっつけてー!」
「カウンター?」
「ああ、ゴーレムの後…こいつ、俺に向けて魔法を発動しようとしたからな…発動出来ないように打ち消しておいたのだ。」
「…いつやってたのよ。」
「いつって…この狼初めて見たときー!」
私は全く気づかなかった。うーむ、共に無詠唱で魔法をバチバチやっていたらしい。誰も気づかないところで…。アースはシロを睨め付け、シロもアースを睨んでいる。今もバチバチやっているのだろうか?




