久しぶりのハンターギルド
(守衛からギルドまでも遠いのよね。)
守衛を突破し…シュウ君と私の顔パスで、二人の魔物は無事通過した…ギルドに向かう。私としては、カリンさん襲撃事件やらそれに紐づくケリンさんやおじいさま木の伝言を伝えなくてはならない。まあ、シュウ君も同じであるが…。ギルドの受付嬢で一番話しやすいのはミサさんである。ミサさんはいつ休日取っているのか分からないぐらい私が行くたびに受付嬢として仕事をしているのであるが…まあ、今日も例外なくいたのでミサさんが対応しているところに並んだ。周りからはチラホラ見られている。ギルドはシュウ君や私は常連だが…ケリンさんやジェスさんは常連じゃないし、第一分かる人には人間じゃないとバレる。バレなくても、上半身疑似ブラジャー除いて裸の女性と少女を見れば異常を察知するだろう。頭には大きな花をつけているんだし。
「全く、何故俺が毎度毎度人間の拠点に行く度にジロジロ見られなければならんのだ。」
「ぼ、僕もこう言うの苦手だなぁ…マイさんがいるから仕方なく人間の街に入ったけど。」
「嫌なら帰っても良いですよ?」
「いや、ジェスが離れるまで俺はいる。」
「僕もシュウの荷物持ってるしね。」
「………」
補足であるが、私達はバランスが悪い魔物。背中に重い荷物を持てば歩くことが出来ず転倒してしまう。しかし、ジェスは既に体格的には18歳ぐらい。しかも、バックの中の食料は空っぽ状態。治療道具も大分使ったため減っている。そのため、ジェスはカバンを背負ったまま歩くことが出来るのであった。「こいつらいつまで着いてくるんだ…。」と悩んでいる私なのであった。私の記憶では私達は人間に恐怖を抱いている魔物。私でさえも、人間に心を開いているわけではない。雄花など、シュウ君みたいな人間もいないのであるし、尚更追い払えるはずなのであるが…何故なのか。
「はい、次の…あ、マイさん。シュウさん。お久しぶりですね。何処かに行かれてたんですか?」
「あーはい。うーん、シュウ君が報告する?」
「う、うん。やってみる。」
とのことなので、シュウ君が報告をし始めたらミサさんがストップをかけた。
「長そうですね。ここで話すと後ろがつっかえますので…あっちで話しますか。」
ミサさんはギルドの奥側にあるテーブルを指差した。シュウ君も了解とのことなのでそっちに行く。テーブルは4人掛けだが、ミサさんは何処かから椅子を持ってきてそこに座った。常備なのか、筆記用具と紙も持って来ている。
「で…マイさん。とりあえずもう突っ込みませんからね。」
「お疲れ様でーす。」
「はぁ…あー、えっとそちらはケリンさんですかね…もう一人はえーっと、マイさん。どちら様でしたっけ?私物覚えが悪くてですね…。」
「ジェスさんだよ。荷物運び手伝ってもらったの!」
「途中で出会った雄花なので、ミサさんは初ですね。」
「あ、そうなんですね。ジェスさんよろしくお願いしますね。」
「あ、うん…。」
ジェスは私を見ながら上の空で返答した。私は机に突っ伏している。
「えーっと、ジェスさんも雄花っぽいですね。どう言った心境かは分かりませんが…マイさん普段こんな感じですよ。私が男性として、マイさんが女性なら真っ先に見切りますが…はい。」
「ミサさん。今日はどこの首絞めますか?」
「マイさん。ちょっとおちょくられただけで私を殺そうとするの止めてください。」
「えー。」
「ケリン…あー、マイって…」
「安心しろ。こいつはこんな奴だ。見捨てて帰っても良いぞ。シュウの荷物ぐらい俺が運んでやる。」
「ケリンも荷物持っているからシュウの荷物は僕が運ぶよ。」
ケリンさんが持ってきたツルで作られたバックももう中身は空っぽであった。ケリンも20代の女性の体格のため、空であれば歩いて運ぶことが可能である。まあ、シュウ君のバックとは違い自分で作れるんだから何処かに捨てても良かったとは思うのであるが。
「え、えっと…ミサお姉さん。それでね、さっきの続きなんだけど…」
「ああ、そうでしたね。こんな腑抜けは置いておいてしっかり者のシュウさんから話を聞きましょう。」
「ミサさん。喧嘩なら買いますよ?」
「おー怖い怖い。」
私はムスッとしたが突っ伏したままボーッと話を聞いているのであった。シュウ君はまだ10歳。おじいさま木とかの話とかにも介入して貰ったとはいえ、全てを的確に伝えれるわけではない。いや、そんなことは前世コミュ力がなかった私も150年以上生きてきた今の私でさえ無理である。シュウ君が言うことに対し、私やケリンさんが補足として追加していく。
「ジェス。良いか。これはこっちの雄花の話だ。本来お前が聞いて良い内容ではない。情報漏洩をしようものならどうなるかわかっているよな?」
「…分かっているよ。流石に他の雄花を敵に回したくはないしね。雌花だったら別だけど…それ以外で命はかけたくない。」
私は雄花事情は分からないが、基本的に情報共有はしないらしい。まあ、「ケリンさんの拠点でそのような被害が出ている」と言うのはダメとしても、「同族が人間に見つかり人間に脅威に晒されている」と言うのは伝えそうではあるが…。まあ、そう伝えてしまうと、全く関係ないシュウ君やミサさんまで巻き添えになりそうであるが…まあ、私としてはシュウ君が無事なら何でも良かった。