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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
負傷した「花」の運命
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塩対応と復讐心

「全く。お前がジェスを拠点に入れたと聞いた時、何事かと思ったぞ。俺ら全員裏切られたのかと思ったからな。」

「知りません。と言うより、裏切るって何ですか?」

「それはそうだろ。雌花の拠点に堂々と雄花が入って行ったらそっちに心開いたのかと思うではないか。」


 人間換算で、配偶者の目を盗んで不倫相手とラブホテルに行った感じか?


「私別にケリンさんにもジェスさんにも同じ様に接しているのですが…」

「だから故、俺らとは血筋がない雄花がお前の拠点に入ったら動揺するのだが…まあ良い。お前が自分が雌花だと自覚を持ったことがないことは俺も把握しているから目を瞑ろう。…全く、後800年以内にはそれぐらい身に付けて欲しいんだが。」

「800年ぐらいかければ嫌でも身につくと思いますよ…。」


 とか喋りながら、守衛を抜け…シュウ君を孤児院から回収し…シュウ君いらないと思うが、いつもの私の癖である…ギルドに入り、ジェスと会った。


「お前、まだ包帯つけてるのか。」


 ケリンさんはもう包帯をつけていない。胸辺りの傷は完治している様である。…花へのダメージはここまで治癒能力を変えてしまうのか。


「…はは…ケリンさんは…治ってるね…本来僕も…そうなるはず…何だけどなぁ…」

「見せてみろ。」

「え、ちょ…ちょっと?」


 ケリンさんがジェスさんの包帯を強引に取ったので私が動揺してしまった。ジェスさんの枯れかけている傷をジッと見て…ケリンさんは呟いた。


「お前…既に雄花死んでるな。敵の雄花に忠告するのは俺らしくないが…見殺しにしてマイに嫌われても困る。お前の仲間に遺言があるなら今の内に誰かに…無理そうならそこら辺の植物にでも言っておけ。二言はしない。」

「雄花が死んでいる?」


 私はケリンさんに問う。


「お前、そんなことも知らんのか…。まあ、俺も仲間が死ぬのを何度も見てきたから分かると言うのもあるが…俺らは花が命だ。花が死ねばどんどん枯れていくし、もう治ることもない。人間だって、死んだらもう傷は治らんだろ。同じだ。」

「………」

「そんな言い方はないだろ?俺だってそんなこと知らねえしさ。」


 横目で見ていた治癒医がボソッとつぶやいた。


「人間が知らないのは当たり前だ。しかし、マイが知らないのは困る。見かけに反し、マイはもう150歳半ばだ。お前よりもずっと歳上なのだぞ?」

「歳も関係無いと思うが…。」


 マイも絶好調であればケリンさんの言い分に反発出来たのかもしれないが昨日の今日である。マイの精神はボロボロだった。


「ところで、ギルマスの件はどうなっている。あれか?あの受付嬢に聞けば分かるか?」

「あーえーっと…」

「その表情だと分からなそうだな。あの女に聞いてみるか…。失礼する。」

「え、ケリンお姉さん?」


 ケリンさんは行ってしまった。実を言うと、ケリンさんは他の雄花に長く接していたのが原因でおじいさまからクレームが来ているのである。勿論、こっちに留まる件については人間が携わっているので了承済みなのではあるが…異なる血筋の雄花同士で話し合ったり共闘するのは…人間の組織換算で談合である。いわゆる犯罪行為に近いものなのであった。追々ケリンさんの塩対応の原因もマイは理解出来るようになってくるのではあるが…亀裂が入ったことは第三者の目でも明らかであった。


「お姉ちゃん。ケリンさんいつもより冷たい…。」

「そうね…。」


 私自身も普段以上に傷付いているのが分かったが…どちらにしろ、ジェスさんは予想通り死亡確定らしい。私の思いの中に二つの思いが湧き上がった。一つ目はジェスさんへの申し訳なさ。あの時、ケリンさんやジェスさんを束縛してでも私が止めて魔物を退治していればこんな事にはならなかった。私の考えの甘さと折角だから甘えちゃえと彼らに任せてしまった事に対する自身への憎しみであった。二つ目は、ケリンに対しへの苛立ちであった。ケリンさんの塩対応。仕返しとしてケリンさんを困らせてやりたい。そういった思いが芽生えた。負の連鎖とは恐ろしいものである。私の心は憎悪と憤慨で満たされ始め…体が動き始める。


「ジェスさん。一つ叶えて欲しい願いとかありますか?」

「…願い…?」

「ええ…私が出来る範囲で…ですが…」

「………」

「また戻ります。」

「…ああ。」

「シュウ君。行くよ。」

「え、あ、うん。おじさん。お姉さんを見てくれてありがとう!」

「うんにゃ。仕事だからな。気にするな。」


 二人が去った後、治癒医は呟いた。


「花が死んでいる…か。何とか出来ねえかなぁ…。」


 診ると決めたからには最後まで諦めない。彼のプライドがそう言っていた。視点は私に戻るが…ギルドの広間に戻るとケリンさんが壁に寄りかかっていた。


「あ、ケリンお姉さん。ギルマスさん、いたー?」

「シュウか。いや、どうやら体調を崩していたらしい。明後日には戻るそうだ。だからその時話すことにした。お前らも来るんだろう?」

「そうですね…。」


 私は上の空であった。まあ、ケリンさんがいるんだし…彼が全部話すだろう。私は適当だった。


「じゃあとりあえず俺は帰りたいんだが…出入り口まで案内してくれないか。いや…道は分かるが、俺が一人で歩いて良いものなのか分からんからな。」

「あー、そうですね。」


 とのことで、ケリンさんを街から追い出し…再びギルドに戻る。そして、ジェスさんの元へ向かった。


「…で、どうですか?」

「極論ならば…僕がダメでも…僕らの仲間と…」

「それは無理です。私はまだ自由に生きたいです。」

「…この街の…探索…か…」

「この街?」

「ああ…シュウや…カリン…後、村…街、見て思った…人間の拠点…見てみたい。」

「うーん…」

「無理か…?」

「シュウ君。ジェスさんがこの街を散策したいって言っているだけど…出来ると思う?いや、ジェスさんが自由に動けるなら出来ると思うんだけど…この状態だと、誰かが運ぶしか…。」


 シュウ君は腕を組んだ。10歳の男の子なのに、私に感化されてか…ハンターとしての責任からか…歳に対して大人びている感じがする。


「お姉さんに聞く!」


 と言うとスタスタ歩いていってしまった。最近の私の回り自由すぎる奴多い気がする。治癒医にお礼を言った後、シュウ君を追いかける。シュウ君はギルドホールでミサさんと会話していた。時間的にお客様とかは少ないのか?

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