街道の看板
「えーっと、確かあれだよね。僕がマイさんを案内するんだっけ?」
「ああ、本来入口から…と思ったんだが…まあ、ここからでも大丈夫だろう。街道から村から全部案内していたら日が暮れてしまうからな。えっと、ここからかなり歩くと…シュウだよな?お前が提案した村がある。時間的に今から行くよりここら辺で一回腹ごしらえした方が良いかもな。で、今日はその村に泊まっていけ。今日と明日中には大体の案内と…ちょっとさっき話したが、盗賊らの話も終わるだろうからな。」
「あー、シュウ君。お金ってあるんだっけ?」
「えーっと、リールさんとかに言われてちょっとは持ってきてる。」
「まあ無理そうなら野宿と行きましょう。ここ数日野宿だったし…慣れたでしょ。」
「子供に慣らしてはいけない様な気がするのだが…。」
最後はシュバレルさんに突っ込まれてしまったが…とりあえず、腹ごしらえをして村へ出発するのであった。そして何故かシュバレルさんもついてきた。
「お前はデレナール領に行くのではなかったのか?」
ケリンさんが突っ込む。
「ああ、その予定だが…雌花も一緒に行くのだろう。研究員として一緒に行動するのが常じゃないか。」
「マイ。お前の指示でこいつを殺したいなら俺が殺す。そうすればお前もシュウも害はないだろう。」
「指揮者に責任生じるのですが…。と言うより、ミサさんという私の観察日記つけてる変人もいます。もう好きにしてください、です。」
「…雌花って大変なんだな。」
「貴方達だって私監視してますよね?大迷惑なんですが?」
「それはこっちの都合だ。手は出していないから良いだろう。」
私はもう自由という人生は無いのか…と、違う意味で絶望していた。
「そろそろトンネルにつくよ。」
カリン君が声をかけてきた。かなり奥まで続くトンネルである。
「良くこんなもの掘れたわね。」
「人間の従魔とその仲間達で掘ったそうだ。俺らの花に匂いに感づき殺された奴もいる。逆に殺した奴もいるときいている。このトンネルはある意味戦場だったらしいな。」
「あー、なんかすいません。」
「謝らなくて良い。どうせこれを作らなければこっちの犠牲者はもっと多かったんだ。人間の街が破壊されてもシュウにとっては不都合だったんだろう?まあ、強いて言えば発言するのは簡単だが現実はそんな甘くない。シュウも覚えておけ。」
「う、うん…分かった。」
松明を使い明るくしてトンネルを通り抜けた。松明はシュバレルさんが持ってくれた。火を使うと言うこともあり、私達が通る様には作られていないんだろう。私達は植物の魔物。潜在的に火を嫌っている。私は前世火は生きてるイメージで好きだったのだが…こればかりは残念なのであった。
「後ちょっとで村だよ。」
カリンがそう言う半ば、定期的に置いてある看板がふと気になり目を通す。人間の文字は本来魔物が理解出来るはずがない。ケリン達含めて。まあ、打ち合わせをしながら作ってるだろうから関わった奴らは大体分かっているとは思うが。私はシュウ君のハンター依頼を定期的に見ているので、多少は理解できる。
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※危険:街道から外れるべからず!
このエリアは新種の魔物「アルビトラウネ」の生息地帯です。街道から外れたり攻撃すると襲われます。
※街道で出会ったときの対処法
刺激をせず、立ち去りましょう。何もしなければ何もしてきません。
⇒街道を外れた場合は例外で襲ってきます。森には入らないように。
※補足
1. 彼らの頭にある花について彼らは敏感です。遠目でも花を見続けるのはやめましょう。攻撃は論外です。
2. 声をかけられることがあるかもしれませんが、普通に他者へ接する様に接すれば問題ありません。
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「へえ、色々書かれてるのね。」
「えっと、マイさん人間の文字読めるの?」
「うん?まあ、シュウ君に比べたら劣るけど…独学よ独学。」
ジェスさんが聞いてきたので私は答えた。
「アルビトラウネは人間の声だけでなく文字も読めるのか?」
「いや、マイが例外だ。俺もカリンも読めん。まあ、この内容を作るに辺り俺も関与しているから俺はある程度内容は知っているが。」
シュバレルは雌花の特殊性を再認識するのであった。なお、これは雌花だから読める…のではなく、シュウ君と一緒に生かざるをえなかったがゆえ学んだことであるのでマイだからが正しいのであった。
「シュバレルさん。ちゃんと花を見ない様にって書いてあるじゃないですか?守ってくださいよ。」
私は横目で見ながら自分の頭を指差した。今は帽子を被っているため花は見えないが。
「ああ…すまん。いや、雌花と雄花と言えば花の違いだからな。…分析したいからスケッチぐらいも駄目か?」
「はぁ…。人間で例えてあげましょうか?そうですねぇ。シュバレルさん男性ですよね。」
「ああ。」
「道端の女性に「女性の裸スケッチしたいから全裸になってくれ」って言ってるのと変わりませんが、それでも私にお願いしますか?」
「………」
シュバレルさんは黙った。ケリンはマイの人間に対する扱いが上手いことに感心していた。
「僕は良いよ。」
「おい、カリン。お前は人間に甘すぎだ。」
「僕は雌花じゃないけど…スケッチされて他のお兄ちゃんに害がなくなって僕が人間と仲良くなれるならむしろ大歓迎。」
「マイ。すまない。カリンはちょっと特殊なんだ。」
「ケリンさん。ケリンさんの周りどうなってるんですか?はぁ…全く。」
私はシュウ君の腕を引っ張り残りのメンバーから離れた。小さめの声で話すように促す。
「お姉ちゃん。どうしたの?」
「えーっと、シュウ君って絵って書ける?」
「絵?」
「あー、まあ簡単に言えば私の花をシュウ君に紙でスケッチ出来ないかなって。まあ、本音言ってめっちゃ恥ずかしいんだけど…あの男性オーラ的に絶対食い下がってくるからシュウ君に予防線引いて貰おうかって感じ。」
「お姉ちゃんのお花を描けば良いの?」
「まあ結論言えば。」
「だったら思い出しながら描いてみる。絵下手かもだけど…お姉ちゃんのお花ジーッと見るとお姉ちゃん可哀想。」
「あ、不味い。」
「どうしたの?」
「あ、いや…なんでもないからそれで。」
「うん?分かった!」
本能がシュウ君に抱き付こうとしていたので理性で止めにかかった。はぁ…私は魔物なのに何やろうとしているのだか…。




