テイマーと雌花の限界
「シュウ君はどう思う?」
「うん?僕?」
「うん。うーん、わかりやすく説明すると…昨日盗賊がカリンさんを襲っていたでしょ?」
「うん。」
「そう言うことがあちこちで起きているんだって。だから、なんとかしたいっておじいさん木もケリンさんも言っているんだけど…シュウ君は何かあったりする?人間代表として意見することになってしまって申し訳ないんだけど。」
「うーん…」
シュウ君も腕を組み考え始める。予めだがシュウ君は10歳の少年である。言わば村人Aと同じ。従魔にアルビトラウネの雌花と言う魔物がいるだけである。ドラゴンを従魔にしているわけではない。寧ろ人生経験だけなら150年以上生きている私や1600年以上生きているケリンさん、おじいさん木に至っては1.2万年である。それだけ生きていても埒が明かない課題なのである。
「うーん、僕じゃ無理だから…ギルマスさんとかに聞いてみるとかが良いかも。」
「ギルマス?なんだそれは?」
「僕達ハンターのリーダー的な人?」
「ケリンさん。昔、ハンターの拠点でミサさんから説明受けていませんでしたっけ?」
「そうか?忘れたな。」
まあ、私も記憶力は残念なタイプなので同情した。
『やはり人間の偉い輩が出ないとダメなのかのぉ。事を大きくして息子達を人間の危険に晒させるのは避けたいんじゃが…。』
「シュウ。おじいさまは立場が上の人間が携わると却ってややこしくなるのではないかと言っているぞ。」
「うーん…でも、僕やお姉ちゃんだけで悪い人全員捕まえるの無理だよ…。」
「私もシュウ君の意見に賛成よ。さっきも言ったけど無茶よ…。と言うより、植物の声聞こえるんだから襲われそうになったら気づくものじゃないの?」
「俺らだったらな。こいつも勿論植物と会話は出来る。だか、カリンはまだ無理だし…捕まったり殺されたりするのは若い仲間が多い。彼らを守ろうとしてやられた中堅の仲間とかもいるが…。」
「あー。」
いわゆる当たり前であった。成長しきってしまった同族よりかはまだ未発達の雄花が狙われるらしい。おそらく、戦闘経験も浅く警戒心も曖昧なのだろう。肉食動物が草食動物の子供を狙うのと同じ。あるいは子供に対し目を離したら…気づいたら道路のど真ん中にいて車に轢かれるイメージか。実際、カリンも私達が助けなければ今頃死体か連れ去られていただろうし。
「やっぱりギルマスとかに言わないとダメだよ。ややこしくなっても…相談しないことには分からないよ。うん。」
シュウ君もそれ以上は言えない様である。
「おじいさま。いかが致しますか?」
『そうじゃの。人間サイドでもそれ以外無いのであればそうするしかあるまい。人間をわしらは信頼しておらんが…全員が敵とも思っておらぬ。今回の件はシュウ。お主に任せる。』
「シュウ。おじいさまはその…なんだ?ギル…」
「ギルマスよ。」
「ギルマスに相談して良いとのことだ。おじいさま。任せるとのことですが…流石にこの子供一人に任せたところで今日の明日で誘拐事件とかは解決しないと思いますが…今後同じことがあったら吊し上げるのですか?」
「は?」
ケリンさんの話に私は眉を顰めた。
『それはないの。わしもそこまで期待しておらぬ。状況改善が優先じゃ。』
「私からのアドバイスとしては、自衛が出来ない雄花は極力自衛が出来る雄花と共に行動するとかですかね。カリンさんを見て思いましたが…あんな無警戒じゃ襲われるのは当たり前ですよ。」
「カリンは人間に対して甘すぎるからな。困ったものだ。」
「僕があいつとっちめてやろうか?今まで見てきた弟の中で過去最低なんだよなぁ。」
「お前に任せると最終的に二人で殺し合いになりそうだからダメだ。」
二極化した雄花同士を側に置くのは不味いらしい。まあ、人間の場合でも殺し合いにならなくても精神的にはおかしくなりそうだし…結局殺人事件になってしまうこともある。
「じゃあまあ…方針としてはシュウ君の案で良いですか?」
「ああ、一先ずはそれでいこう。状況改善しない場合はまた問い合わせる。」
「ケリンさん自身も分かっているとは思いますが、即刻解決は見込めないですよ?第一デレナール領は魔物に比較的優しい人々の住処です。ここら辺でケリンさんの仲間を襲っているのはデレナール領民…とは限りませんからね。」
先日の盗賊も出身はデレナール領じゃないとのことだった。シュウ君は人身売買されそうになっているが…それを実施した両親…かは不明だが…や、その取引連中もデレナール領とは無縁のはずである。デレナール領のギルマスに言ったところで影響が何処まで届くのかは不明だが…まあ、お偉いさん方なら他の領民や国民へのパイプラインぐらい持っていると勝手に期待することにしておこう。
「じゃあシュウ君。シュウ君の案が採用されたみたいだし、帰ったらギルドに報告しますか。」
「うん!」
結果どうなるかは分からないが…まあ、何もしないよりはマシだろうと考えている私であった。議題も完了したことだし、私達は帰ることにする。某雄花が
「いいか人間!2度とここに入って来るな!入ってきたら僕が真っ先に殺しに行くからな!」
と、捨て台詞なのか…場合によっては自分が歓迎するよ!って逆転の発想にも取られるような発言をしていたが…無事、村に戻って来たのであった。お昼は当に過ぎている。シュウ君のお腹がグーと鳴った。
人間憎悪度Maxキャラを作ったのですが…流石に、この物語上何度も登場させるのは難しいですね。。。私も残念ながら人間なのでそんなキャラを運用し続けたら鬱病になります。