表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
「花」の構造
183/365

魔物オタクに身分も何もないらしい

「お姉ちゃん。今日はどうしたの?」


 翌日、孤児院から早く連れ出されたシュウ君は私に問いかけた。


「度々ゴメンね。余り言いたくないんだけど…シュウ君にももう少し私のことを理解して貰おうと思って…刺激が強いから辛くなったら言って。言えそうにないなら私にしがみついても目を覆っても大丈夫だけど…とりあえず見て欲しいと思って。」

「う、うん。」


 良く分かっていなさそうだが…いや、私の表現力が壊滅的なのが悪いが…とりあえず、シュウ君にも私の魔物使いとして見る必要があると思ったので連れてきた。そのままギルドの解体現場へ行く。集合場所はここである。


「お姉ちゃん、やっぱり臭い。」

「あー、そういえば前シュウ君この匂いギブアップしてたっけ…。大丈夫?」

「う…あれ…あれって…どっかで見たような。」


 シュウ君が駆け足で向かった先は、ジェスさんの亡骸が置いてある場所であった。解体に向け、既に中央の机の上に置いてあった。


「…ジェスお姉さん?」


 シュウ君はジェスさんの亡骸をじっと見つめる。何を考えているかは分からないが…10歳の男の子には刺激が強すぎたか。


「お姉さん?」

「…ジェスさんはね。最期まで闘ってたんだよ。…結果はこうなっちゃったけど、シュウ君が忘れない限りはシュウ君の中で生きてるから大丈夫。」

「お姉ちゃん…」


 シュウ君が若干涙を溢した。私はもう泣き疲れているため涙は出ない。シュウ君は彼との思い出として何を思い出しているのであろうか。出会ったタイミングは私と全く同じである。最期は若干変わってしまったが。


「あ、マイさん。先にいらしていたんですね。」


 後ろを振り向くとミサさんが来ていた。紙と筆記用具を持っている。私がそっちに目を向けると何故かどっちも背中に隠した。


「…気づかいは良いです。」

「え、じゃあ遠慮なく。」

「…いや、ミサさんは気遣いしていてください。」

「私だけですか?!」

「露骨なんですよ。そこは本能より理性が勝つところです。」

「うーん、難しいですねぇ。」

「全く、今日はわしも来ておる。何かあったらわしに言うと良い。」

「ギルドマスター?!」

「え、え、ギルマスさんがどうしてここに?!」


 ギルマスがミサさんの後ろから現れ、私とシュウ君が驚く。


「あれだ。物珍しさって奴だねぇ。マイ。気持ちは分かるが許してやってくれ。」


 治癒医も登場である。その横にはシュバレルさんもいた。


「すいません。ここは何かの解体ショーをする場所ではないと思うのですが?」


 ギルマス、ミサさん、シュバレルさんが「え?」と言う顔をしたので私はシュウ君の方に寄り掛かってしまった。


「お姉ちゃん、どうしたの?大丈夫?」

「…情けない、魔物として私は情けなさすぎる。ジェスさん生きてたら皆殺すのかしら…。」

「え?!」


 シュウ君が驚きの声をあげるなか…まさかのまさかまでやって来た。


「あら…まあ、皆さんお揃いで。」


 私は唖然とした。こんなところに貴族が来て良いわけがない。


「ミサさん?!何故ムサビーネ伯爵夫人がここにいるのですか?!」

「あー、うむ…この領の伯爵夫人はのぉ…まあ、声をかけぬと何されるか分からんしのぉ。」

「ギルドマスター。本人がいる前でその発言はいかがでしょうか?」


 ギルマスが発言し、夫人が返した。一応だがムサビーネ夫人はデレナール領の伯爵夫人である。日本換算でどれぐらいだ?うーん、貴族と言う概念はないけど…天皇の妻…皇后様レベルじゃないのかなぁ…まあ、貴族の上には王がいるし、首相という概念とも違うからなんとも言えないが…。どちらにしろ…要は軽率にしゃべっちゃいけないし、こんな死体の残骸が転がってるような所にいてはいけない人間である。


「ミサさん?どういう風の吹き回しで?」

「あの方は魔物に関しては情報スピードが異常ですからね…そして、そう言う面では貴族なんて関係ないと言う人なんですよ。」


 私が小声で問い合わせし、ミサさんが答える。異世界小説を読んだことも私はあるが…ムサビーネ伯爵夫人は全部の意味で例外と考えることにした。まあ、こう言った性格があるからこの街はテイマーが多く…税金の無駄遣いと言われるのかもしれない。


「えーっと、伯爵夫人様。流石にこの場所でその服装は如何なものかと。」

「あら、私は魔物の世話をするときにはこの服装よ。問題ないわ。」


 夫人は結構高級っぽい服で来ていた。講師として来ているときはもうちょっと質素だったと思うが…まあ、それでも貴族と言うオーラはある。とりあえず価値観が狂っているらしい。かく言うミサさんも受付嬢の制服である。まあ、仕事の合間に来ているだろうし…仕事が受付嬢なのだからそれ以外の服もないだろうし…この前もこの服装で来ていた様な気がするし…突っ込まない事にした。


「えっと…マイさん…あの方…貴族のお方で?」

「ええ…この街の皆さんから変わり者と言われているので無視してください。」


 シュバレルさんが問い合わせてきたので答えた私であった。よくよく考えると変な話である。マイは確かにこの街に関与しているが魔物である。何故、魔物の私にシュバレルさんが問い合わせるのだろうか…。まあ、シュバレルさんにとってこの街はまだ来たばかりで話せる人が少ないというのも原因なのかもしれない。ど、どちらにしろ参加メンバーは揃ったとのこと。私、シュウ君の他…ミサさん、シュバレルさん、ムサビーネ夫人と言う魔物オタク軍団…後はギルマスと治癒医、解体作業員達である。颯爽私は心配になった。多分、ジェスさん原型留めれないわ。解体作業が始まる前に謝罪しておく事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ