各々の立場の行動
「シュウ君シュウ君。ちょっと来て?」
「う、うん?」
ジェスさんの花の方を見ていたシュウ君を呼び戻す。
「ちょっとシュウ君この水の匂い分かる?」
解体員の一人に怪しい水を採取して貰い、シュウ君に嗅いでもらう。基本的には内部は触らない様にとのことであった。…私は無視していたが。いや、あからさまに今回の水とかは触らないが…ある程度触らないと、見たい部分が見えない。
「うーん、甘い匂い。えーっと…何処かで…」
「これ?」
私は私の帽子…は被っているので、正確には中の花であるが…を指差す。
「そうそう!お姉ちゃんの花の蜜に似た匂い!」
「シュウさんも大概ですね…。マイさんの花の蜜に漬けられたことでもあるのですか?」
「失礼な。そんなことしないわよ。」
「さあどうだか、クスッ。」
「ミサさん。特別に今日は3首といきますか?」
「死体の数を増やさないでくれませんか?!」
毎度恒例であったが、男性二人は話していた。
「と言うことは、マイの予想は的中と言うことか。おそらく、乾燥する前は消化出来ていねぇ花の蜜だっけか?が身体中に溜まっていたと言うことか…。気づいてやれねぇなんてな。」
「自覚症状はジェスさん何かあったのか?」
「うんにゃ。腹空いたとか、苦しいとかだけだったな。それだけじゃ、俺にもよう分かんねぇ。やはり新種となると情報が少ねぇなぁ。今までの経験じゃ対処しきれなかった。」
「うーん。僕もこれからこのアルビトラウネを研究しようと思っているけど…異常状態についても執筆するかぁ。」
後ろの方ではギルマスとムサビーネ夫人が喋っていた。
「マイさん、意外にじっくり関わっていますね。初めはかなり嫌そうでしたが。」
「そうじゃの。まあ、あの様子じゃと…一番理解していそうなのは彼女自身かもしれんのぉ。」
「やはりそう思いますか。まあ、人間だから人間の構造が分かりやすいと同じ。似たような構造ならまだしも、私でさえ想定外の構造でした。彼女から後で聞き取り調査をした際にはこちらにも情報を流してください。」
「彼女が口を破ればじゃが。あまり期待しない方が良いとわしは考えるぞい。」
「ほう。貴族の命令に逆らうと?」
「お主、貴族というものを濫用しない性格ではなかったかの。」
「…冗談ですよ。まあ、教育訓練は今後も続きます。定期的に刺激でもしてみましょうかね。」
「あまり余計なことは避けて欲しいんじゃが。お主達の無理強いでハンターが犠牲になったことは忘れてはおらぬぞ?」
「はいはい。ところで、上半身ばっかり見ていますが…そろそろ下半身にいってくれませんかねぇ。」
「そこまで関心ないのかの?」
「私は魔物を育てることが趣味ですけど、内部については細かいところまでよく分かりませんもの。専門の方の方が詳しいでしょう?」
「…足元掬われん様にの。」
「ご心配なく。」
ムサビーネ夫人の考えは貴族だからか…時折意味深なところがあるのであった。そして解剖作業も後半戦である。一次休憩を挟んだ後再開する。
「お姉ちゃん…疲れてきた。」
「そうね…ミサさん。ここら辺に椅子あります?」
「あー、椅子ですか。」
「あそこに休憩のための椅子ならあるぜ。持ってくるか?」
「うん!」
10歳の男の子には流石に…いや、皆んな疲労は溜まっているだろうが…趣味においては引火するものであった。ギルマスやムサビーネ夫人は立場上、監視みたいな立ち位置にいるが…他は全員何かしら作業をしている。
「さて、後半戦はこのスカートの中身ですね。いやーマイさん見せてくれませんからねぇ。」
「見せるも何もこれ硬いから捲れませんからね?と言うより、スカートの中みたい女性ってなんなんですか?」
私自身、このスカートの中を見たいと考えたことはあったが…葉っぱでしっかりと固まってしまっておりめくることができない。ゴリ押すのもなら痛みが発するレベル。神経もしっかり繋がってしまっている様である。水面反射では中が暗いので失敗に終わっていた。この擬似スカート、床までしっかりと伸びており絶対中見せないを主張しているのである。私が横になって、誰かが頭を突っ込むと言う荒技はあるが…倫理上アウトなので誰もやっていない。
「じゃあどうやりますか?既に死因も分かっているみたいだし、ここからは研究員向けの内容になるけど。」
「バラバラにして欲しくないので、胸同様の切り開き方にしてくださいませんか?…既にスカートの葉っぱはボロボロなので、切り開かなくても崩れちゃいそうな気はしますけど。」
「マイさんもう乗り気ですよね。」
「私気になることは調べ尽くすタイプですので。」
「…マイさんって、やっぱり人間じゃないんですか?」
「どうでしょうかねぇ?」
と、話しながらも解体メンバーが気をつけながらスカートに切れ込みを入れる。私自身、葉っぱで出来た擬似スカートを見ながら…触りながら、痛みは想像しない様にして…様子を見ていた。