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ゴリ押し登山

(うーん、面倒臭いわね。)


 何が面倒臭いか。簡潔に言うとハンター達である。今回の黄金リンゴ依頼は誰かが受注して取りに行くと言う形式ではなく、採取依頼である。要は取りさえすれば誰でもお金が手に入るのである。私は知らなかったが、この依頼に行くメンバーは全員がリンゴを持って帰ると言うわけではない。見つからず持って帰れない…と言うのもあるが、途中で駆除対象となっている魔物がいた場合にはその死骸を持って帰るハンターもいる。結局ハンターにしてみればお金が入れば何でも良い。リンゴだろうがそうでなかろうが。ただ、死骸を解体するとはいえ荷物が嵩んでしまう。それゆえ、リンゴは諦め…遠いし…その獲物で満足するハンターもいるのであった。そしてそのハンターが邪魔なのである。


『姫様。どうやら右側の登山道にハンターが3名程歩いております。』

「わかった。」


 マイは木の枝を雲梯の様にして登っている。そのため、紆余曲折している登山道など一切無視で直進レベルで突き進んでいた。しかし、この様子をハンターに見つかる訳にはいかない。最悪、野生の魔物と判断され撃ち落とされてしまう。道中魔物に会うと面倒臭いので帽子とか服とかも全部着ているが…直接エンカウントは避けない訳にはいかなかった。そのため時折迂回することにならざるを得ない。


(はぁ…はぁ…)


 また、私は魔物とはいえ…と言うより誰でもそうだが、登山道を移動すれば体力消費は免れない。マイの見積もりでは全速力でぶっ飛ばして目的地に1日である。途中で光合成をして日光浴とかもしているが、全速力ブッパでは死にはしないにしろ…体力はかなりきついのであった。


「く…」

『姫様。大丈夫ですか?』

「な、何とか…」

『姫様。姫様相手に無礼かもしれんが、相当体力消費している様に見えるぞ。そろそろ太陽光も日が暮れて森に入らなくなる。今日は休んだほうがいいぜ?』


 ここでウンといえないのがマイの悪い癖であった。何しろ遅くなると、シュウ君の誕生日までに間に合わない。シュウ君の10歳の誕生日は1回しかないのである。その焦りがマイの体に鞭を打っていた。とはいえ、植物の言う通り光合成が出来ないと養分を作ることが出来ない。まあ、天気とかの影響もあるため数日光合成が出来なくて死ぬなんてことはないが…現状体力を使っているのでちゃんとした回復をしないとやばい。


(最終手段しかないかなぁ…)


 日光浴をするとき、私は森の中ということで全裸になっていた。帽子もとる。髪の毛も擬似ブラジャーも葉緑体が入っている。肌は肌色なので入っていないと思うが…。それ故、花の匂いで魔物が襲撃しようとしてくることがあった。まあ、マイの射程範囲は2km程度。植物からの伝達範囲は植物がある範囲で無限である。マイに触れるどころか気づいたらツルで束縛されているという理不尽を敵の魔物は突きつけられていた。まあ、世の中理不尽だらけ。運が悪かったとしかいえない。


(誰も見ていないわよね…)


 植物は見ているがもうそれは諦めだった。何せ私にかかっている負荷は光合成レベルでは対処できない。私はケリン達がやってる腐葉土不足の狩りを思い出していた。死にたくないならやるしかない。


(いくよ…)


 少し前にとらえた魔物を食べるため相手の魔物を束縛からツルでぐるぐる巻きにしていく。抵抗は不可能。そして食虫植物のごとく、ツルから消化液を出し吸収し始めた。


(う、う、う…)


 体がエネルギー不足だったのだろう。初めのうちは花の蜜がたまらない。それに安堵した私は気を抜いて…蜜が溢れそうになってることに気づいた。


(あわわわわ…だ、ダメ!!)


 私にとって花から蜜が漏れる行為はおねしょとかおむらし感覚なのである。そしてツルから養分を吸いとる場合…自分で吸収を制御することが出来ない。私は頭を右の方に傾け漏れないようにするが…無理だった。オーバーキルで花から溢れかえった。


(ダメ…ダメ…お願い…止まって!!!!)


 人間換算で路上で放尿状態…恵みとして回りに誰もいない…植物は例外…ぐらいだった。


(う…ううう…)


 私は涙を流しながら本能に従わざるを得ないのだった。


(はぁ…はぁ…)


 違う意味で疲弊してしまったが、体力は全回復。私は当初の目的を思い出し…再び雲梯で突っ走る。


『姫様?大丈夫ですか?そんなに精神を乱して…大丈夫そうに思えません。』


 植物が心配しているがマイはもう無視…と言うか心がもう死んでしまっていた。がむしゃらに私は突き進む。そのかいもあってか、1日の夜には目的地近傍の軽い洞穴で休憩することが出来た。マイは昔から体で無理していると分かっていても余計なプライドと真面目さから無理をしすぎる悪い癖がある。昔と言うのは前世レベルで。そんなことをしているから鬱で倒れるのにどうしようもない子であった。

 無茶するのはやめましょう。

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