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魔物の襲撃

『姫様!姫様!起きてください!危険です!』


 空が明るくなり始めた頃、あちこちからこのような声が聞こえてきた。


「うーん、何?」

『姫様!草原に魔物が迫っています!このままでは姫様が見つかってしまいます!』

「え?!」


 どういうこと?!この草原って魔物が出ない安全地帯じゃなかったの?現に私が生まれて100年間小動物や大きくても鹿くらいしかいなかったじゃないか。


「どっちの方角?」

『姫様の正面です!もう時期見えます!』

「うそ?!」


 構える間もなく、木々の間から狼っぽい魔物が1匹出てきた。バッチリこっちを見ている。これはヤバい。


(どうする?)


 周りの植物の話から察するに敵はウルフ1匹。とはいえ、魔物とは戦った事はない。何もしなければ食い殺される。


(うーん。)


 と考えている間に狼は一気に私の方向へ走ってきた。


(マジか!)


 死ぬ!と思った時、人間で言うところの反射だろうか?それとも100年間の経験がものを言ったのだろうか?無意識に両手を上げてツルを伸ばし、おばあちゃんの木に縛り上げそのまま私の体を持ち上げた。間一髪、狼は私の下で私がいたところに噛み付いていた。


(危ない!)


 冷静に考えている時間はない。某ウルフは私を落とそうとおばあちゃんの木にタックルを始めた。別にタックル程度の揺れでツルがほどける事は無いが、メシメシという嫌な音が上から聞こえてきた。


(マジで?)


 おばあちゃんの木が私の重さに耐えれないはずがない。ただそれは、おばあちゃんが生きていればの話。死んでいる以上、もうおばあちゃんはスカスカ状態のはずである。


(枝が…折れる?!)


 上を見ると枝が折れ始めている。不味い。


(えーい、一か八かだ!)


 片方のツルを外し、もう少し高いところの枝に縛り付ける。その直後、さっきまで縛っていた枝が折れた。


(く…)


 狼は待ってましたとばかりに口を開けて上を見ている。もう片方が別の場所に繋がっているとは言え所詮は枯れた木。長くは持つまい。


(だったら…)


 折れた枝を捨て、もう片方の手のツルを同じ枝のすぐ上の枝の根元に縛り付ける。そのままではさっきの枝より太いとはいえ折れてしまって終了である。私はツルを縮めて根元の方に移動し、枝と枝の間に乗っかった。細い枝同士では心細いが、ある程度太いもの同士の枝の間。おばあちゃんの枝は枯れているとはいえ、そこならば折れて終了とかはないと思う。


(さてと…逆襲するかな。)


 狼は再度幹へ頭突きを始める。木が揺れる。念の為、木に体を縛り付けたが木自体が倒れてしまっては終了。防御だけでは殺されてしまう。攻撃するしかない。私は両手のツルを地面に突き刺し、鹿を捕まえる時と同じように背後から狼の足を縛りつけた。


「ウ、ウウォーン!」


 狼はもがいて解こうとする。しかし切れる事はなかった。このツルの強みが生きている。


(動くな!)


 両手のツルを地面に突き刺しているため、ツルを何本も出せる。足の1本さえ自由を奪えはあとはこっちものである。簡単に四足全てを固定することに出来た。狼は鳴き叫ぶ。


『姫様。仲間を呼んでいる可能性があります。』

「わかった。もし何かきたら教えて。」

『了解いたしました。』


 うるさいので口もツルで縛りつけた。無抵抗ながらも抵抗を続ける狼。おばあちゃんの声が頭をよぎる。要約すれば『身を守るためなら殺して良い』。


(ちょっと痛い目見てもらおうかな。私を食べようとする方が悪い。)


 別の場所からツルを出し、おばあちゃんの枝の高いところにツルを巻きつけた上でそこから伸ばしたツルを狼に縛り付ける。


『姫様?一体…』

「見ていて?面白いから。」


 狼の四足を一気に自由にすると同時に縛り付けていたツルを一気に短くした。暴れることができるようになった狼であったが、空中の高いところに運ばれていく。


『姫様!おばあさまの枝ではその狼の体重を支えきれません!折れてしまいます。』

「ふーん。」


 もうおばあちゃんは死んでいる。今更感である。なんだろう、襲われたという怒りが私の精神を残虐化させていた。植物達がいう通り、暫くしたら枝が折れた。ただ、折れる前に狼は地上から数十メートル以上高いところに運ばれていた。それぐらいおばあちゃんの木は高いのである。そんなところから落ちれば…


「グルルル」


 口は塞いでる。若干のうめき声はしたが、既にまともに動けない状態になっていた。


(アハハハハハ)


 更に、私は追い打ちをかけるかのように四足を縛り上げ、首にすらツルを巻きつけた。狼の魔物の目が殺意から悲鳴に変わりつつある。その目を見た時、私は不意に我に返った。可哀想などという感情は生じていないが、やりすぎた感が頭をよぎった。

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