テイマーの特権
「さてと…村は良しとして本題だが…マイ、出来ればおじいさまと直接話がしたい。来てくれないか。」
「あー、別に構いませんが…私以外は?」
「無理だな。敵の雄花も人間も、俺らのおじいさまの側につれては行けない。」
「そう…」
しかし反発する人がいた。
「そう言われればしょうがないか。また戻ってくるまで俺はカリンと会話するか。」
「それは構わん。カリンに迷惑かけなければ何を話しても構わん。カリンにはお前達を見ておいてもらおうと思ってるからな。」
「僕もしょうがないか。まあ、雌花待ちしてるよ。」
「カリン。隙を見てその雄花は殺しても良いぞ?敵地に侵入する方が悪いしな。」
「ちょ…僕まだ戦闘経験そんな無いよ…。」
「お、お姉ちゃん…行っちゃうの?」
「あー、まあそうなるわね。」
「やだ!僕はお姉ちゃんのテイマーだもん!お姉ちゃん1人でどっか行くのはやだ!」
私は驚いた。シュウ君ここまで反発する子だっけ…年齢が上がったからか…ハンターとしての責任を抱え始めたのか…ただ、シュウ君は少しずつ変わりつつあるのであった。
「って、シュウ君言ってますが。どうしますか?そうですねぇ。危険なところは連れていきたくないと言うのがありますが、多分シュウ君にブーメランで跳ね返されますが。」
「マイにとっては王城に入るようんものだろう。どこが危険なのだ。」
「と言うことをシュウ君は理解出来ないと思います。と言うより雄花軍団の中に入るのは私も違う意味で危険ってことには変わりませんよね?」
「………」
ケリンは黙った。マイだけ連れていくのはテイマーと言うこともあり無理そうである。しかし、自分等の領地にシュウが入ったら…仲間も警戒するしシュウ自体も危険にさらされる可能性がある。シュウを傷付けるのは雌花へ喧嘩を売る行為である。しかし、全雄花はそれを理解していないのである。
「はぁ…仕方がない。ちょっと交渉する。」
ケリンさんは植物に伝を伝え始める。私はなんか申し訳ないと言う気持ちに襲われていた。
「連絡が来た。シュウ。お前も来て良いとのことだが…ハッキリ言うがとんでもなく危険だぞ。命捨てる覚悟はあるか?例えマイのためとしても。」
「…う、うん!お姉ちゃんは僕が守る!」
「口先だけだは困るんだが…はぁ。マイ。おじいさまを除き、人間に恐怖がある奴には一時的に立ち退いてもらった。それでも全員じゃない。植物の声はしっかり聞いておけ。殺されたくないんだろう?」
「分かったわ。」
前回おじいさま木に会うときは私は死を覚悟で向かった。今回はそれがシュウ君の番と言うことがある。まあ、私がいるし…敵の急所は知ってるので手出そうものなら速攻で殺すと考えていた。補足であるが、植物も雌花優先で動く。実際のところ…雄花が不意打ちを仕掛けたくても植物が虚偽の情報を流したりボイコットしてしまうので、マイやシュウは本当のことを言えば警戒する必要はないのであった。まあ、他に魔物がいたら別だが。
(徒歩で向かうって言っていたわね。ケリンさん私の負荷を考えているのか…シュウ君への森への対処法を教えようとしているのか…分からないわねぇ。)
村の出入口近傍から道をそれ森を歩く。歩きながらケリンさんが警告した。
「いいかシュウ。今回は本当の本当に例外だ。本来はここいら一帯人間が歩けば、あっという間に食い殺される。絶対に1人で…いや、今後二度とここには立ち入るな。」
「わ、分かった。」
個人的、そう言えばシュウ君私のおばあちゃんと言いケリンさんのおじいさまと言い私達の産みの親は見たこと無いはずである。ある意味、それを目視するのは人間でシュウ君が世界初になるのかもしれない。私と言う種族のテイマー特権と言うか…知るべきことなのかもしれない。折角だからそこら辺も教えてもらうか。多分私よりケリンさんの方が詳しそうだし。結構森の奥まで歩いた。獣道すら何もない。道無き道である。植物と会話出来なければ遭難間違えないだろう。
「さて、この木々を抜ければおじいさまの木だ。…おじいさま以外に人間憎んでる奴が一人いるみたいだが…まあ、無視してくれ。」
「退却命令出したのでは?」
「逆に残ったらしい。人間がどうしても信用できないから見張るとのことだ。」
「…ケリンさんの回りはどうしてそう両極端しかいないんですか?」
「違う。両極端の奴が目立つだけだ。」
『姫様。おそらくケリン様のおじいさまの木と草原との境界の木々の間辺りで雄花が予防線を貼っております。シュウ殿が歩いたら仕掛けてきますので一報しておきます。』
「…どうすれば良いのよ。何?殺して良いなら殺すけど。」
「止めてくれ。」
「はぁ。」
木々を抜けると草原があり、中央には一本の巨大な木がある。いわゆるおじいさまの木である。