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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
「花」の構造
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雄花の死因

「その坊主の言った通りだな。花の奥、大穴が開いていやがる。」


 解体メンバーの作業員が言ってきた。私やシュウ君が言い出しっぺということで覗き込む。花の奥の構造など自分自身でも見たことないが…結構深くまであり…花自体が顔の半分の大きさがあり厚みもかなりあるからなのだろうか?…おそらく、そこに花の蜜は溜まっているんだろう。私は寝る時仰向けではなく、右を下にして横向きで寝ることが多い。ここまで奥深くまであることにより、立ったとしても横向きになったとしても蜜が溢れることはしないのだろう。そして、その中央近傍に氷柱で刺さってしまった穴が開いていた。結構奥深い。


「すいません。誰でも良いので明かりとか照らせませんか?」

「明かり?」

「ええ。深くまで中を見てみたいので。」

「なら私が灯しましょう。生活魔法ぐらい私なら朝飯前です。」


 まさかのムサビーネ伯爵夫人が名乗り出た。彼女は軽く呪文を唱えると、指先に明かりを灯した。私は驚きながらも、その光を頼りに穴の中を見る。穴の奥の方に液体が溜まっていることに気づいた。溜まっているとはいえ、微量ではある。私はこの花が人間で言うところの心臓であるというおばあちゃん木からの教えを思い出していた。それが正しいなら一つ推論が立つ。


「…死因…分かったかも。」

「え?」


 私が呟くと、そばにいたムサビーネ夫人が驚いたような声を上げた。


「お姉ちゃん。何か分かったの?」

「ええ…そうね…彼の死因よ。」

「なんだと?」


 治癒医は驚く。いや、こんな短時間で分かるとは想定外だった様である。


「マイさん相変わらず凄いですね。魔物でグルトナ学校へ行く書類を頂けるのも納得出来ます。」

「それとこれとは別じゃないですか?」

「で、なんなんだ?俺でも対処出来そうなものなのか?」


 治癒医は切羽詰まったように私に声かけしてきた。


「うーん、どうなんだろう…。まあ、人間でも分かるように簡単に言うならば…」

「言うならば?」

「心臓破裂です。」

「何?」


 私としての見積もりはこんな感じ。花の奥に大穴が開いたのが原因で花の蜜が花に蓄えられず、穴の中に入り込んでしまったのである。私達の体は花の蜜を花で再吸収し分解し、自分達の体の養分として体に循環する。穴が開いてしまったのが原因で、花の蜜がそのまま体の内部に流れ込んでしまったのではないか?蜜そのものは私達の体は栄養を吸収出来ない。寧ろ、人間換算でも心臓が破裂なんかしたら、血液が心臓から外部に溢れ出してしまう。溢れた血液は行くべきところへは行かず体の至る部分に漏れ出し臓器圧迫してしまう。それに伴い…まあ私は前世医師でないからこれ以上はよく分からないが酸欠なり心臓圧迫等の心肺停止なり色々で死ぬだろう。ジェスさんも身体中に蜜が流れ込み…は影響あるかは分からないが、花から蜜を吸収出来ず栄養失調で死亡した。これが私の推理であった。これなら、メイのように花がもぎ取られたときに蜜が頭から漏れていたのに対しジェスさんは蜜が花から一切漏れていないのに枯れてしまった理由の説明がつく。


「マイさん。天才ですか貴女は。お、メモメモ…シュバレルさん?すいません。私知識不足なので…メモ出来てます?」

「ああ、俺は大丈夫だ。へえ、アルビトラウネの花はそんな重要な役割しているんだな。」

「そうか…やはり花か…万一だ。万一彼が花を触ろうして抵抗をしていたとしても、それをゴリ押しして穴を見つけれて埋めれたら治療出来たと思うか?」

「うーん、どうでしょう?この穴塞げれますか?ジェスさん物凄く抵抗しそうですけど。」


 明かりに照らされた穴を治癒医は見る。


「…やってみねぇと分かんねえなぁ。とは言えワンちゃんあったのか…俺の失態だ。申し訳ねぇ。」

「あーしょうがないです。とりあえず…ここにいる全員私の花触ったら容赦なく殺すと言うことで良いですか?」

「あら、マイさん?貴女一度、そのテイマーに花を触らせて…」

「ムサビーネ夫人?私魔物ですけど…人間なんて貴族だろうがそこいらの平民だろうが同じ考えなのですか?」

「………」


 ムサビーネ夫人は黙った。いくらか聞いたこと…見たこともあったが、やはりマイについて花だけは刺激してはいけないと再認識させられるのであった。


「その推論が正しいなら、体に蜜が溜まっちゃっていると言うことになるな。」

「そうですね…とは言え、既にジェスさんカラカラですよね。乾燥してしまっているのでは?」

「いや、表面上だけだな。中はまだ分からん。まあ、人間も死ぬと血液固まっちまうし…。」

「マイさん。やはり、ちゃんとした解剖は必須です。やりましょう。」


 シュバレルさん、治癒医、ミサさんが色々話を進めていく。デレナール夫人は魔物を育成する意味では強いが、研究者とかそう言う意味ではないので…後貴族ということもあり、見下す…と言うわけではないが監視する側に回っている様である。


「はぁ…もう好きにしてください。万一があっても私責任取りませんからね。あ、すいません。その穴について、奥の方がどこかしら空洞とかになっていないか調べたり出来ませんか?」

「あいよ。」


 解体作業員に花については任せ、本体の解剖に進んでいく。何故か葉っぱとツルで出来た疑似ブラジャーが体から生えていることを確認していたシュバレルさんに対し、ミサさんが「女性の体になんて事しているんですか?!」と文句が飛んだりして「雄花だから問題ないだろ!」とシュバレルさんが言い返したりしていたが…私は服の隙間から自分の体を見たり触ったして確認していたが…で、ミサさん辺りに「マイさん何しているんですか?!」と怒られたが…胸元を解剖した。その瞬間、全員が唖然としてしまった。私も含むである。

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