やんちゃな妖精
『姫様!奥の木をご覧ください!』
「どうしたの?」
指示された木は先ほど妖精が閃光を放った木であった。私はそこまで目が良くないが…黄金リンゴが10個ぐらい実っているではないか?!
(は?)
側に黄金リンゴの木があることは植物の情報から分かっていたが…リンゴは成熟されていなかったはずである。何故急に実ったか…。まあ、あらかた予想はつく。とりあえず、採取しに行こう。どうせ妖精は私のツルに夢中である。私は木を降り、籠を背負った。
(うーん、あれは結局敵?)
帽子を被りながら自問自答する。さっきまで魔法を連発していたが、暴走とか言っていたしどうやら落ち着いているようである。目の前には欲しい果実がいっぱいなっている。ただ、このまま向かう場合…あれと間違えなくエンカウントである。じゃあ、処理するか?私のルールで実害がなければ駆除対象外である。何を発砲したのかは不明だが、分かっていることは多分その光が木々の果実を実らせたんじゃないか説である。ただ、まだ推論に過ぎない。第一妖精である。何してくるか不明である。
「あ!見つけた!」
私が考えに耽っていると、上の方から声が聞こえた。
(あ、油断した!)
どうすれば良いのか悩んでいたのが原因で見つかってしまったようである。ただ、何故だろう。見た目が女の子だからだろうか。危険!というオーラが全くなかった。それに植物達からの警告連絡がないのである。場合によっては『なんだ。こいつだったのか。』とか『姫様。彼女は攻撃しない限り襲ってくることはありません。』とか、肯定的な意見が多い点もあった。私はじっと見つめる。上から妖精が降りてくる。
「ねえねえ!声聞かせて!」
「え?」
「あー!やっぱり!お姉ちゃんだったね!さっきボクの上にいたの!」
「上?」
「そうそう!これこれ!」
某女の子は自分の頭を指した。髪の毛は茶色だが、頭の頂上にくるくる回る緑色の双葉があった。外見について追加だが、上半身は服というより、布を羽織っているような状態であった。布の真ん中をクリ抜き頭を通している感じ。胸の位置は布で隠れているが、ヘソと胸の間ぐらいで前も後ろも布が途切れていた。そして、スカートはさっきも言ったが、中が見えるぐらい短い丈である。布もスカートも茶色であった。本人もさっきまで土に潜ってましたー感で泥だらけである。
「さっきの声、貴女だったの?」
「うん!」
後ほどちょっと気になったので聞いてみたのだが、今の状態では声は口から出ているが…某頭の双葉のみを地面から出しているときは双葉経由で声が出せるとのこと。色々私が知っている常識がぶっ飛んでしまっているが…まあ私も魔物でツルが一部物理法則破壊しているし…そういうものなのだと納得することにした。
「そうそう!でねでね!お礼言わせて!」
「お礼?」
「うん!だって、さっきボクに水かけてくれたんでしょ!お姉ちゃん以外の声なかったもん!お腹すいたって言ったら水がかかったもん!お姉ちゃんでしょ?」
「え…ま、まあ…」
「じゃあお礼!うーん、言うだけじゃなぁ…あ、じゃあアレは?あれ美味しいんだよ!」
妖精が指を指した先には、某黄金リンゴの木があった。
「うーん、私はお礼なんてどうでも良いんだけど…ただ、あのリンゴを今たくさん集めていてね。…念のため聞いておくけど、取って良いのよね?」
「うん!大丈夫!」
「じゃあ遠慮なく。」
私はこのリンゴでシュウ君の学費を稼ぐ戦法に出ている。躊躇とかをしている余裕はなかった。第一かなり限界なのである。カゴを背負い、ツルを使ってリンゴの木の麓に移動する。そして、あるリンゴ全部回収した。
「他にまだあるかしら。」
『姫様…それが…』
植物達が動揺しているので何事かと聞いてみると、今まで未成熟だった黄金リンゴの果実が一斉に熟していると言うことであった。
(マジか。)
おそらく、あの妖精が魔法を連射していたので…そして、その光を受けた木が今私がリンゴを採取した木。あの妖精、良くも悪くもとんでもないことをしてくれていたのであった。
「ねえ?」
私が後ろにいるであろう妖精に声をかけた。すると、その妖精は木陰に引っ込んでしまった。
「うん?どうしたの?」
私は声をかける。カゴを持っているので歩くことが出来ないためツルを伸ばして向かおうとした瞬間…
「こ、来ないで!!!」
と言われてしまった。
「え?」
「お、お姉ちゃん…魔物なの?人間じゃないの?」
「あー。」
私は服と帽子を被ってしまうと見かけ10歳の人間の少女と殆ど同じになってしまう。要はあの妖精は私を人間と見ていたらしい。
『姫様。あの妖精は定期的にこの森を飛び回っている妖精です。地中に潜ることがあることは忘れていましたが…。妖精は魔力が豊富。魔物はそのため妖精を狙うことが多いのです。おそらくそれで怯えているのかと。』
はぁ。また面倒臭いものに絡まれた。私はそう思った。