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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
負傷した「花」の運命
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雄花の体調不良

『姫様。雄花が姫様の拠点に近づいております。害はなさそうですが…念の為です。』

「え?」


 私は絶賛自分の拠点で光合成中なのだが…ケリンさんやジェスさんには拠点の側には来るなと言ってある。なお、ケリンさんが残っているのが原因でジェスさんもここの周りにいる。完全に歪み合いであった。まあ、ケリンさんはギルマスへの報告が済めば帰るだろうが…どうせ入れ替わりで他の雄花が来る。ジェスさんも…これはあくまで予測だが…次の監視待ちだろう。もう私ではどうしようも無かった。


「誰?ケリンさん?ジェスさん?他?近づくなって言っているのに。」

『少々お待ちください。』


 少しして連絡が返ってくる。


『ジェスという雄花だそうです。本人は緊急と言っております。…と言うより、助けて欲しいそうですが。』

「助け?うーん、まあ良いや。念の為だけど、魔物に襲われたとかじゃないよね。」


 ジェスさんは今ここら辺をうろうろしている。魔物に襲撃とかされているなら、助ける前に駆除優先である。私が死んでしまう。


『いえ、そう言うわけではなさそうですが…。』

『姫様?今ここら辺には魔物はいないでっせ?』

「???」


 まあ、百聞は一見にしかずと言うし…ジェスさんが来るのを待つ。本来来るなと言っているのである。取り分け、雌花の命令に反くのは雄花の威厳に背く行為。そこまでして…私の忠告を無視してまでして、来る理由とは何なのだろうか。少し待つとジェスさんがやってきた。顔色があまり良くない。


「ああ、マイさん。申し訳ない。お腹が空いてしまって辛いんだよ。確か雌花は普段光合成で生きているって聞いてね。腐葉土について詳しいんじゃないかと思って…あ、あれだ…今もかなり辛いから、マイさんが丁度光合成をしていると聞いて割り込んでしまった。」

「あー、植物経由で私に聞けば良いレベルじゃないのですか?」

「すまない…どうしても直ぐに腐葉土か何か…と思ってしまってさ…。この辺り、魔物が少ないし…。申し訳ないんだけど…。」


 ジェスさんはかなり弱々しい。第一、ここら辺は魔物が密集している地域ではないが…雄花も密集しているわけではない。ケリンさんもここら辺をうろうろする時には、まあ習慣上狩りもするらしいが…いつもより狩りの頻度が少なくても生きていけているとのこと。私は滅多に狩りをしないため意識的に光合成をしているが…狩りで魔物を食べていたとしても、追加で光合成での養分も手に入るはずなのである。少々狩りが滞っても数日でここまで体調をきたす程、空腹に見舞われるだろうか?もしそれがあり得るなら、ここら辺の土が本当の本当にダメになっている時であり…私は直ぐにでも拠点を変えなければいけない重大案件なのであるが…。


「ま、まあ…困った時はお互い様ですし…別に構いませんけど…うーん、空腹かぁ…。」


 私は何処かで似たようなことがあったような気がして記憶を遡る。そして、思い当たる節が引っかかり…私も顔色が青くなった。


(ま…確か、ジェスさんって数日前花を攻撃されて…う、嘘?!だって、ちゃんと花くっついてるじゃない!なんで?!)


 思い当たる節とは…私の妹のメイの病状であった。花を魔物に捥ぎ取られ、花から栄養のつまった蜜を体に送ることが出来なくなったいわゆる餓死になる直前の状態。後日、既にジェスさんの花が死んでしまっていることを聞くのであるが…今の私はまだそんなことを把握出来てすらいなかった。補足であるが、花の死とは「蜜を作れない」ではなく「蜜を分解し体に送れない」である。作るだけなら体の葉っぱを使った光合成や食べる事によって無意識に実施出来る。ややこしいが間違えてはいけない。


(とりあえず何とかしましょう。えーっと、私の記憶ではこの場合、光合成はダメ。口からの接種もダメ。ツルからは…うーん、分からないけどそれで済むならジェスさんは苦しくならないはずだし…。)


 頭をフル回転させてみたが…さっそう詰んでいた。どうすれば良い?


(人間に頼むか…他方法が分からない。)


 少なくとも魔物よりは人間の方が治療と言う意味では上だろう。魔物が人間に頼るのはどうかと思うが…アイデアが全く思い付かなかった。


「ジェスさん。ある程度の距離動けそうですか?」

「…ま、まあ…可能と言えば可能だけど…ツルを使った移動だけはちょっと…」

「了解です。」


 頭の中では1秒でも早くギルドへ直行と言う思考回路になっていた。10歳ぐらいの少女の私より遥かに大きい18歳ぐらいの少女がジェスであるが…私は帽子と服を身に付けた後、ジェスさんを体に縛り付け強引に森を抜ける。


(…自分より大きな物を背負うのはキツいわ。。)


 シュウ君においてはもう完全に信頼しているので、落ちない程度での縛り付けにしているが…他の生き物は花を触られると言う警戒心がある。ジェスさんも体の自由は腕等含めツルで束縛し背中で何も出来ないようにした上で運んでいった。最も、ジェスにはそのような余裕はもうないのであるが…マイも帽子被っているし。


「街道に着きました。しばらく徒歩で…」

「何処へ…行くんだい…?」

「ギルドです。」

「え…腐葉土は…」

「私の経験上…あー、とりあえず飢餓状態は腐葉土では対応出来ません。と言うより私では対応出来ないので…ギルドに聞いてみようかと…。」

「人間ならば…何か分かるのかい…?」

「それも分からないですが…宛がないのです。」


 ジェスさん的に人間ならば分かると言うことならば原因も人間ではと考えているようであるが…残念ながら人間でも分からない。と言うより人間は関係ない。


(あー、急いでるときに待たされるのはイライラする!)


 デレナール領の入口は今日の今に限って混んでいた。午後2時ぐらいだろうか…守衛に到着する。

 ここからしばらくシリアス展開になります。ご了承ください。

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