盗賊の処理方法
「で、後は…こいつらだが…。」
なんとか逃げようともがいている盗賊3人を見ながらケリンが言った。
「俺らのルール上、俺らの拠点に入ったなら速攻食い殺す。これは人間共とも話した内容だし問題はない。だが、ここら辺の森は誰の拠点でもない。まあ、だから困っているのであるが…。」
今後の話題にも入り込んでくるが…新種の魔物が出たとのことでそれを付け狙う人間が出て来ているらしい。看板とかを付けており、指定地域内に入ったら食い殺される等記載はされているが…そこじゃない森なら良いよねで今回のような盗賊が隠れたりしているとのこと。実際に入り込んで食い殺した人間もいるらしいが…。まあ、ここら辺の森に住み着くのは食糧的に不可能なので狙いを定めた奴らが定期的に奇襲に来ているらしい。デレナール領側だけでなく、反対側の領地側の開拓された街道でも同様のことが起きているとのこと。今後ケリンから上がる相談とはこのことであった。
「うーん、そうですね…とりあえず、この3人についてですか。えーっと、こいつらってハンターだったりする?」
「と言われても…」
「いや、シュウ君じゃなくて植物に聞いているから大丈夫よ。何か知っている?」
『少々お待ちください。』
少しかかって植物が返答した。植物は至る所に生えているので砂漠のど真ん中で活動でもしていなければ情報はいくらでも入ってくる。
『人身売買や人殺し、他人の家から物を盗んだりと…まあ、ハンターではなくただの重罪人ですね。』
「そう。魔法や弓の技術をそっちに使うのはもったりないわね…。まあいいわ。じゃあ、シュウ君に始末をお願いしようかな。」
「え、僕?」
「うん。彼らは本当に唯の盗賊みたい。悪いことを職業として生きている人間。人から物を奪ったり怪我させたり殺したり…。だから、どうやって処理しようがお咎めなさそうだから、シュウ君の正義として彼らをどうしたいか聞きたいなって。」
「う、うーん…」
まあ、正論は然る場所に連れて行き裁き投獄かそこいらだろう。しかし、ここは街道であり…村にしろ街にしろ側にない。じゃあ連れて行けと言われても奴らがはいそうですがと着いていくわけがない。運ぶとなっても誰が運ぶのか?である。まあ、シュウ君はそこまで考えていないだろうが…シュウ君も悩んでしまっている。私は目で、シュバレルという研究員をチラッと見たが…彼もどうしたものかの様な顔をしていた。
「シュウ。悩むなら俺らに任せてくれないか。」
「え?」
「今仲間を呼んでいる。俺らのツルなら奴らを行くべき場所に運べるだろう。大丈夫だ。マイみたいに絞め殺す様なことはしないさ。」
「あ?」
私は顔を歪めて発言したが、シュウ君は気付いていなかった。
「えっと…じゃあ、ケリンさん。お願いして良いですか。」
「ああ、任せておけ。」
少しして木々の隙間からツルが伸びていき、盗賊3人を森の奥の方へ運んで行った。それを見てシュバレルは目を見開いている。まあ、自分がやられたら恐怖以外の何者でもないだろう。なお、補足であるが…木に縛り付けているツルは「人間を運ぶため外して欲しい。」とケリンさんに言われてしまったので私はため息を吐きながら外したのであった。
「はぁ…シュウ君。今回はしょうがないとして、次からはもうちょっとまともな答えを要望するよ。まあ、今回はしょうがない。」
「え…あ、ごめんなさい。」
「良いの良いの謝らなくて。今回最終的に手を汚したのは全部ケリンさんと言うことにしておくから。」
「人聞きが悪いな。」
「悪いじゃありませんよ。連中を森の奥に連れ込んで射程範囲内に投げ捨てて食べる気でしょ。」
「だったらなんだ。シュウはお前の魔物使い。逆らえないんだろう?それに彼が俺らに処理を任せた。どうしようが俺らの勝手だ。」
「はぁ…。」
シュウ君はケリンさんに任せれて良かったと言ったような顔をしていたが、私の話を聞いていたシュバレルさんは顔を青くしていた。世の中知らない方が良いこともあるのである。ご愁傷様であった。
「さてと…カリン。大丈夫か?腕が一番やばかった様に見えるが。」
「う、うん…頭の花に当たらなくて良かった…それだけかな。」
私達は光合成したり食べたりしたりで作られた養分を一度花に保存する構造になっている。花が潰されたりでもしたら養分をどんなに作っても保存出来ず体に回すことが出来ない。要は死んでしまうのである。私も妹のメイは花を魔物に食われて枯れてしまっている。そのトラウマは50年以上経った今でも忘れることは出来ない。
「えっと…カリンちゃん。本当に大丈夫なの?奥深くまで刺さっている様に見えた。」
シュウ君が心配して声をかける。
「平気平気。僕は魔物だよ。植物だって何かが刺さったぐらいで死んだりしないからね。」
「そう…ごめんなさい。」
「どうして謝るの?」
「だ、だって…悪い人達がカリンちゃん攻撃したから…僕たちがもっと早く…」
「シュウ君。それ以上は止めなさい。終わっちゃったことだし、精神的に自傷することも私は許さないわよ。というより、本当にやめて。良い?悪い人間はこの世に存在する。だけど、それを生み出したのはシュウ君じゃないし、シュウ君は勇気を持って…かは置いておいても私を指示して敵をやっつけたし、皆んなを助けたんだから。寧ろ堂々としていなさい。」
「お姉ちゃん…。」
私はシュウ君を撫でてあげていた。私も前世鬱になった時には色々思う様にいかず精神的に自傷しすぎていた。彼に同じ目だけは合わせるつもりはなかった。
「シュウ君。その魔物の言う通りさ。僕だけじゃ、この子も守れなかったし…ハンターとして成り立てなんだよね?それで、ここまでやったんだから十分だよ。」
シュバレルも私の意図を汲み取ってかフォローに回っていた。なお私はまたゴマスリか?みたいな考えであった。マイのマイナス思考は前世共通なのであった。
所詮は魔物です。




