壊れた雌花
時間軸は少しだけ遡る。ギルマスが、病気から治り…マイとシュウ、ケリンはギルマスに呼び出されていた。報告内容は至ってシンプル。ケリンの拠点近傍にケリンの仲間…主に若い雄花であるが…を誘拐や殺しにかかる人間が発生しているということ。それ自体の報告は…別に捻りも何も無いため至って単結に終了していた。
「あー、終わったな。マイ、シュウ。すまない。守衛まで送ってくれないか。俺は守衛を出たらそのまま帰る。ギルマスとの打ち合わせの件を伝えなければならないからな。」
「うん。お姉ちゃん。行こう?」
「そ、そうね…。」
私は、死にかけているジェスのことが気になり上の空であった。
「…あ、マイ。一つだけ聞きたいことがあるのだが…良いか?」
「どうぞ?」
歩きながら、ケリンさんが問う。
「昨日、お前がまたやらかしたのを聞いたのだが…お前は俺らのことが嫌いなのか?それとも、そんなにもジェスに肩入れしているのか?」
「………」
私は無口になる。
『姫様の代わりに私が代弁しましょう。簡潔に言いますが、姫様は両方に対等です。しかし、貴方様はそれを疑い姫様に圧をかけております。その結果が昨日の事象と考えてはいけないのでしょうか?』
『だったら俺も補足だ。他の植物から俺は聞いたが…あまり私情のイライラを姫様にぶつけない方が良いぜ。お前が多少病んでもお前の性格ならなんとかなるかも知れないが、姫様は意外とデリケートだ。潰れちまう。』
ケリンさんは黙った。彼はしまったと思っていた。おじいさまからの忠告を受けジェスを避けようとした結果が仇となったとようやく気付いたようである。しかし、既に後の祭りであった。
「分かった。マイ。お前が落ち着くまで一旦俺らは身を引こう。出来ればまた声をかけて欲しい。」
丁度守衛のところに着いたところでケリンさんがそう言った言葉を私にかけた。私は相変わらずの無言。頭の中がそれどころではなく収集付かない状態だったのである。ケリンさんは仕方なしにデレナール領を後にするのであった。
メンタルダウンしたら、周りに関わらず休みましょう。そうなったら、誰の言葉も棘にしか思えません。