呆れた受付嬢
「では、ハンター登録が終わりましたので特に他に無いようであれば…」
「あ、ミサさん。ちょっとよろしいでしょうか?」
「はい。」
「既にシュウ君採取依頼を受けてきてしまっているんですが、ここで提出とか出来ます?」
「え、えーっと…まあ、ハンターになれば依頼提出は可能ですが…事前にもう薬草とってきたんですか?そんな急がなくても…」
「あれですよ。私からシュウ君にプレゼントしたんです。誕生日プレゼントってやつですね。余ったので今後の資金にしたいのです。」
「あー、またマイさんの入れ知恵ですか。もう私突っ込みませんよ。で、何とってきたんです?」
「おじさん。そのカゴ頂戴!」
「あ?ったく、年上にはもうちょっと経緯を持った方がいいぜ?」
シュウ君の発言にベイルさんはそう言いながらも、リンゴカゴを受付に置いた。
「これは?」
「あー、ちょっと開けますね。」
ツルで中がこぼれないようにふたをしていたので、私自身のツルを伸ばし施錠解除した。
「これいくらぐらいになります?」
「えーっと…はい?」
ミサさんは一瞬で顔が硬直した。
「どっから持ってきたんですか?」
「森の中から。」
「いつ行ったんです?」
「数日前。」
「えーっと、栄光の方とご一緒に?」
「いえ、私一人です。あ、だけど最終的に栄光メンバーに手伝って貰ったので、8個は彼らの…」
「7個だ。孤児院の時言っただろう。」
「あー、とりあえず7個は栄光のものですが残りはシュウ君の取り分です。」
「………」
ミサさんは黙ってしまった。
「はいはい。マイさんならいつかやらかすとは思っていましたが…もうちょっと執行猶予が欲しかったですね。」
「不味いことしてます?」
「そうですねぇ。ハンター的には問題ありませんが、倫理的に問題しかありません。」
「例えば?」
「どう見ても独占ですよね?」
「他のハンターがちんたらやってるのがいけません。第一早い者勝ちでしょう?私だってこれだけ集めるのに何回か死にかけたんです。それに必要最低限しか持ってきていません。まだ余ってますよ。」
まあ、アースが暴れたから残っているのではあるが。アースが暴れていなかったら私独占の言い逃れは出来なかった。
「はぁ…もういいです。とりあえず、換金はここではないので向こうにある受け取り窓口に持っていってください。あ、補足ですが間違いなく今ギルドで全額換金できるお金はないです。」
「えー。」
「なんでそう言うところだけ女の子のように駄々こねるんですか?!」
「だって女の子でしょう?人間換算で。」
「たまにマイさん殴りたくなりますね。」
「どうぞ?ケリンさん達軍団が攻め混んでくるだけですが。」
「はぁ…まあ、とにかくお金をそのまま持ち歩くのは良くないので…シュウさんのギルドカードに所持金を登録しておいた方が良いです。必要な分だけ引き出す形式ですかね。」
日本で言うところの銀行みたいな感じかな。
「じゃあとりあえずそっち行きますか。」
「うん。」
栄光メンバーも今回はシュウ君の付き添い且つ成果物の報酬受け取りが目的のためそのまま付いてきた。採取物の引き取りではまあミサさんと同じような反応が帰ってきてしまったが…無事換金できた。まあ、下の方に埋まっていたリンゴは重みで若干痛んでしまっていたと言う課題があり金貨50枚強と言う微妙な額になってしまった。栄光たちも金貨3枚強である。痛んでる部分の減額はどうするかで多少揉めたが、端数があると面倒くさいのである程度の区切りで分けた感じである。まあ、こういった経緯のもと今回の採取依頼は幕を閉じるのだった。
「お姉ちゃん。ありがとう。」
「うーん、ごめんね。シュウ君学校行きたいと行っていたし…稼いできたつもりだったんだけど…予定より大分少なくなっちゃった。」
「そんなこと無い!僕学校に行っている間お金稼ぐもん!こんだけあれば学校行けるよ。お姉ちゃん、ありがとう!」
「そう。後金貨10枚ねぇ。」
2人とも学費は無料と言う概念が残念ながら頭から吹っ飛んでいるのであった。まあ、生活費は必要なのだが…。