敵同士の雄花
『姫様。雄花がまた近づいているようです。』
「今度は誰よ…。」
私雄花にモテたくないんだけど…ウザいわ。しばらく止まって警戒していると…見慣れた顔が上から来た。
「おう、マイ。久し振りだな。」
「あ、ええ…」
本音は会いたくないだった。私の本能がミサさんとケリンさんは私に面倒を持ってくると言う認識であった。
「…で、シュウか。大分大きくなったな。」
「うん!」
「そうか。で…誰だお前は。」
「そっちこそ誰だ!」
雄花同士があった瞬間何故か歪み合い始めた。
「ケリンさんも…この方知らないのですか?」
「知らない以前の前にお前俺らのおじいさまとは別の雄花だな?」
「ああ、でこの雌花は僕が見つけた。だから僕の雌花だ。」
「ふん。生憎だな。マイは数年前俺らと既に関係を結んでいる。定期的に俺らの雄花が監視をいれている。マイが誰を選ぶかはマイの自由だが…よそ者にくれてやる気はない。」
「はい?それはそっちの都合だろう?僕は今日この雌花が困っていたところを救ってるんだ。そっちは僕より遅かった。要は僕の方が信頼があるはずだ!」
「ちょ、ちょっとストップ!お姉さん達、喧嘩は良くないよ!」
2人が黙った。共にシュウ君を睨み付けたのでシュウ君は「ヒェッ!」と声を漏らした。
「えーっと、良く分かりませんが…シュウ君脅すなら縁切りますよどっちも。」
「「………」」
2人ともシュウ君から目をそらしたが険悪ムードであった。
「なんでそんなに敵対しているんですか?まあ、メスを巡ってオスが争うなど日常茶飯事な感じはしますが…私はまだ子供ですよ?」
「はぁ…マイ。相変わらずお前は無知だなぁ。」
「うるさいですね。」
「僕が教えてあげるよ。その方が僕に寄り添ってくれるかもだし。」
心の声駄々漏れなのは良くないと思うが…うーん、説明内容を聞いても良く分からなかった。人間換算だとやはり受精なのだろうか。本来射精されてどの精子が卵子と受精しようが、男性Aの精子には変わりないので男性Aの子供になる。しかし母体の女性が不倫をして男性Aと男性Bとほぼ同時に性行為をしてしまった場合、受精した精子がAからなのかBからなのかで誰の子供なのか変わってしまう。私なりの解釈ではこんな感じなのであった。
(同じおじいさんからの木同士は仲間、外れれば敵なのかしらね。)
雌花同士ではどうなるのか若干気になった。勿論ユイやメイとはたまに喧嘩もしたが今の雄花2匹みたいないがみ合いではない。じゃあ他のおばあちゃん木からの雌花だったらどうなるのだろうか。私は無関心だがそれは私である。じゃあ、相手がどう振る舞うのか全く分からなかった。
「どう?わかった?」
「うーん、シュウ君。分かった?」
「うーん、分からない。。」
「そんなぁ。」
「おい、マイ。お前が理解しないといけないんだぞ。」
「私から聞くとそれって雄花のいざこざであって雌花には関係ないと思います。と言うより、そろそろ移動しませんか?」
「あー、まあそうだな。シュウ、食料持ってきてやったが…足りるかこれで。まあ、1日ちょい分だが。」
ケリンさんは昔私がリンゴ狩りで作ったようなカゴと言うかバックと言うべきか?の中を見せてくれた。多種多様である。
「おおーこんなに一杯ー!お姉さんありがとう!」
「俺は雄花なんだが。」
「凄いですね。期待以上です。この肉みたいなものはどうしたんですか?」
果実なら分かる。ただ、肉となるとこんなに人間にとって食べやすいように焼いてあり切られているのには不信感があった。私達は獲物を食べる際は溶かして食べる。こんな贅沢なことはしないし、出来ないと思うのだが…。
「ああ、俺はあまり行かないんだが…人間好きの変わった奴がいてだな。マイも見たことあると思うが…彼奴が食い物持っていくなら村から貰ってくるとかどうとかあってだな…。」
私は記憶力が曖昧なため誰のことを指しているが分からないが…まあ、これだけあれば餓死はしないだろう。
『姫様。雄花達の花によって魔物が気づいたようです。』
「了解。皆ちょっと待ってね。魔物出たらしいから処理してくる。」
「おい。ここら辺の魔物は強い魔物が多いんだよ?逃げた方が…」
「やめておけ。マイは俺らとは次元が違う。」
私は木に登って1分足らずで邪魔者を束縛してしまっていた。
「さて、行きますか。」
「な…3m級の魔物って植物らは言っていたよ…」
「敵の雄花に説明するのはあれだが…雌花は強さ的には次元が違う。そこは理解しておいた方が良いぞ。」
「………」
「シュウ君。私に捕まって。おんぶするから。」
「うん!お姉ちゃんありがとう!」
「どう致しまして。あ、荷物は任せて大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫ですよ。」
「おう。任せておけ。」
シュウ君は人間である。本来、同族にしてみれば脅威の子供である。ただ、私が彼を大切にしていると言うことは目に見えて明らかである。そして雄花のルールで雌花の機嫌を損ねさせてはいけないと言うことがある。そんなことをしてしまったら縁が切られてしまう。人間は男女比が1:1より若干男性が多いぐらいだが…私達の場合雌花1に対し、雄花がとんでもなく量が多い。要は雌花絶対主義みたいな物があるようである。まあマイはそんなこと一切気にしていないのであるが。それ故、人間が敵だとしてもシュウ君についてはマイ同様に雄花は接しなければならないのであった。不憫である。今回は休憩中ではなくただ警戒していただけの為、帽子や服は着たままであった。そのまま再度4人は目的地へと進んでいくのであった。