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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
ハンターと魔物
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謝罪と交渉

「ねえねえー。なんでごめんなさいーで終わらないのー。ボク森でたまに人間が喧嘩してるの見るけどーごめんなさいーしている人達はその後仲良くしてたよー?」


 アースの偏見ではあるが、ここのメンバー達には納得の顔触れが見えた。リールが言う。


「マイ。今回は共に落ち度があった。これで良いか?まあ、本来なら不問にするのはどうかと思うのだが…お前らはどう思う。」

「私は別に良いわよ。ハンターだって襲われないように警戒するし、昔私の友達も魔物と思って矢放ったらテイマーの魔物でトラブったことがあるらしいしね。その時は致命傷だったらしく大問題だったみたいだけど…それに比べたらこれぐらいどうってことないわ。」


 ウィリーの足元はツルで擦れた擦り傷があった。


「ごめんなさい。」

「俺も…まあ、俺はリールに右に倣えするぜ。故意じゃねえんだろ。人間間違いはあるもんさ。おっと、お前は魔物か。まあ、マイなら人間と変わんねえだろ。」

「私も大丈夫!というより、私ちゃんと探知魔法使えているようで良かったわ~。マイちゃんの発想から尚更勉強したんだから、気にしない気にしない。」

「とのことだ。どうだ。」


 私は目を擦りながら全員を見上げた。感謝で涙がまた溢れた。


「うう…ありがとう…ありがとう…ございます…。」

「ほら仲直りー仲直りー。」


 アースは全員の頭の上で飛び回っていた。


「ところで、マイ。この妖精はどうしたんだ?」

「…なんか、私を気に入ったみたいで…付いて来ちゃっていまして…。」

「そうなのか?魔物と妖精って相性最悪だったと思うんだが…。」

「まあ、マイは人間っぽいしあり得るんじゃない?」

「うーん…」


 私は考えながら、そういえば背中が軽いことに気づいた。リンゴのカゴが置きっぱなしである。私はハッとした。


(不味い。このままでは借りを作りっぱなしになる。)


 私は栄光メンバーに声をかける。


「えっと…その…」

「どうした?」

「謝罪というか…お詫びというか…口止め料というか…これ貰ってくれませんか?」


 私はカゴの方に行き、フタを解放し…リンゴがこぼれないようにフタもツルで固定していた…黄金リンゴを差し出す。


「な?!?!」

「ちょ…ちょっと待って…何個持って来たのよ?!?!」

「うーん…120前後はあるかな…。」

「嘘だろ…。」


 120個。金貨60枚分。日本円換算で600万円である。


「1人…1-2個なら出せます…その分の稼ぎの代わりは後で考えるけど…と、とりあえず…貰ってほしいです…。」


 リールは考えた。現状、自分達は登山2日目である。本来往復7日前後を目処に色々準備して来た。それで黄金リンゴ4個ぐらい取れればまあ元は取れるかという感じだった。目標は勿論それ以上だが。ここで、マイからリンゴを貰えば出費を抑えた上でリンゴが手に入る。何せ貰ったらこのまま下山すれば良いのだから。見つかるかどうかも曖昧なリンゴ…というより、この雰囲気ではマイが全部持って来ちゃったのではという状況下において自力で探しに行くメリットは何もなかった。


(結構な量あるな。1-2個なら2個ずつ貰いたいが…流石に強欲だよなぁ。)


 リール含めこの4人はマイとシュウを気に入っていた。話すとなんだかんだで馬がある。それにマイの実力も知っている。実際、まあかなり卑怯な手を使われたとイラッとはしているが、Bランクハンターパーティーを打ち破っているのである。マイが野生の魔物だったら栄光メンバー全員命はなかっただろう。今後の栄光パーティーの課題である。とまあ…とりあえず、シュウがハンターに就任したら5人目のメンバーとして採用したいと考えていた。実際既にこの魔物はとんでもないことをやらかしている。まあ、仲間にしたらやり過ぎるなと即刻叱責することになりそうだが…それも吟味し、出来るだけ好印象を与えておきたい。


「うーん、ちょっとだけ聞きたいんだが良いか。」

「はい。」

「それ、重くないか?」

「重いですよ。体もうバキバキです。」

「ちょっと気になる。持たせてくれ。」

「構いませんが…」


 栄光パーティーで一番堅いの良いベイルがカゴを持ち上げた。


「おっも!重すぎだろ!お前どうやって運んできたんだ?!」

「え、それはこうやって…」


 マイはフタを閉め、カゴを背負ったのち…ツルを使って体を持ち上げた。


「こうすれば運べるといえば運べるんですけど…流石に重くて…何度も回復しながらなんとかなんです。」


 全員が唖然としてしまった。


「よしわかった。じゃあ、1人2つで8つ俺らにくれないか?」

「あ、はい。」

「ちょっと、リール?!1-2個ってマイが言ってたじゃない。強欲過ぎない?!」

「その代わり、俺らにもそのリンゴを運ぶのを手伝わせてくれ。それならどうだ。」

「え…だけど、重いですよ?」

「ベイル?どうだ?ウィリーとメリーは流石にきついと思うが…俺らならいけるだろ。」

「おう。筋トレ代わりにはなりそうだな。第一こんなちっこい女の子がこれ持つのは拷問だろ。」

「あ…えーっと…」

「良いの良いの。彼らがやりたいって言ってるだけなんだから。困ったら大人に頼るのも子供の仕事よ?」

「えーっと、私これでも150歳超えて…」

「私、強化魔法使おうか?」


 マイにしてみれば、手伝ってもらうということは下山が遅れるということ。シュウ君の誕生日に間に合わなくなってしまう。しかし、彼らの善意に断りきれない私がいた。と言うことで、栄光4人と魔物1匹と何故かついてくる妖精1匹の6人で下山することになった。この私の判断がさらに地獄を呼び起こす。しばし、マイは厄日なのだった。当日夜になり栄光のメンバーが夕食を食べている頃…


「お前らは何の食いもん持って来てるんだ?」


 と、ベイルに問われた。

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