自立の許可
『そうじゃの。394番目の子よ。お主にはもう一つ伝えなければなるまい。』
「………」
もう頭はパンク状態だった。まだ何かあるのか。
『魔物たちはの。効率の良い食べ物の摂取方法を知っておる。まあ本能じゃな。そしての、お主らの花は言わば養分の蓄積庫。見かけたら他のことを無視してでも手に入れようとしてくる。むしろ花以外は興味ないと思っても良いかも知れぬ。実際に見たり報告で聞いたじゃろ。511番目の子も553番目の子も狙われたのは花のみじゃ。』
要は、私の急所は花で魔物は問答無用で花を攻撃してくると言うことである。攻撃を避けるため、花を身代わりにしたらメイみたいに餓死する。おばあちゃんはそう言いたいのだろう。
「おばあちゃん。頭痛い。」
『…大丈夫かぇ。まさかお主もその花に傷を負ったりしてはおるまいの?』
「大丈夫。」
昔は結構顔から転けることも多く、まあ今もバランスを崩すとそうなるが…この体は重心の位置がおかしいといつも思う…今の痛みは情報過多によるパニック状態である。人間の時もマルチタスクで頭が痛くなることが良くあったが同じ状況である。
「おばあちゃん。ありがとう。おやすみなさい。」
『うむ。しっかり休むのじゃ。』
そういえば、合格とか何か言っていたがなんだったんだろう。気にはなるが、これ以上の情報収集は頭が違う意味で持たない。既に暗いしその日は色々考えながら眠ることにした。そして翌日おばあちゃんにそのことを聞いてみた。
『そのことかえ。394番目の子よ。お主はもう独立して生きていくことが出来ると言うことじゃ。もう草原に留まらず好きな場所へ行っても大丈夫じゃの。』
「え、でも…魔物が…」
直近妹を2人も無くしている。原因は森に行ってしまったから。それを目の当たりにしてはいそうですがと草原から出ることなど出来ない。
『お主ならもう大丈夫じゃ。もっとも、無理して出て行けとは言わぬ。まあ、妾の娘が沢山ここで生活しているならば独り立ちしてほしいがのぉ。』
若干、残念そうな声だった。おばあちゃんが産んだ花は560を超えている。その中で今もおばあちゃんの傍にいるのは私だけ。しかも他は知る限りでは全員死んでしまっている。先日までは後2人いたけど…。
「おばあちゃん。私はずっとここにいるよ!だって魔物怖いし、妹まだ欲しいもん!」
『そうかぇ。うーむ、若干甘えん坊に育ってしまったのぉ。フォッフォッフォ。』
その時、ハッと目を覚ました。ツルの区切りの隙間から朝日が入ってくる。
(100年か…。)
そう、私の100年はこんな感じで波瀾万丈だったのだった。100年経っても最終的には妹は0。チャンスは大体半年毎だが、色々条件が整うのは10年ぐらい?でも私は少しでもチャンスを生かそうと頑張ったつもりなのである。