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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
巨大な魔物との死闘
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死闘の雄花達

(全く、あいつは馬鹿か!)


 ケリンはジェスの後を追う。想像的に敵の強さは雌花の生息住みかで一般的な魔物レベル。雄花にして見たら荷が重すぎる。雌花に強引に会いに行こうとする場合には雄花集団で向かい多勢に無勢で挑むのが鉄則。それでも犠牲は付き物だが…そうするのは雄花同士で見殺し合いが起きてしまうので雌花に合う最終手段なのである。


(2匹で挑む馬鹿がいるか、共倒れだぞ…しかし…)


 万一がある。万一ジェスが大物を倒せてしまった場合、マイこと雌花が取られてしまう可能性がある。マイは個人的につかみどころがない性格。彼女の矛先は今はシュウだが彼は人間でマイが成熟する前には100%死ぬ。彼女が不安になっているときにまあ達は悪いが俺らの仲間がフォローに入れば引き込みやすい。しかし、ジェスに矛先が行ってしまうとそれこそ収集付かなくなる。それだけは避けねばならない。


(ジェスに追い付いたか。)


 植物の情報も考慮し、大体ここら辺で構えるだろうと思ったところの側にジェスも構えていた。それを考えて、恐らくマイならここまで来なくてもさっきの休憩場で敵を処理するだろうと思われる限り…雌花の実力は飛んでもないと思わざるを得ないのであった。


「ケリンも結局来たのか。」

「手柄をお前だけにさせる気はないのでな。」

「ふん、大きなお世話だよ。」

『お二人とも、喧嘩はそこまでです。魔物が近づいております。後、補足ですが…姫様も最終的には向かうと思いますが、迷惑はかけないように。』

「ああ、大丈夫だ。マイが来る前に終わらせる。」


 ジェスが言った。ケリンとしては迷惑の意味を履き違えてないか?と考えていた。2人とも敵が近づくのを待つ。射程に入ってきたところで2人とも敵に攻撃を仕掛けた。


「やったか?」

「いや…まだだ。」


 2人でツルを使い束縛しているはずなのだが…手応えが微妙でほどかれている感じがする。いや、ほどかれると言うより…何かで固められ砕かれてるか?その後、何かが森の置くから見えてきていた。


(不味いな。)


 マイやケリン含めたアルビトラウネの攻撃方法はとにかく遠距離攻撃なのである。敵が視野にはいるのはそれだけ敵が近いと言うことになる。そして、人間なら匂いにそこまで敏感ではないが…強力な魔物の場合、匂いに敏感でそれ故、森の中でもばれてしまうことがある。


(若干引くか?)


 ケリンは一歩後退の為、ツルを使い乗っている木の位置を変える…が、ジェスはそのまま襲撃を開始していた。


「お、おい!」


 襲撃と言えど、カリンではない。戦い方は推定年齢1300歳ぐらいのジェスである。地面にツルを刺し、敵の足元を固定していく。


「グルルルル…」


 視野に入った敵は、身長的に優に5mを超えた熊であった。しかし、全身が氷で覆われている。足元を固定したツルは瞬く間に凍りつき粉砕されていた。


「く、僕の攻撃が効かない?」


 動揺している余裕はなかった。逆に敵の方は、口から氷の礫…と言うより、かなり細長い氷の群れだが…を大量にジェスとケリンに向けて放ち始めていた。…相手も遠距離型。アルビトラウネは相手の視野に入る前に仕掛けると有利であるが、入ってしまうと一気に不利になる。


「ギャア!!」


 ジェスは攻撃体勢を取っていたため、身動きが曖昧だったのだろうか。直撃してしまった可能性がある。ケリンはちょっと背後に行き木の枝に隠れていたため、ダメージは薄かったが木の方が悲鳴を上げた。


「す、すまない。こっちで何とかする!」


 ジェスの方から向かうのは危険である。あいつの方が敵に近いがゆえ、向こうも優先順位はあっちだろう。ジェスと反対側の方から向かい、再度ツルを使って畳み掛けようとする。


「おお、これなら行けるか?」


 敵の熊を再度見ると、足が2ヶ所ツルで固定されていた。どうやらジェスは捨て身で敵の攻撃を受け不意で固定しようとしたらしい。


「俺が援軍みたいになってしまってるのが癪だが…死ぬよりはマシか…。」


 ケリンは木々の隙間から敵を見てツルを地面に刺し、四足を固定しようとする。後、氷魔法と打ってくる辺り、口も封じ込めたい。その時、相手は「ウオオオオンンン」と大鳴きした。相手の体が若干白く光輝くと同時に回りの気温が一気に落ちたことが分かった。敵の足元のツルが全部凍りつき砕け散る。


(あの化け物はなんだ?!)


 ケリン達は植物の魔物のため、寒さと言うものそのものは感じにくい。でないと、冬過ごせない。人間とは違い服を着るなんてことはないのだから。とは言え、低温過ぎると植物も枯れてしまう。そして、あの魔物の発する冷気がケリンもジェスも行動を鈍らせていた。


「ゴオオオオ!!!」


 口から更により強力になった氷の礫を回りに振り撒く。ジェスはケリンからは見えないが、どちらも襲撃されてしまった。


「グ…」


 ケリンの場合、敵からかなり離れ…大分煩雑な場所から襲撃していたが、多大な量の礫では対応しきれない。気づいたら胸元に尖った氷の氷柱…と言うべきだろうか。長さ50cmぐらいか…が、刺さって貫通していた。雄花とは言え葉っぱで出来た疑似ブラジャーが付いている。ブラジャーごと、左胸を貫通していた。


(く…持つか、俺の体…)


 ケリンは魔物である。人間程柔ではない。とは言え、致命傷には変わりない。ケリンは何とか再度ツルで束縛しようとして…乗っている木が折れたことが分かった。


「な?!」


 どうやら、敵はジェスの方ではなくケリンの方にヘイトを向けたらしい。匂いによって何処にいるか悟られてしまったか。体を木の枝に固定していたこともあり…とっさに固定を解除したが…そのまま転落する。横向きに落ちたらしく、刺さった氷を悪化させるようには落ちなかったようだが…目を開けると、絶望しかなかった。倒れた真ん前には氷で覆われた熊がいて…左を向くと…ケリンは右側を下にして倒れているため、実質上を見ることになるのであるが…熊の牙が顔に向かって近づいてきていることがわかった。


(ここまでか…)


 ケリンは死を覚悟した。

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