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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
「花」の構造
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雄花の解体と雌花の探究心

(どういうことよこれ?)


 人間は胸を開けば、骨があり臓器である。しかし、ジェスさんの体を開いても…空洞ではない…何もなかった。あるのは、細胞で出来た中身と、大量の(くだ)と言うべきなのだろうか…植物で言うところの師管や道管を意味するものだろうか…だけであった。


(骨がない?いや、じゃあ私の体はどうやって支えられているのよ。うーん、私の体って人間みたいに柔らかいけど…葉っぱは葉っぱだし…確か植物は細胞壁があるから茎とか硬いのよね?と言うことは場所によってって事?)


 知らぬ間に一番解体作業に参戦している人は他でもない、私になっていた。全員が驚くが…私の研究精神がざわめいている。まあ、前世理系で大学院まで研究していた私である。そのまんまの性格が今世にも受け継がれていた。


(口から入ったものは?…そのまま管に直通か?あ、だけどある程度太い管が続いてるわね。ここら辺で消化されて繋がっている管が…あー、頭の方へ向かっているわね。ツルへ流れる消化液もここから作られるのかしら?可能性ありそうね。で、あ…やっぱり、見た目はあまり変わらなかったけど、触ってみると硬い部分もあるわ。これが骨の代わりでもしているのかしら。)


 私はジェスさんの亡骸から体を退ける。急に割り込まれて皆んなびっくり仰天だったが、私が退いたのをきっかけに調べたい輩たちが調べ始めた。


「シュウ君。ちょっと良い?」

「うん?」

「シュウ君。私の背中見てくれない?」

「え?」


 私は服を脱ぎ、服は持っていたがシュウ君に背中を見てもらう。


「えっと?」

「シュウ君。私の背中って、背骨みたいなのある?」

「背骨?」

「うーん、真ん中に固そうなやつ?シュウ君も背中触ってみればあると思うけど。」


 私はシュウ君の背中の方に行き、背中を触る。シュウ君の手も誘導した。


「これこれ、これが背骨。どう、硬いでしょ?」

「うーん、もう一回見る。触っても平気?」

「どうぞ。」


 シュウ君が私の背中を触ったり押したりしている。


「見ただけだとよく分からないけど…硬いのならあるよ?上から下に繋がっている。」

「そう…骨格の構造は同じなのかしら。中身は違えど、成分は違えど…うーん、植物構造から臓器がないのは納得出来るわねぇ。納得は出来るけど…役割分担とか…いや、溶かすだけなら…何もないのかなぁ。いや、むしろそこら辺は花が何かしている?」


 困った時は「魔物だから」で終了ではあるが…まあ、砕け散った花を触って確認したりもしていた。流石に私は前世医師をしていたわけではないので細かいところまでは分からなかったが、逆に気になる点は多少なりとも結果が得られて満足である。バラバラにすることに抵抗していたマイは何処へ行ってしまったのか?


「マイさん?!なんて格好しているんですか?」

「え?だって普通に考えて、こう言うものは現物と比較した方がわかりやすいじゃないですか?」


 私は自分の腰辺りを指で摘みながら…ジェスさんの腰も同じ様にしたりしながら…あやふやに応答していた。なお、私にしてみれば150年間森の中では服なんて着ていなかったし…擬似ブラジャーや擬似スカートもあったし…これが普通なのであるが。なお、私の服はシュウ君に既に渡してしまっていた。


「うん?」

「シュバレルさん?!女の子の裸を見ちゃいけません!」

「ええ…」


 被害者もいる様であった。補足であるが、マイは雌花ということもあり…雄花とは違い胸もちゃんと膨らんでいる。まあ、まだ膨らみかけではあるが…ただマイは前世人間の男性であり、更に魔物故かあまり関心が無かった。ただ、ミサさんは敏感であった。なお私は関心が無いまま、上半身擬似ブラジャーだけで解体作業に参戦しているのではあった。大迷惑な女の子である。


「うーん、私の肩の付け根にあるツルと体の接着の内部は…」

「マイさん。マイさん。お願いですから、服着てくれませんか?マイさん人間っぽいんですから人間っぽい行動とってくださいよー。」

「えー、私魔物だし…ほらミサさん。私の肩にあるツルって、こんな感じに接着…中で急に消えてるなぁ…これどうなってるの?」

「あー、不思議ですね…って、話を逸らさないでください!」

「ダメー?」

「マイさん。見た目がどんなに女の子に似ているからって、駄々こねてもダメです!第一マイさん中身全然違うじゃないですか!」

「ムー。」


 仕方ないので服を着ることにした。まあ、上半身についてはあらかた分かったというのもあるが…にしても、維管束の分類だろうか?血管の様に細胞に巡っていることが分かった。多分これが人間の静脈なり動脈なりの仕事をしているのであろう。まあ、心臓はないが…それが花の役割なのだろうか?


「うーむ、比較的興味深い構造だな。他の魔物と比較しても…やはり植物と考えた方が良さそうだ。えーっと、うーむ。まあ、スケッチは後にするか…うん?」

「シュバレルさん。どうかしましたか?」

「いや、ここら辺まだ乾燥していないと思ってな。細胞間は人間で言うところのリンパ液で湿っているのだが…この遺体は既に乾燥しているが、一部所々水の塊の様な場所がちらほら。」


 確かに言われれば不自然である。ここまで細胞が密集しているところに水の塊などあるわけがない。

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