雌雄における植物の優先順位
「お、おい!その人間をおじいちゃんに…」
『構わぬ。今回だけじゃ。その子にも言うておくが、今回だけじゃぞ。本来であればお主はここに来る前にわしの息子達に当に喰われておる。』
(そう言えば…)
ふと疑問に思ったのでシュウ君に聞いてみる。
「シュウ君。この木あるでしょ。」
「うん!物凄く大きい!!」
「そうね…私のおばあちゃん木はもっと大きかったのよ?…今はどうなってるか分からないけど…。」
「そうなの?!」
「そう。…で、今この木がシュウ君に話しかけてるんだけど…聞こえてる?」
「え?そうなの?うーん、何も聞こえないよ?」
『なんじゃと?』
「そうなのか?」
おじいさん木とケリンさんが共に驚いて発言した。
『うーむ。わしは木の姿になる前は…人間にはあったことはないが…おそらく、わしの子供達と同じように発声していたはずなのじゃが…気づかなかったわい。人間も役に立つ時があるのぉ。』
皮肉られた感じしかしなかったが…まあ、とにかくおじいさま木はシュウ君に声をかけることは不可能みたいである。
「じゃあ俺が通訳しよう。シュウ。簡単に言えばさっき俺が言った通りだ。おじいさまは今日はそばに来ることを許すが普段は絶対に立ち入るなと言っている。」
「おじいさま?」
「おい、人間。おじいさまを馬鹿に…」
「シュウ君。おじいさまとかおじいさんとかそう言うふうに言われたらこの木のことだと思って。シュウ君は聞こえていない…と言うより人間だから聞こえないだけだと思うけど…この木も喋ってるの。後、ケリンさんの生みの親だから。うん。そこだけ理解しておけばまずは大丈夫かな。面倒臭くなるから、この木には触らないこと。いい?」
「うん!わかった!」
まあ、私はシュウ君の右腕を左側のツルで束縛しているのでそこまで接近は不可能なのであるが…念の為である。
「お前も一々噛み付くな。おじいさまも今回は例外と言っただろう。」
「そ、そうだけど…雌花が重要だからって、人間連れてきて良い理由にならない!」
まあ、極論はそうなのであるが…シュウ君もお留守番していれば揉めなかっただろう。ただ、シュウ君を村に置き去りは万一の時守れない。デレナール領は人間の守衛等幾らでもシュウ君の…と言うより人間のガードはいるが…あの村にシュウ君を置き去りに出来るのか…信頼は微妙だった。
『言っておろう。雌花に歯向かうのはデメリットしかないと。お主も戦ってわかったじゃろう?手も足も出ないことぐらいのぉ。お前より断然強いケリンでさえ雌花の慈悲がなければお前と同じ目に遭っていたんじゃぞ?』
「ケリンさん。いや、私が強いのはわかります。まあ私はまだまだ修行不足な感じもするけど…だけど、不意打ちとか喰らえば私だって流石に…」
「いや、マイ。言ったかどうかは覚えていないが…雄花は雌花に不意打ち出来ない。その前に植物が連絡してしまう。寧ろ雄花には嘘の情報が流れるだろう。…この雄花は名前がないのだが…どうだ。マイと戦って見て手応えは。植物はちゃんと応答してくれたか?」
「そう言えば…人間食い殺すようにトラップ仕掛けたのになんかバレてたし…後ろからの不意打ち気づかなかったし…まだ、森の中で後5分ぐらいは来ないって言ってた。」
「と言うことだ。マイ。だから雄花は絶対に雌花に勝てん。」
私は「植物達ってマジで怖いわ…」と思っていた。まあ、私を優遇してくれると言うことは私としてはありがたいが…雄花目線として植物が裏切りまくってくる行為は恐怖以外の何者でもないだろう。ある意味可哀想である。
「知らないよ。人間に肩持った雌花なんて絶対倒してやる!」
『止めておくのじゃ。人間に恐怖を抱く感情があるのはわしも同じじゃ。じゃが、それと雌花とは別問題じゃ。』
人間換算で蛇を飼っている飼い主について…蛇が怖いため飼い主が嫌だとしても、飼い主を殺してはいけないのと同じである。この雄花も人間に関わる雌花が嫌なら嫌でお仕舞いにしなければならない。雌花に攻撃なんてしたら、人間社会同様罪人として咎められることには変わりない。
(埒が明かなそうね。とっとと用を済ませて撤退しましょう。)
話がずれすぎているので私からアクションを起こすことにする。
男女差別反対と聞こえてきますが…皆が作った普通は早々覆らないのが現実です。受け入れた上でどうするか…それしかないでしょうね。。。