祖母の永眠
(今日の天気は快晴!良い日光浴になりそう!)
外に出て朝日を浴びる。おばあちゃんの幹の麓にはまだ2人の亡骸が残っている。まあ、ここにはシャベルみたいなものはないから穴を掘れないし、鹿とかがやってきて亡骸を食べている時もある。私は見かける度に追い払うんだけど、あまり強くは出れない。鹿は草食動物である。妹2人も植物。追い払う意味がない。私を食べようと近づいてきた鹿もいたが、雑草やら木々やらが警告してくれたのでツルで縛り付けておいた。それで学んだのか、或いは他にもタックルしてくる鹿もしばいたりしていたからかその鹿だけでなく周りの鹿たちも襲ってくることは無くなった。と言うより私自身が修行で鹿を捕まえたりすることもあったし、逃げていく方になっていった。
「おばあちゃん。次の妹ってどれぐらいで生まれるの?」
特に他の植物と会話することないし、ツルでブランコもどきを作っておばあちゃんの枝を使ってブラブラしている。好きなところに行って良いと言われたが、行く意味も無いし妹達が犠牲になった後もここで生活している。
『………』
「おばあちゃん?」
たまにおばあちゃんは返事をしてくれないことがある。まあ、またいつもの事かと思いながら…とは言ってもすることはなく、おばあちゃんの枝を登って行きたい場所無いかなぁ…でも、魔物怖いからなぁ。とか妄想にふけていた。しかし、数日経っても1ヶ月経ってもおばあちゃんから何も声が聞こえなくなった。
(おかしい。)
今まで100年間そんなことは無かった。
「おばあちゃん?聞こえてる?!」
やっぱり返答がない。
「ねえねえ誰か?おばあちゃんが喋らなくなっちゃったんだけど、原因知ってる?」
誰も喋らない。私の植物と会話出来る能力がイカれちゃったのかな。それはそれで困るんだけど。
『姫様。おばあさまから伝言です。』
「伝言?」
『そうです。伝言というより遺言でしょうか?植物はパッと見で生死を判断出来ません。そして、その姫様のおばあさまは…』
それ以上の言葉は要らなかった。
「なんでなんで?だっておばあちゃん前まで色々喋ってくれてたよ!なんで急に!」
『急にではありません。喋らなくなり始めた時はまだ生きておりました。ただもう大分弱っていた事は間違えございません。』
「だからってなんで急に…おばあちゃん病気だったの?」
『いいえ。老衰です。』
「老衰?おばあちゃんいくつだったの?」
『私が生まれた時にはおりましたし…』
『前確か2万ぐらいとか言っていなかったか?ここに根を張って子作りしなければまだ後数万年は生きれたとか言っていたな。本当かは知らねえが。』
(は?)
寿命長すぎだろ!とんでもないな。
「そうなの。ありがとう皆。」
『ええ。』
なぜかその時には余り感情が揺さぶられる事はなかった。ただその夜、おばあちゃんの幹に腰掛けた時…感情が爆発した。
(おばあちゃん…ごめんなさい。私の不甲斐なさで妹全滅してしまったよ。私これから本当に一人ぼっちだよ。これからどうしたらいいの?)
気づいたら目から涙が流れていた。花をもいでしまいたいとさえ思っていた。ただ辛い、辛い、辛い…辛すぎてそれ以外の感情が何も出てこない。
(昔の私もこんな感じだったのかな…。)
昔というのは前世の記憶。まあ未だに元人間の男性で、生きるのに疲れて鬱病に苦しんだ…という記憶しか出てこないけど…何もかも失ったそんな虚無感で苦しんでいたのだろうか。気づいたらそのまま外で寝てしまったらしい。