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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
負傷した「花」の運命
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焦る雌花

「あ、マイさん。今日も時間が…」

「すいません緊急です!病人です!今すぐギルドへ通して下さい!」

「あ…ああ、構わんが、落ち着け。何がどうしたんだい?」

「私の仲間が…」


 私はチラッと横のジェスさんを見る。顔色真っ青であり、包帯も巻いている。まあ、包帯は数日前のものだが…前回入るときもケリンさん、ジェスさん共に大丈夫か聞かれたが…大丈夫と言っていたし表情も問題なかったため守衛さんは素通りだった。しかし、今回はどう見てもヤバそうである。


「ギルドか。まあ、テイマーの魔物もそこで治療するし…分かった。シュウも寄越すなら俺らの内、誰かが迎えに行ってやろうか?」

「あ、よろしくお願いします!では!」


 私は早くしないといけないと言う概念から走ろうとしずっこけた。私達の体は疑似スカートが地面まで延びている点や足がそもそも根っこで出来ていると思われるため走ることが出来ない。重心が狂った魔物なのでどうしても転倒してしまうのであった。


「ま、マイ…大丈夫…」

「おい、大丈夫…」

「大丈夫です、大丈夫です。早く行きましょう!!!」


 マイ。そんなに急ぐと、頭から転倒して花地面に打ち付けるよ?まあ、そこまでドジじゃないから大丈夫か。私は転ばない程度に急いだが、結局その事に気を遣いすぎて却って疲弊だけ促してしまっていた。そんなに早くギルドへ行けるわけでもなく…と言うよりシュウ君が来るまでギルド前待ちだったため…余り意味はなかった。


「はぁはぁ…」

「ま、マイ…?そこまで…しなくても…」

(シュウ君!急いで!)


 シュウ君にしてみれば何故そんなに従魔が切羽詰まっているか分からないだろうが…そのため急いでこないだろうが…それでも、ちゃんと着てくれた。


「お、お姉ちゃん?大丈夫?何だか守衛さんが緊急っぽいから早めにギルドに向かえって…お姉ちゃんがいるからって…。」

「シュウ君遅い!ジェスさん死んじゃう!」

「え?」


 急に怒鳴られたら誰でもキョトンだろう。シュウ君は良く分からず、私が指差した方を見る。ジェスさんは相変わらず顔色真っ青だった。


「ジェスお姉さん?!どうしたの?!」

「あ、ああ…シュウか…ああ…」

「細かいことは後!ギルドに入るわよ!」

「う、うん。」


 一応言っておくが、同じ病気でも症状は十人十色である。メイとジェスは同じ原因だが出方は結構違った。まあ、統計が少なすぎるので症状が良く分からないと言うものもあるが。そしてその結果がすぐに起きた。私達がギルドに入った後…私がミサさんの受付の場所を探していると…私はコミュ障の為、極力知っている人が良い…横でドサッと音がした。


(うん?)

「お、お姉さん?!」


 たまには補足をいれておくが、シュウ君が言っている「お姉さん」とはジェスさんのことであり、ジェスさんは雄花なので厳密にはお兄さんである。まあ、見た目は18歳ぐらいの少女なので紛らわしいのであるが。


「な、なんだなんだ?!」

「どうした?!」


 見た目18歳ぐらいの少女が倒れたのである。現場は騒然となった。私は流石に倒れるとは想定外だったため私自身がパニックになる。硬直してしまった。


「お、おい!どうした?!」


 そばにいたハンターが一緒に入ってきたシュウ君や私に声をかける。


「お、お姉ちゃん!」

「あ…」


 私は我に返る。


「すいません!彼、病気なんです!見ていただけないでしょうか!」


 パニクっていた私は小並感丸出しであった。


「い、いや…俺に言われても…」

「どうかしましたか?!」


 受付から受付嬢が駆け付ける。ミサさんもいた。やはりやり手である。


「あ、ミサお姉さん!ジェスお姉さんが、ジェスお姉さんが!!」

「ジェスさんですか?!」


 ミサさんは倒れたジェスさんに対し、肩を叩いたりして反応を促す。


「…あ…ああ…す、すまないね…ちょっと、立ちくらみが…」

「どうしたんですか?」


 ミサさんはジェスさん、私、シュウ君と見る。


「うーん、お姉ちゃんが、緊急って…」

「あ…えっと、ミサさん。ギルドって魔物の治療出来ますか?」

「うーん、マイさんなら確実的に出来ますが…ちょっと待ってください。」


 ミサさんが奥の方に向かう。ジェスさんは息を切らせながら立ち上がった。


「おい、姉ちゃん。大丈夫か?」


 あるハンターが声を掛ける。


「…すまない…何処か、座らせてくれ…」

「あ、じゃあこっち!」


 シュウ君の案内の元、ギルドの端の方へ向かう。容態はかなり悪そうである。少しして、ミサさんがやって来た。


「丁度魔物の治癒医はお手隙のようです。テイマーの魔物しか基本診()ないのですが…まあ、マイさんのお知り合いですし…見殺しはこちらも不都合ですのでゴリ押してきましたよ。」

「あ、ミサさん。ありがとうございます。」

「その代わり今度また花の蜜を下さいますか?」

「あー、それとこれとは別…とは言ってられないので死なない限りならいくらでもどうぞ。」

「…余程緊急そうですね…今の話は冗談ですよ。忘れてください。」


 どうやら、ミサさんも事の重大さが理解出来たようである。ミサさんにとってマイは魔物ではあるが、なんか色々抜けている妹みたいなイメージなのである。弄り倒すのが面白いし、時には真面目に時には馬鹿やっている女の子。しかし、マイの反応的に今のマイは真面目と言うより何かしらにとらわている…そんな感じがしていた。

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