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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
負傷した「花」の運命
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最期の願い

「そうですね…」


 ミサさんは何か言っていた。


「すいません。シュウ君が勝手に押し寄せちゃって。」

「いえいえ、大丈夫です。で、運ぶとなるとですが…小さめの台車を使うとか、ガタイの良いハンターに頼むことですかね。まあ、後者となると大人一人を背負っても早々体力が尽きない人なのでかなりの精鋭部隊ですし…費用もかかります。前者なら…まあ、あっても貸し出し費用ぐらいなので壊さなければシュウさんでも問題ない額だとは思いますが…それにジェスさん突っ込むんですかね。台車は本来食べ物や魔物の死骸を運ぶものですが。」

「現実的だと前者かなぁ…台車置き場とかってあります?」

「本気でやる気ですか?」

「死ぬ確定ならそれまでに1つぐらい良い思い出を…だけよ。」

「マイさん時折お人好しですよね。ちょっと突っつくと直ぐ殺しに来ますし…やっぱり謎ですね。今日の日記帳にも書かなければ。」

「その日記帳何処にあるんですか?」

「え、今も…聞いてどうするんです?」

「メリーさん辺りに頼んで灰にして貰おうかと。」

「ちょ、私の生き甲斐に火をつけないで下さい!」

「いやいや、ミサさん普通にストーカー行為じゃありませんか?!ギルドに報告ですよ!」

「おかしいじゃありませんか?何で、マイさんが雄花にストーカーされても我慢するのに私はダメなんですか!」

「あいつらだと全面戦争じゃない。貴女ならそんなに問題ないでしょ。」

「大問題です!」


 かくしてストーカー被害は…違う!ジェス対応の話である。この女性と雌花に進行を任せたのが間違いだった。


「とりあえず、台車置き場はここですが…病人乗せて運ぶのなんて聞いたことありませんよ。」


 車椅子とかがあれば話が早いが…そんなもの無さそうだし、ツルで作れるものじゃない。


「お姉ちゃん。これはどう?」


 見せて貰ったのは、本来ならば前世の記憶で大きめの箱を運ぶ台車である。手で押す部分はある程度高いところにあり、2本の棒で台車と繋がってるパターン。


「お姉ちゃんのツルで、この棒と棒の間に背もたれを作れば…座ったまま移動できるかなぁって。」

「良い考えね。うーん、背もたれはツルで優しめにして…座るところは毛布か何か借りましょうか。」


 とのことで、ミサさんに借りたい旨を予約した。ミサさんには「やっぱり変わっていますねぇ。日記帳に追記っと。」と、もう喧嘩売ってきたので、ツルで左手首を縛ってあげた。


「マイさん!手は出したらダメですよ!」

「聞こえませんねぇ。」

「シュウさん。マイさん何とかしてください。厳罰ですよ?」

「シュウ君チクらないもんねー。」

「え、うーん…良いんじゃないかなぁ。」

「何でですか!お二人とも受付嬢に対してそれはないでしょ!」


 知らぬ間にこの3人は三馬鹿トリオになっているのであった。なお、縛り付けたツルは研究材料としてミサさんがお持ち帰りした。…そして翌日である。とりわけ、私もシュウ君も暇だし…シュウ君の孤児院卒業問題は山積みだが…ジェスさんの余命がヤバいのでなる早実行と言うことにした。台車も基本的に運ぶものが無ければ使わないし、予備も幾らかある。まあ、オマケでそこいらの台車借りるだけでお金は取られるわけではないので…どっかの誰かは、万一を考慮して言ったらしいが…普通に借りてジェスさんが寝ているベットに行った。


「なんだそれ?」


 治癒医の先生が問いかける。


「えーっと、ジェスお姉さんが街を見て回りたいって言うから…台車で運ぼうと思うの。」

「おい…こいつは今もかなり辛い状況だぞ。それなのに…」

「…いや…行く…」

「お前…?」


 ジェスさんは既に葉っぱの色が変わり始めている。髪の毛も緑から乾燥した緑に変色しつつあった。


「分かった。出来るだけ安静に、だからな。ちょっと待ってろ。」


 そう言うと、治癒医は土台に柔らかめの座布団っぽいのを置いてくれた。


「背もたれのこれはなんだ。」

「あ、お姉ちゃんがツルで作ってくれたの。」


 本来台車を押す場所は2つの金属の棒で繋がっているだけだが、これでは寄り掛かるのは辛い。私がツルで加工し、寄りかかっても負荷が起きにくいように改良しておいた。


「ほう…まあ、これなら平気か?良いか、出来るだけゆっくり動かすんだからな?…見れば分かると思うが、ジェスはかなりヤバい状況だからな。」


 治癒医が彼の背中に腕を通し座らせる。…既にジェスは自力で立ち上がれないレベルまで衰弱しているのである。オマケでおぞましいことに、体の葉っぱは枯れ始め…取れ始めていた。メイと同じ運命ならもう余命数日である。私は私自身、歯で唇を噛み締めていることが分かった。どうしてこうなってしまったのだろう…。


「…わ…悪い…人間に…最後に…世話に…」

「気にするんじゃねぇ。これが俺の仕事だ。気になるなら、その街探検で元気になって戻ってこいや。」

「…ああ…」


 ジェスさんを台車に座らせ…私達の足は厳密には足では無いので、座ると言ってもしゃがむか正座が正しく、足を伸ばすことは出来ない…出発した。台車はシュウ君が押すとのこと。ギルドを出る時に周りからジロジロ見られたが一切無視した。

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