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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
狙われた雄花
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雌花の逆襲

『姫様。』

「うん?どうしたの。」

『あの魔術師、小さな声ですが詠唱しております。そしてですが…目の動きが、姫様というより、そちらの男の子の方に…』


 その途端、炎魔法がこっちに飛んできた。厳密にはシュウ君の方。私は急遽、50cm級の太さのツルをシュウ君の前に生成する。それと炎魔法が激突した。爆音が鳴る。後から植物から聞いて分かったことだが、シュウ君の声が大き過ぎたらしい。声で気付かれた様である。


「あらあら…どうして分かったのかしら。まあ良いわ。先に貴方達から始末してあげる。」

「お姉ちゃん!」


 私は思考停止していた。いや、思考放棄ではない。主人であり最も信頼し、守り抜こうとしていた子供に牙を剥かれた。マイの堪忍袋は時と場合によって本来切れないところで切れることがある。どうやら魔物の本能踏まえプッツンしてしまったらしい。


「シュウ君。今日の教育はここまで。後は私に任せなさい。」

「え?」


 更にもう一発炎魔法が飛んでくる。私がいたところで爆発した。


「お姉ちゃん!!」


 シュウ君が叫ぶが、爆発したところに私はもういなかった。私は気付かれたと分かった段階で自分を固定していたツルを解き始めていた。ツルを使って転倒しない程度の勢いで瀕死の二人と足を束縛された二人の間に立つ。冷たい笑みを添えて。


「誰だお前は?!」


 私は服を着て帽子を着用中。見た目で今瀕死のカリンと同種とは判断し難い状態だった。まあ、葉っぱでできた擬似スカートは同じなのだが。


「さてと…私の主人に攻撃した落とし前…ツ・ケ・テ・イ・タ・ダ・コ・ウ・カ・ナ?」


 私の怒りが殺気として周囲に広がる。皆忘れている様だが、私ことマイは魔物である。しかも、かなり強い魔物。そこから出る殺気は尋常ではなかった。盗賊2名、被害者2名…更に、ようやく到着したケリンやジェス、主のシュウ君でさえ全員が恐怖で硬直していた。私は舗装された地面にツルを突き刺す。舗装されているので柔らかいツルでは突き刺さらないはずなのだが…私自身が魔物だからか、それとも怒りで威力が増しているのか…突き刺さった。


「たかが魔物の分際で楯突くなよ?」


 男性盗賊が私に攻め込もうとするが、足が固定されているため攻めることが出来ない。ナイフで叩き切ろうとしていたが、カリンとマイでは実力が違いすぎる。切れるわけがなかった。


「従魔は人間に攻撃してはいけないって習わなかったかしら?」


 女性盗賊はそう言いながら詠唱を開始する。その瞬間、二人の足元から太さ10cmぐらいのツルが一気に生え、二人を縛りつけた。大蛇が人間を絞め殺そうとするときの様に…。


「ぎゃああああああ!!!」

「きゃああああああ!!!」


 盗賊二人の断末魔が聞こえる。その二人は共に悲鳴を上げながら、ある一点を見ていた。


「ああ…これに頼っているんですか?」


 彼らの見ている方から何かの塊が木々の上から転がってきた。もう一人の盗賊の仲間の女性であった。意識はある様だが、ツルで完全に束縛され喋ることすらできない状況になっていた。


「く…くそぉぉぉぉぉ!!」


 絶叫が小玉散る。


「うるさいなぁ。もっと静かに出来ない?」


 私はツルからツルを生成し、二人の口を縛り付けた。これで静かになる。実際静かになった。口籠った絶叫はするが…。しかし…あまりの残酷さに止めにかかる人間がいた。


「お、お姉ちゃん!!!もうやめて!!死んじゃう!殺しちゃダメ!!!」


 シュウ君はツルで固定されているため、木から降りる事はできない。ガードしていた太めのツルが前にあるため、状況を直視できてはいないと思うが…あまりの断末魔と、それすら強引に止めたように思われるマイの様子からシュウ君がアラートをあげていた。


「…シュウ君がそういうなら…はい。」


 私はシュウ君の前にある太いツルを撤去し、地面からツルを出してシュウ君のツルを解いた。そして、そのツル経由でシュウ君を木から地面に下ろしてあげる。シュウ君は私の方に走ってきた。


「シュウ君。君を殺そうとしたこいつらをシュウ君は許すの?」

「そうじゃない!お姉ちゃん!殺しちゃダメ!これじゃ、死んじゃう!お姉ちゃん、それだけはダメ!」

「うーん…じゃあこうするか。」


 太いツルを解放し、ある程度の細いツルで二人を束縛する。どちらも致命傷のため満身創痍状態。無抵抗のまま、口と身体中をツルで縛り上げた。盗賊二人とももう一人と同じように地面に倒れ込む。


「これならどう?」

「…うん。お姉ちゃん。ありがとう。」

「ふふ。シュウ君。私からもお礼ね。」

「え?」

「ケリンさんの弟を守ると言ってくれてありがとう。後は、私を止めてくれてありがとうかしらね。」

「あ…うん!僕お姉ちゃんの魔物使いだもん!お姉ちゃんがやり過ぎた時はちゃんと止める!」


 私はシュウ君の頭を撫でてあげた。そして私は安堵していた。


「シュウ君。やっぱり君は私にとって重要なハンターよ。貴方が寿命で死ぬまでしっかり守って上げるから、貴方も私のことこれからもよろしくね。」

「うん!こっちこそよろしく!」


 そうして、この襲撃事件は幕を閉じ…てはいない。あくまで敵を掃除しただけである。

 主人公は魔物です。例え、前世人間だったとしても。少しずつ、魔物としての本能に支配されていく描写も増やしていこうと思っています。

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