学校とハンターと…少年の選択
「さてと、じゃあ貴方達にはこれを渡しておきましょう。」
ムサビーネ夫人は何かしらの手紙を2枚私達に渡した。
「本来、この領に住む10歳になる子供全員に贈られる通知よ。あくまでデレナール領の学校は義務教育。最も、義務とはいえ家庭の事情でいけないなら仕方ないでお仕舞いなんだけど…通うのであれば入学手続きが必須なの。で、孤児院には基本的に送っても誰も学校へ行かないから本来送らないとなっちゃっているんだけど…貴方達には渡しておくわ。学校に入学したかったら手紙を見て手続きしなさい。寮を使うかとかの記載欄もあるはずよ。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
「質問良いですか?」
「どうぞ。」
「なんで2枚なのですか?シュウ君と後は誰?」
「貴女に決まってるじゃない。」
「は?」
私は目を丸くした。
「その学校って人間の子供が行くところですよね。私人間じゃないんですが?」
「あら、じゃあシュウさんが学校に行っている間貴女は彼を放っておくとでもいうのかしら?それに、貴女は自覚ないかもしれないけど、この街で貴女は既に人間の子供として受け入れられてるわよ。であるならば、貴女にも学校に通う権利はあると思ってね。」
ムサビーネ夫人の意見を要約すれば「お前も学校行け!」であった。
「…費用はどうするんですか?シュウ君1人だけでもギリギリアウトだと思うんですけど。」
「貴女別に食べなくても生きていけるんでしょ?寮なんて人間じゃなく従魔だとか言っておけば、彼と同じ部屋に泊まらせてくれるわよ。無料で。」
「………」
確かに私は食べなくても生きていけるが…それはあくまで、光合成が必須とその養分となる土が必須なのである。で、この街は土が終わってしまっている。だから私はいつも森で生活しているのである。
「私この街で寝泊まりが出来ないから森から定期的に通っているんですけど…全部無視ですか?」
「あら?森より寮の方が安心安全だと思うけど…。」
「………」
さっきも言ったが、森でないと光合成しても意味がない。それに私の場合、睡眠中は必ず何かしらの植物と共に生活している。万一があった時叩き起こしてもらうため。まあ、叩くというより叫ぶが正しいか?寮の中など植物があるわけがない。オンボロ孤児院じゃあるまいし。まあ、観葉植物を育てるという手はあるが…費用は?である。補足であるが、私の拠点からこの街まで片道1.5時間程度である。それに学校までの距離と考慮と…孤児院じゃないので何時までに学校にいろとかあると思われるため拠点から通うのは困難であった。
「あ、そろそろ私ペット達と餌やりの時間だわ。じゃあ、まあ貴方達が学校へ来るの楽しみにしてるわね。きっと良い出会いがあるはずよ。」
それだけ言うと、貴族の妻は立ち去ってしまった。私はまた頭を抱えることになってしまうのだが…。前世からの悪い癖でお金に関して私は細かすぎて心配性なのである。シュウ君は「学校行けるー」みたいな感じではしゃいでいるが、私はそれどころではないのであった。まあ、講座が終わったと言うことで2人共、ギルドの椅子に腰掛け手紙を開封していた。私はもう帝石だが、机に伸びている。書くものはあるのでシュウ君は書けるところを書いていたが、これ絶対学校に入学手続きしに行った時揉めると考えていた。まあ、入学手続きまではまだ少々時間はある。今日の明日でグルトナ学校へ行く必要はなさそうである。受付までの地図は一応書いてあった。
「お姉ちゃん大丈夫?」
「だいじょばない。」
もうこのやり取りも鉄板である。
「何やってるんだ?」
いつもと違う声が聞こえたので顔を向けると栄光リーダーのリールと魔術師メリーが立っていた。
「特に何も。強いて言えばシュウ君が何か書いているぐらいですか。」
私も仕方なしに書いているが、文字の知識はシュウ君が上なのと魔物と言う立場上書けない部分もあったため当日聞けば良いや的なノリになっていた。
「えーっと、え、学校行くの?」
記載している書類を見てメリーさんが驚いていた。
「どっかの貴族が行け行け煩いんですよ。まあ、シュウ君が戦うと言うオーラもないので仕方ないと言えばそうなのですが。」
「そうか。」
リールさんがちょっとがっかりしている声に聞こえた。
「どうかしましたか?」
「あ、いや…シュウが薬草採取依頼を受けていると聞いたからな。折角ハンターになったんだし、俺たちと行動してみないかと思ったわけなんだが。」
「ほら、長年の付き合いだし。私も共闘してみたいのよ。前みたいに敵対するんじゃなくて。」
「あー、そういうことならシュウ君に言ってください。私に判断する権限はありません。」
「それもそうか。」
リールさんはシュウ君に声をかける。
「シュウ。お前を我ら栄光メンバーに抜擢したい。勿論お前が学校へ行きたいと言うのであればそれはこっちでも考慮する。シュウもまだハンターレベルが低いからいきなり高レベルの依頼には参加できないしな。」
「そう言えば良いんですか?シュウ君Fランクですよ。パーティーに入ったらパーティーランクさすがに落ちるのでは?」
「それは知っている。だが、それを考慮しても俺らは全員歓迎したいと思っている。お前たちなら確実的にリスクよりリターンの方が多そうだからな。」
まあ、所詮は世の中キャリア採用なのである。シュウ君と言うより私目的なんだろう。
「じゃあ私から指摘ですが…シュウ君ちゃんと育ててくれますよね?まさかじゃないですが、仮に私が魔物に殺されたとしてその瞬間シュウ君追放とかしませんよね?」
「私たちがそんな事するわけないじゃない。」
メリーさんが即答した。迷いは一ミリもなかったと思う。なら平気だろう。
「シュウ君、私は貴方の従魔。あとは貴方の判断に任せる。」
「うーん…」
シュウ君は考えた。そして答えを出す。