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雄花の伝

(今日も暇ね…)


 リンゴ採取依頼達成からちょっと月日が経ち…私は毎度恒例日光浴をしていた。魔物としての全裸である。葉っぱで出来た擬似ブラジャーや擬似スカートは付けている。というより葉っぱで構成されているし、体から取れない。葉っぱを太陽光に出来る限り当てる方が光合成効率が良いので帽子や服を脱いでいるのである。森の中なので誰も見てないし。


『姫様。御伝言がございます。』

「うん?」

『ケリンと言う雄花は御存知でしょうか。』

「ああ、いたわね。」

『後日彼が会いに来て欲しいと仰っていますが如何致しますか?』

「なんでよ。」


 ケリンは私より千年以上歳上の雄花である。雄花の癖に見かけは20歳強の女性なのだが…。なお、一応だが私は雌花である。まあ、何も考えなくても狙われてるなぁとは考えていた。性的な意味で。


「あれでしょ。たまに彼こっちに来てうろうろしてるんでしょ。何を今さら(かしこ)まってるのよ。」


 植物達の話で定期的にケリン含めた雄花が森の奥の方から私を見に来ていることは知っている。まあ、黙視したことはないが…。不意に近づいて逆鱗に触れると面倒臭いとか考えているんだろう。まあ、私は害がなければ勝手にしろなのであるが。


『数年前でしょうか?彼ら雄花の拠点を人間が開拓したと言うのは御存知ですよね。』

「そうね。」


 数年前、どっかのバカ貴族…デレナール伯爵家、シュウ君の孤児院がある街…が、予算不足とかなんとかでケリンさん達が住む魔物の拠点に入り込んでしまったことがある。一歩間違えれば全面戦争だったのだが…まあ、最終的に妥協範囲内で開拓を許可するでまとまっていた。


『それである程度開拓が終了し運用も始まったので見に来て欲しいとのことです。』

「はぁ…それだけ?」

『…らしいです。』

「嘘ね。絶対何か面倒事巻き込むって。」

『お察しが良いですね。』

「それだけだったらここまで伝達来ないでしょ。で、内容は雰囲気的に内密なのかしら?」

『ええ…直接お話したいとのことです。』

「植物経由だと何がいけないんだか…。」


 私は植物と会話出来るのは私とケリンさん達のみと言う考えを持っている。その概念をぶち壊す相手がいることにまだ気付いていなかった。


「じゃあこれから行きます…と言うわけには行かないのよねぇ。」

『そうなのですか?』

「数日後にシュウ君と教育訓練に行かなきゃ行けないのよ。行く意味分からないけど、あのババア歯向かうと何しでかすか分からないし。」


 ババアと言うのはムサビーネ伯爵夫人である。私にとって初めはそこまで軽蔑していなかったが…私の花の臭い消し帽子をくれたのもムサビーネ伯爵夫人である…シュウ君を威圧で泣かしたことを知ってから敵対していた。私の悪い癖ではある。やられたら永遠と呪うタイプであった。


「他にもシュウ君がハンターになってしまったと言う問題もあってね…。」

『姫様の側にいると聞く少年ですか?』

「うん。」

『姫様に何かしているのですか?』

「いや。そう言う訳じゃないんだけど…元々私達は互いに自由に生きていたんだけど…ハンターと言う制約上、自由が利きにくくなってしまったのよ。」


 シュウ君はまだ孤児院にいるが…現実問題追い出されるのは時間の問題であった。既に採取等の依頼も受け始めている。ただ、シュウ君はまだ採取の薬草等の種類すら理解しきれていない。その為、勉強の方が多く収入どころではなかった。私は植物と会話出来るのではと言う結論があるが…薬草採取イコール植物殺害なのである。その為、場所を聞きたくても聞けないのである。寧ろ私は植物採取に対して罪悪感に襲われていた。これの方が収入の妨げになってしまっているか?なお、ここら辺についてはまた別の話である。


(宿屋もバカにならないのよねぇ。)


 領土の宿屋に泊まるとして、日本の東京ど真ん中と言うわけではないのでそこまで物価は高くはないが…それでも月換算で小金貨5枚はいってしまう。じゃあ、小金貨5枚を稼げば良いかと言うと、まあそれでは食費引っ括めて赤字だろう。実際シュウ君はまだ小金貨5枚の稼ぎどころではない。が、孤児院として10歳以上の子を長く置いておくことも出来ない。ある意味シュウ君は生きるために必死だった。


(稼いだお金があるとは言ってもねぇ。)


 シュウ君の所持金は現状金貨50枚強。まあ、今すぐ追い出されてもしばらくは生きていけるお金はある。しかし、今のままでは大赤字。更に学校行くとなるならば今の所持金は頼れない。破産まっしぐらなのである。孤児院にはその事を踏まえ、所持しているお金はシュウ君自身の収入源じゃないとなんとか言いくるめ、まだなんとか置いておいて貰っている状況だった。


「まあ、とにかく…私もシュウ君の命令無しにハイそうですかと動けなくなっちゃった身でね。面倒臭いんだけど…ケリンさんの返答はシュウ君次第と言うことで。そんな感じで伝えといて貰えるかな。」

『畏まりました。』


 最悪、宿ではなく私の拠点で過ごすと言う荒技もあるが…、服ぐらいなら持っている予算から崩しても良いだろう…それでもシュウ君の食費のために稼ぐ必要性はあるし、森の中での生活を人間の子供に強要して良いのか私なりの疑問があった。とまあ、ハンターとなり10歳になったが故、人里に逃げ込んだメリットが崩壊しつつあるのであった。そして数日後、私は徒歩で孤児院に向かう。ツルを使った移動の方が何倍も早いが…掴む場所がないし、疲労も徒歩よりは多い。人間が常に走って行動しないのと同じである。

 物語は次の章に入ります。メンバーも増えてきて内容も少しずつ重くなっていきます。

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