出発
(なんだかんだでもう当日か…)
そして、各々準備が整い…いよいよ出陣である。デレナール伯爵夫妻は馬車に乗り守衛門のところにいる。私達が初めてこの街に来たときに乗っていたものと同じであった。側には護衛が3人いた。当たり前だがこの街の全員の兵士が行く訳にはいかない。伯爵達が不在の時には彼らが守る必要がある。家臣とか親戚類もお留守番とのこと。何故夫婦で行くのかは謎だが…まあ、軽い夫婦旅行なのかもしれない。護衛が尋常ではないが。
「娘のアリアよ。息子は学校に行っているから寮に預けておくけど…この子は来年から入学で家に置いておくわけにもいかないからね。栄光の方々、よろしくお願いします。」
とまあ…リールさんは知っていそうな顔と態度だったので他の栄光メンバーが眉を顰めていた。
「あー、口止めされていてな…と言うよりお前達に言うと反対云々で色々揉めそうだと思ったわけで…。」
やっぱりこの栄光解散しない理由が分からんと思った私であった。
「え、えっと…アリアです。よろしくお願いします。」
伯爵令嬢は入学年度的に10歳程度であろう。シュウ君が学校行くなら同年代である。ただ、服装も貴族であるし挨拶の立ち振る舞いも貴族であった。とてもじゃないが、シュウ君と同年代には思えない。
(そう言えば…入学手続きは…まだ1ヶ月ぐらい先かしら。忘れないようにしないと。)
心配性の私は別のことを考えているのであった。
「ったくよう、今回の依頼子供多すぎんだろ。」
守衛を抜け、街道を進み始めた時ベイルさんが愚痴った。
「シュウ君はテイマーだし、マイさんは子供っぽいだけだから大丈夫じゃない?」
「あ?そんなもんなのか?」
護衛3人とハンター4人は外を歩いている。ムサビーネ夫人の従魔、シロ…まあ、シロこと白銀狼だとは思ったが…も外である。貴族3人は馬車の中。私も外を歩いていたが…歩くのが遅いとのことで馬車に乗る羽目になってしまった。中は貴族の特等席なので、馬車の後ろにあるベランダっぽいところ…流石貴族馬車か、そんなものまである…で立っている感じである。私は徒歩スピードがそもそも論遅く…体の構造上早く歩けないのである。シュウ君は昔こそ私と同速であったが、今に至っては既に私に合わせてくれている。今は大人依存。或いは馬依存。シュウ君は早歩きで何とかだが、私は無理であった。
(これシュウ君が持つかなぁ…。まあ、最悪シュウ君もここにいさせてもらうか…。)
シュウ君は実を言うとそこまで長距離移動をしたことがない。まあ、数時間ならいくらかあるが…数日レベルの場合大体私がおんぶで運んでいってしまっている。大人の体力と子供の体力は違う。私は魔物だから論外である。私が問題なければ大丈夫と言うわけではない。
「そう言えばマイ。お前援軍呼んだと言っていたな。まだ来ないのか?」
シロこと白銀狼は人語を喋ることが出来る。ムサビーネ夫人曰く強力な魔物は人語を喋れるらしい。
「途中合流よ。まあ援軍とは言え一人だけだけど…。」
「一緒に来なかったのかい?」
リールさんの問いである。
「あー、あの子。人間の街には入りたくないみたいで…うーん、なんか違う感じがするけど…。」
今日朝、一緒に行くか聞いた時「準備があるから後で合流するー。」とか言っていたのである。アースは掴みどころがない性格である。人間についても「危ない」認定しながら悪戯仕掛けている妖精らしいし…。
『姫様。アースという妖精が何か仕掛けているようです。恐らく…ゴーレムかと。敵意はなさそうですが、念の為お伝えしておきます。』
「あん?あの馬鹿何やってるのよ。」
「お姉ちゃん?どうしたの?」
シュウ君である。なお、私は既に私達が通るルート、及び私達近傍について植物達に監視して貰っている。敵が来たら一気に葬り去る。他のハンターに仕事させる気はなかった。寧ろ、そこまで接近してしまうと私が危ない。
「あー…そうね…うーん、まあ何でもないわ。強いて言えば…もう暫くしたら彼女に合流出来るかもね。」
「女なのか?お前と同位種ではないと言っていたが…」
「ベイル?それどういう意味で言ってる?」
「あー、ウィリー深い意味は…」
「一応言っておきますが…そこいらの人間よりよっぽど強いですよ?ただ、掴みどころが無い性格なので…試しにでも来るかもですね…。」
「どういう意味だ?」
「はぁ。合流したら本人に聞いてください。」
シロが私に聞いてきたので私は流しておいた。ネタバレしたらアースが怒りそうだし…何も言わないと面倒臭そうだがらヒントだけであった。まあ、気付くわけないが。




