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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
負傷した「花」の運命
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獣医ならぬ魔医

「…で、どいつが問題の魔物なんだ?」


 治癒医が問う。ギルドの奥の部屋の一つに私達はいた。ハンターの怪我人など日常茶飯事である。しかし、従魔となると…いくら他の街に比べテイマーが多いとは言え…怪我など滅多に起こさない。と言うより、擦り傷程度では医師など頼らず自分達で何とかするのが一般である。そのため、この治癒医も魔物の治療は副業で本業はハンターの怪我等が専門である。部屋も基本使っていないみたいで清潔感が欠けていた。


「えっと…ジェズお姉さん。」

「包帯まみれじゃねえか。何で直ぐ来なかったんだ?え?」


 ちょっと威圧系らしい。私は黙る。


「えーっと。」

「…これぐらいなら…普段は問題ない…はずなのだけど…ケリンも…不調は聞いていないし…」


 シュウ君が口籠もり、ジェスさんが答える。ケリンさんは無事なのか。彼は確か人間で言うところの左胸を射抜かれていたが…。やはり花にダメージを受けたことが直接の原因だろうか。


「とりあえず、包帯を取れ。そっから何か入ったかも知れねえし…()て見ない事にはわからん。」


 ジェスさんの包帯を取る。傷は治っておらず…寧ろ、穴が空いたところから茶色く腐り…いや、枯れ始めていた。


「何だこれは?!」


 医師の方もびっくりであった。治療医にはジェスが喋れる魔物と伝えてある。…ミサさんが事前に伝えたらしい。


「…な…何故…治って…いない…?」


 ジェスさん自身も驚いているようであった。


「とりあえず治療はするぞ。痛えかも知れないが我慢してくれ。…いや、魔物によったら消毒したら攻撃してくる奴もいるからな。本来であればテイマーに押さえてもらうのだが…。」

「ハハ…襲う力が今ないから…安心してくれて…いいよ…。」

「分かった。」


 治癒医が治療している間に私はジェスさんに傷の治癒について聞いてみた。ただ、話を聞く限りでは…彼も1000年以上生きている過程で、魔物と戦いやはり大怪我をしたこともあったらしい。しかし、その時は数日もすれば傷は癒えて跡形も無くなっていたらしい。人間でも大怪我したり手術したりすると傷跡は残る場合もあるが…やはり魔物と言うべきか。と言うより私も魔物だったわ。


(枯れ始めと言い…メイ…いや、最悪の事態だけは考えないように、考えないように…)


 私はマイナス思考が強い。まあ、そのお陰で危険な森の中を生きてこれたと言うこともあるが…実際今も私は冷静さを失っている状態。負の感情の暴走は良いことなど一つもない。


「ジェスさん…花に受けた傷は…」

「花?それか?」


 治癒医は花の方を見てそばに寄ろうとしたところ、ジェスが手を前に伸ばした。…何も起こらない。ツルで抵抗しようとしたか?


「く…来るな!!」

「お、おう?!」


 ジェスが急に叫んで頭を離そうとしたので治癒医は動揺した。


「おじさん!お姉ちゃんもジェスお姉さんもお花は命なの!急に近づいたりしちゃダメ!」

「あー、そういえばそんなことあの受付嬢は言っていたなぁ。悪いな。…しかし、命か…、聞きてえがその花は無傷なのか?体は3ヶ所も穴が空いて腐ってやがる。これだけ受けていると、見えていないだけで何処か穴が空いていてもおかしくねえが…。」


 流石治癒医か。魔物の治療を今まで…魔物じゃなくても人間でもそうか…見てきただけはある。


「あ…えっと…」

「…心当たり…あるか…」


 シュウ君が動揺し、ジェスが落ち込んだ。しかし、ジェスは更に花を庇うような素振りを見せ始めた。


「ダメだ…僕の…花…人間に…触れさせれ…」


 治癒医は腕を組んだ。話を察するに…まあ、当本人とかマイじゃないので花がどれだけ貴重で重要なのかは理解していないだろうが…花に何かしらダメージを受けたことは明らかである。であるならば、本来治療の為ちゃんと見たり治療をすべきなのであるが…魔物本体が抵抗している。魔物にゴリ押しなどすれば自身が攻撃される。迂闊には手を出せない。


「その花は普段からそんな形というか…例えば、傷がついて何処か穴が空いているとか…その雄蕊と言うべきか?が欠けてるとか…何でもいいから何かないのか?」


 治癒医は他のところの治療は終わったらしい。やはり花を気にしていた。


「うーん、どうだろう。」


 シュウ君も考える。私が帽子を取って正常を見せても良いが…いや、私は雌花である。構造が違う。それ以前に人間換算で急所を他人に見せるなど論外である。シュウ君が私の花をジーッと見たり触ったりするのさえ私は抵抗がある。それぐらい、私達は花に対し敏感であり、意識的に見せてあげようなどはしない。


「シュウ君。花の形より…氷の棘とかは?」

「棘?」

「あ、そう!えっと…お姉さんの腕とかを貫通した氷の棘みたいなのが、お姉さんの花に刺さってたの。だから、ケリンさんと二人で抜いたんだよ。」

「刺さった?あー、さっきの腕やら腰やらの穴もそれか?」

「うん。」


 治癒医は再び考える。あれだけの穴が開き、貫通するぐらいの勢いで来た棘がその花に刺さったらどうなるか。花の横から刺さったのであれば外傷はもっと明確であるはず。要は垂直方向であろう。この魔物はその花は命と言っていた。それにあれだけの威力がありそうなものが刺さった場合…治癒医は決断した。


「とりあえず、空腹の状態から始まったとのことだったな。ここはハンターギルド。空腹が治れば多少は良くなるかもしれん。主食は何だ?とりあえず、今日は奥にある魔物用のベッドで寝め。」


 治癒医はジェスを案内して行った。食べ物については…あー、多分現状ジェスさんはツルを制御出来ていない。ベッドで休むなら光合成も不可能である。まあ、そこら辺は任せる事にしよう。私達2人は診察部屋を後にした。

 ここでは治癒医と書いていますが…結構適当に設定したので、今後若干違う表現になるかもしれません。ただ、同じ職種を指していますので、そこはご配慮下さい。

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