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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
研究者と小さな雄花(閑話)
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魔物が取引をする理由

「うーん、と言うよりこの村に来るのは僕ぐらいしか基本いないと思うけど…皆人間嫌いだし警戒してるし…年齢はマチマチだけど全員雄花だと思って良いと思う。雌花なんてここら辺にいたら直ぐに誰かが嗅ぎつけて僕ら総出で襲いに行っちゃうからね。」

「襲うのか?」

「別に攻撃しにいくわけじゃないよ?うーん、人間だと求婚っていうんだっけ?全員で告白しに行っちゃうよ。前それで雌花にドン引きされちゃっておじいちゃんに後で皆怒られてたし。僕も含めてだけど。」


 このカリンと言うアルビトラウネ…とっても楽しそうに話していた。彼の仲間は全員人間を警戒しているとのことだが…彼は特別なのだろうか。


「と言うことは雌花もいないわけではないんだな。」

「うーん、いないと言えば嘘だけど…今はここにはいないかな。えっとどこだっけなぁ…デレナール領だっけ?あそこに1人住んでるのは知ってる。おじいちゃんがお姉ちゃんは命に換えても守れって皆んなに命令しているからね。お姉ちゃんも多分知ってるとは思うけど…常に監視状態だよ。雌花って可哀想だね。」

「デレナール領にいるのか。」


 シュバレルの探究心がまた上がった。普通の植物でも雄花と雌花は全然違う構造をしている。このアルビトラウネも同じであるならば調査しないわけにはいかない。そして目的地も同じ。デレナール領へ行く楽しみが一つ増えた。


「あ、先に警告しておくけど…それぐらい僕らは雌花を大切にしているんだ。お兄さんなら多分問題ないとは思うけど…下手に雌花に接近したらそれこそ街の中にいても道にいてもお兄ちゃん達に食い殺されるからね。それは思っておいた方が良いよ。」

「…わかった。」

「あ、店に着いた。一緒に来る?」

「あー、まあ行くか。魔物が作ったものというのも気になるし。」

「へー、興味持ってくれて嬉しい。」


 雄花が笑顔になったが、どう見ても女の子の蔓延の笑みであった。見ていて違う意味で心配になるシュバレルなのであった。


「お、カリン。3日ぶりだな。で、今日は何を作って来たんだ。」

「うん。丸めのカゴを作ってみたんだけど…どう?」

「どれどれ?」


 店主だろうか。カリンがツルで作った入れ物をじっと見つめる。しばし触ったりコツコツ手で叩いたりしていた。


「うーむ。素材は良いが使用用途が不明瞭だなぁ。これを貿易の市場に出したとしてうーん、小銀貨5枚でも売れるか分からんぞ。」

「そうですか。じゃあ売れる値段で買い取っていただけないですか?」

「じゃあ、小銀貨2枚でどうだ。カリンが作るものは素材が物珍しいから用途が不明でも興味本位ならそれぐらいで売れるだろう。」

「うん。じゃあそれでお願いします。」


 カリンと呼ばれた魔物は残念そうな顔をしていた。恐らくもっと高値で売りたかったんだろう。シュバレルは魔物の研究者ゆえこのようなものの価値が分からない。そのためフォローも何も出来ないのであった。


「店主さん。このカリンが作ったものはここで売られるのですか?」

「うん?見ない顔だな。」

「ちょっとやぶ用でよっただけですので。」

「そうか。まあ、そんな感じだな。価値がありそうなら2領との貿易中継地点のこの村で交渉してみることもある。」

「そうなのか。なあカリン。聞いていいのか分からないが…それどうやって作っているんだ?」

「うん?うーん、人間が真似出来るわけないから言ってもいいけどこのツルを使うんだ。」


 カリンは腕に巻かれていたツルを伸ばした。シュバレルはその光景を見て再度驚く。そして魔物ということを再認識した。


「色や太さは若干違いそうだが…素材は君自身で作ってるということかい?」

「うん。」

「そうか。店主さん。この子が今売った奴俺に売ることは出来るかい?」

「あ?ああ、まあ構わんが…利益考慮して小銀貨4枚になる。それとも今回は俺を経由しないでカリンに小銀貨2枚払う形式でも良いぞ。」

「いや、店主さんが鑑定しているんだ。4枚払うさ。」

「そうか。ありがとよ。」


 シュバレルにしてみれば、研究対象になりそうなアルビトラウネが作ったものがたったの小銀貨4枚…日本円換算で400円…で買えるのであれば破格なのであった。シュバレルは「おおー」とか言いながら丸いカゴを眺めている。2人とも店は出ていたがあまりにもシュバレルが興味深そうに見ていたのでカリンは質問した。


「お兄さん。慈悲は要らないよ。それはあの店主さんが価値がないって言ったものだし…無理して買わなくてよかったのに。」

「いやいや。俺は魔物の研究家だ。君が価値がないって言って、店主が価値がないって言っても僕には価値があるのさ。というより、こんなもの作れるならもっと自信を持って良いんじゃないか?」

「うーん、何回か既に売買してみて…うまく行くと銀貨数枚で取引してくれることもあるんだけど…、僕には人間が欲しがるものなんてわからないよ。」

「うーん、俺も何に使えるか…と言われるとわからんが…銀貨数枚で売れるならそれを量産とかすればある程度儲けれるんじゃないかい?」

「僕は別にお金を稼ぐことを目的としていないから。まあ、人間の食材には興味があるというか…今、僕たちの住処は食糧難なんだ。今と言うかずっとかな。身内内でも食べ物の奪い合いが起きて餓死しちゃうお兄ちゃんや弟達もいる。だから僕は人間を毛嫌いするお兄ちゃん達が手を出さないここで何か食べれないか考えているの。」

「そうか。」


 シュバレル自体は研究者のためあまり考えていないが、人間でも地域によっては餓死するような場所もあると聞く。カリンは人間ではないが、身近でそう言ったことが起きているのかとやるせ無い気持ちになった。そして気になったことを聞く。

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