雌花の不安事項
「お姉ちゃん?どう?」
シュウ君が着ていた鎧はまあ、安物なナイフぐらいなら胸は防げるだろうぐらいのものであった。
「体に合えば良いんじゃないかしら。それ来て多少走って見るとか?」
「店の中は走れないな。体感でだが重いとか感じるか?」
「うーん、いつも着ているのよりは重い。」
「それ着て街中歩けそうか?」
「まあ、ちょっと我慢すれば…?」
「じゃあ、まあ…それにするか。マイ、どうだ?重いとかあるか?」
「あー、ちょっとシュウ君その服貸して?」
「うん。」
一応更衣室みたいなところはあるので、シュウ君はそこで着替えて持ってくる。私はその鎧を手で持ってみる。
「まあ、良いんじゃないですか。少なくとも黄金リンゴ100個よりは軽いです。」
「そこを基準にするならもっと重くて平気だろ。」
「いや…シュウ君自体が大分重くなってきましたし…個人的これ以上重くなるとちょっとなんですよねぇ。」
ジェスさんが病気発症したとき私は少しでも早くと担いだ記憶がある。私達は植物だからか、人間と同身長の私達の仲間は人間より軽くなる。とは言えジェスさんはシュウ君より重かったのである。今後シュウ君が成長したら担ぎ切れるかわからないし、現状の鎧も極力軽くして欲しかった。
「じゃあ防具はそれにしよう。明日以降それを着て俺やベイルと修行だ。まずは着こなさないとダメだからな。で、武器か…うーん、メリーがいたら魔法の可能性とかも言われそうだが…まあ、自己防衛ならまずはナイフか短剣だろう。俺みたいな本格的な剣は高いしまず扱う技術もないだろうしな。」
と言うことで、こっちもお手軽な短剣を買った。ただ、リールさんはその短剣をシュウ君には渡さなかった。
「しばらく修行してからこれは渡す。素人中の素人が武器を持つと敵仲間自分問わず全員危ないからな。修行していく上で渡そう。」
「だったら今すぐ買わなくても良かったのでは?シュウ君予算カツカツ状態です。まだハンターとして生きれる収入源を稼ぎきれていません。」
今回安物とはいえ小金貨6枚は使ってしまった。必要投資だがやはり懐は痛い。シュウ君はまだ月小金貨2枚稼げるかどうかなのである。軽いバイト感覚の収入源である。
「自分に合いそうな武器は気づいたら売っていないこともあるからな。それに例の依頼を達成すれば金貨2枚だ。まだ始めたばっかりなんだから出費の方に偏るのも仕方ないだろう。」
「うーん…私魔物だからなぁ。そこまでお金分からないので任せます。」
前世のマイも残念ながら予算管理とかは得意ではなかった。お金あるよね、じゃあ大丈夫ぐらい。未来投資とかなんて怖くて出来なかった人間である。私は理系ではあったが諦めてしまった。
「じゃあ、特になければまた明日だな。あー、シュウはこの後宿行くか?俺はいつ領主から依頼あるか分からないからしばらくは依頼を受けずギルドに篭るつもりだ。なんなら今から鍛えても良いぞ?実力確認は仲間揃えたいから明日にするけど。」
「あ、じゃあ行きます。」
「マイはどうする?魔物用の装備なんてないからな。まあ、人間に体が似ていると言うのもあるが…問題ないと思って何も買わなかったが…」
「私服一切着ないで150年以上森の中で生活してますからね。要りませんよ。シュウ君修行するなら私は今日は帰ります。お腹空いていないけど、お腹空いているので。」
「どう言うことだ?何処かで食っていくか?」
「あー、光合成不足ですよ。私のメインの食事は日光と水と腐葉土です。この街腐葉土無さすぎなので拠点で回復したいだけです。」
「そう言えば昔そんなこと言ってたな。わかった。無理しない程度にな。」
「シュウ君に無理させないでくださいね?万一があったら魔物として襲います。」
「仲間を見るのがリーダーの仕事だ。まあ、甘やかすのはシュウの為にはならないからそこは理解して欲しいが…無茶はさせないから安心してくれ。」
「任せましたよ?」
とのことで、私は帰ることにした。帰りながら…拠点に戻って光合成しながら私は考える。まあ、シュウ君を鍛えてくれるのはまあ良いが…ぶっちゃけ1週間で何が出来るである。年単位ならまだしも…。それに、あの貴族ら絶対何か隠してる。まあ、裏切ってくることはないだろうが…連れて行きたい護衛の水準がやはり高い。ムサビーネ夫人が従魔を連れていくと言うレベルだし…何かしら危険なことに巻き込まれるのではないか?と、心配性の私は考えてしまう。はっきり言って私は超遠距離型。近距離に接近されると一瞬でアウトである。栄光やら貴族護衛やらを信用していないわけではないが…護衛依頼はあくまで貴族を守ること。何処にもシュウ君を守ってくれるなんてない。シュウ君の自衛レベルなど現状ほぼ0。1週間で1に出来ても1では困る。もっとこう…パパッとシュウ君強く出来ないかなぁ…と無理ゲーを考える私であった。
心配性は不運ですねぇ。