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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
人間との出会い
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瀕死の子供

『姫様。ご報告があります。』

「どうしたの?魔物だったら直ぐ言って欲しいんだけど。」


 私の命を狙う可能性があるなら即刻排除である。わざわざ相手の顔を拝む必要性もないし、エンカウントさせてあげる必要性もない。


『いえ、魔物ではなくて…恐らく人間の子供です。人間の子供がここから1km先程でしょうか?姫様の拠点近くで倒れていると連絡がありました。』

「え?人間?」


 人間とは魔物からしてみれば脅威である。おばあちゃんからも言われたことがある。と言うより、私も元人間だし当時魔物なんて概念はなかったが、危険な生き物が人々の住宅街なんかに生息していれば間違いなく駆除対象だろう。魔物イコール人間にしてみれば害虫である。出会って仕舞えば基本どちらかが死ぬ。常識である。


『人間の子供は既に弱っている様です。放っておいても問題ないとは思いますが、仮にその子供を嗅ぎつけた魔物がそばを通った場合、姫様も見つかってしまうかもしれません。その為報告した次第です。』

「ありがとう。心配してくれて。」

『いえ問題ありませんが…姫様?どこかに行かれるのですか?』

「うん?ちょっとその人間の子供が気になってね。」

『姫様?まさか人間と接触すると言うのですか?危険です!』

「でも弱ってるんでしょ?」

『そうではありますが…』


 こんな森の中に子供の人間が1人で来るわけがない。側に他に人間の気配が無いか聞いてみたが、全く無いとのこと。考えられるのは「捨てられた」。それぐらいしかない。そして、私は魔物として150年以上生きているが…人間の心を持っているのである。話を聞く限り私に害は一切ない。であるならば、助けるのが常なのではないのだろうか?確かに魔物にとって人間は脅威。逆も然り。だからと言って分かって見殺しは元人間の私には出来なかった。1kmぐらいなので1時間程度であろうか?目的の場所に着いた。植物の方も躊躇いはあった様ではあったが、場所をちゃんと教えてくれた。途中、遠くで魔物がいたので全部駆除対象である。一応だが、魔物がいただけで私は駆除したりしない。植物達が、『私に気づいた』とか『襲うように構えている』とか、明らかに敵対行動をした時に限っている。まあ残念ながら、私が通ると連中は鼻が良いらしく大体駆除対象になってしまうのだが。


(この子かな?)


 植物達の報告の場所に行ってみると、確かに子供が横たわっていた。5歳ぐらいの男の子である。服はかなりボロボロ。森を歩いてきたからだろうか?


(さて、どうしたものか。)


 外傷はなさそうである。むしろこの森は魔物だらけなのによく襲われなかったなぁと感心せざるを得なかった。こんな子供、見つかったら即刻殺されていたであろう。


(まぁ、ボーとしていても何もないし、森の中にいても光合成できないし…拠点に連れて帰りますかね。)


 子供をツルを使って操り人形のように強引に立たせ、私の背中にもたれかかせる。


(若干重いな。)


 私は植物の魔物。力はそんなにない。子供を私にツルを使って縛り付ける。


『姫様?まさか連れ帰る気ですか?』

「まあそんなところかな。中途半端にこんなところに寝転んでもらっても、私が困るし。」

『ですが人間ですよ。起きたら何するか分かりません。』

「縛っておけば問題ないでしょ。まあ、こんな子供が襲ってくるとも思わないけど襲われたら締めるから大丈夫。」


 植物達からまだ非難の声は聞こえたが一切無視した。私は魔物だが、根は人間なのである。


(背負って移動は無理かな。)


 さっきも言ったが、私は力がそんなに無い。それに足もそんなに早く歩けないし、走ったら転がってしまう。この状態で魔物に見つかったらあの世行き確定である。私は、ツルを目の前の木に結びつけツルを短くした。体が浮かび上がる。


(このまま雲梯みたいにいけば大丈夫でしょ。)


 植物達には万一魔物が側に来たら伝えるように依頼した。まあ、1件以上は必ず引っかかったのでその際には一回移動をやめターゲットを縛り上げてまた移動である。この往復移動だけで10匹弱は縛り上げたと思う。まあ、襲おうとするのが悪い。帰りは意外に早く拠点にまで到達出来た。


(結構疲れたかな。)


 荷物を下ろし、私は日の光を浴びる。縛り上げた魔物から養分を吸い取っても良いが…むしろそっちの方が効率が良い気もするが…花からお漏らしはしたくないので最終手段になってしまっている。それはさておき、子供の様子を見た。


(生きてるのこれ?)


 一応確認したが、脈もあるし呼吸もしている。この子供がどう言った経緯でここに迷い込んだかは植物達に調査させているが、まあ碌なことでは無いであろう。顔を引っ張ったりして反応を促してみると、若干薄目を開けた。

 人間登場です。主人公も人間に感化されていきます。

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