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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
「花」の構造
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興奮する魔物研究員

(結局…未来は変わらなかった…)


 時間軸はジェスの死後直後に戻る。私はジェスの死骸が横たわっているベッドで呆然としていた。私は結局彼の役に立てたであろうか。彼の望みとして街中を最期に見せてあげることはした。しかし、それもあくまで私の自己満足ではないのか。私のミスを正当化するためのリカバリー手段でしかなかったのではないのか。私は膝…まあ、本当に膝があるのかは分からないが…擬似スカートの上…で両手を強く握りしめた。


「ああ、起きたのか…ったく。お前さん、ずっとそいつの頭撫で続けていたんだな。寝ちまったのが分かったから毛布をかけてやったんだ。感謝しろよな。」


 と言いながらも、某治癒医はジェスさんの容態を確認しようと手を伸ばした。私は黙認しか出来ない。触れてみて何が起きたか分かったのだろう。私達は植物の魔物とはいえ、動物らしく恒温生物である。触れば生死ぐらい分かる。


「そうか…お前には死期が分かっていたのか?」


 私は首を横に振る。まあ、見た目でもう助からないとか…後どれぐらいとかはメイの事例があるからおおよそは分かっていたが、この日に灯り火が消えるなどとは分からない。


「…まあ、このままぼーっとしている訳にはいかねえなぁ。さて…どうしたものか…。マイだったな。一回外の空気でも吸って来い。心配するな、お前が戻ってくるまでこいつはこのままにしといてやらぁ。」


 私自身も心が死んでしまったらしい。頭が動かない。私は言われるままにギルドのメインホールへ向かった。既にギルドとして機能している時間なのか、ハンターや客は少ないがうろうろしていた。私はそのまま外に出る。朝日を浴びる。


(そういえば…最近切羽詰まっていたから、ろくに日光浴していなかったわね…)


 全くしていないわけではない。私にとってみたら日光浴は食事のようなものである。しかし、拠点でゆっくりしていた時間も少なかった気がする。


「…あ!マイさんじゃないですか。いやぁ…探しましたよ。幾度かギルドに行ったのですが…「今はいなさそうですね。」と受付嬢に言われてしまったりしていまして…」


 急に声をかけられてふと声の先を見る。そこには…某名もなき村で出会ったシュバレルさんがいた。30歳ぐらいの男性である。魔物の研究家とのこと。


「あ…お久しぶりです。」


 私の返事は上の空であった。補足だが、シュバレルはこの街についてから定期的にギルドに行きマイ達との合流を図っていたとのこと。しかし、私は最近ギルドのテーブルとかではなくジェスさんの看病のために奥に行ったり…シュウ君に至っては孤児院にいるなど知らないだろう。合流するのは難しかった。また受付嬢は個人情報を簡単には喋らない。よっぽどのことが無い限り今の居場所を教えてくれるわけもなかった。


「えーっと、マイさんがここにいると言うことは…シュウさんも側にいるのですか。あー、カリンさん…カリンちゃんの方が違和感ないんですけど…彼女…で良いですかね、折角ですので血液採取をしたかったのですが…し損ねてしまったことに気付きまして。で、出来たらマイさんに…と思ったのですが、その場合シュウさんに聞かないとと思いましてでしてね。」


 私は上の空で聞いていた。


「あー、後…ケリンさんとかジェスさんはいますか?人間も男性女性で色々違います。ですので、マイさんだけでなく…あー、でも彼らは協力してくれないかなぁ。」

「…シュウ君はここにはいません。今日は私一人行動です。えーっと、ケリンさんも帰りましたし…ジェスさんは…」


 私はギルドを見ながら言った。


「あ、ジェスさんはギルド内ですか。うーん、ダメ元で聞いてみることは出来ますか?」

「………」


 私は再度黙認した。そう言えば、シュバレルさん今日はやけに丁寧語で話している感じがする。あれかな。私単体しかいないし、下手に刺激して研究に協力して貰えないのではと考えているのか…そもそもの性格がこっちなのか…実際私も現状意気消沈して思ったように喋れていない。人の口調は周りの状況や個人の気持ちで変わるものである。


「こっちです。」


 私はギルドに向かって歩いて行った。シュバレルさんは「おおー」と言いながら着いてくる。ギルド内はまだまだ過疎状態であった。


「やけに今日は独り言が多いですね。どうかしたのですか?」


 シュバレルさんはなんだか永遠と何か喋っている感じがする。前ここまで喋っていたかなぁ。


「いやー、漸くマイさんに会えたと言うか?あれ、研究精神が捗るって奴ですよ。わかりますか?」

「うーん…」


 前世の私も物事を徹底的に追求するタイプであった。今も自身という生態系について興味はあったりする。全く分からない訳ではないが…。とりあえずギルドの奥へ進む。


「えーっと、入って大丈夫なのかい?」


 シュバレルさんが不安そうに聞いた。


「良いんじゃないでしょうか。入るなとは言われていないですし。」

「それもそうだが…。」


 シュバレルさんも大分落ち着いたようである。そんなに私に会いたかったのか?


「おや?マイ。どうだ。息抜き出来たか?」


 ジェスさんのベットがある部屋に入ると治癒医が私に声かけしてきた。


「…多少は。シュバレルさん。ジェスさんならここに。」

「お前は誰だ?マイの知り合いか?」

「え、まあ…僕はシュバレルで…ジェスさんがここにいるからと聞いて着いてきたんだけど…」

「…そうか。マイ、良いのか?」


 私は頷いた。治癒医は部屋の奥の方へ行った。色々後処理があるのだろう。


「で、ジェスさんは?」


 私はベッドを指差す。シュバレルさんは多少違和感があったようだが、ベッドを覗き込んだ。私もそれに続く。

 余談ですが、元々今後活動するかもと思ってシュバレルと言うネタバレ満載の名前をつけたのですが…中々活動する場面まで到達しませんね。。。

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