伯爵夫人からの手紙
「むにゃむにゃ…う〜ん。」
そしてマイは昨日何があった?と考えている時にシュウ君は目を覚ましてしまったのであった。
「…あ、お姉ちゃん!おはよう!」
「あ、おはよう。」
「お姉ちゃんどうしたの?僕のベットで寝ていて。」
「え?うーん…昨日の記憶がないのよね…。」
「記憶喪失??大丈夫お姉ちゃん?!」
「あー、うーんーまあいいや。」
本来、9歳の男の子のベッドに10歳の女の子が一緒に寝ていたら…しかも向かい合って…更にこともあろうに、マイはシュウ君を抱き枕のようにしてた…大惨事なのであるが…マイはまだ思考が微妙。シュウに至ってはよくわからないけど一緒に寝れたやったーなのであった。このバカ2人の今後が思いやられる瞬間であった。ここの孤児院の寝室は1部屋1人な訳がない。複数人の子供が一緒に寝ている。私はある程度頭が覚醒してくると、漸くこの状況が色々やばいと言うことに気づき始めた。まあ、普通に考えてシュウ君が寝ていると言うことはここは男の子達の寝室。私がいちゃいけない。
「シュウ君。いい、私すぐここ出ていくから他の子には絶対に私がいたことは内緒ね。」
「え、どうして?」
「うん?どうしても。シュウ君なら分かって欲しい…と言うよりお願いします。」
マイはプライドかけて必死だった。実際、シュウ君が起床する時間である。他の子も起きている可能性があるが…速攻で逃げようと考えていた。
「うん!わかった!」
毎度恒例分かっているか分からないが取り敢えずこの男子寝室部屋と言う危険地帯を撤退するのであった。まあ、実際のところ性別の問題より魔物と一緒に寝て良いのかと言う問題なのだが…。
(あー、やらかしたわ。これ私お酒一生飲めないわね…)
そもそも魔物はお酒を飲まない。と言うかマイは植物の魔物なので食べることがおかしい。突っ込みが追い付かないのであった。
「あれ、マイさんどうしてそっちから?」
早起きした先生の一人が私を見て声をかけてきた。普通ならばマイは孤児院の入り口からやってくるのに寝室からやってくるはおかしいのである。まあ、昼間休憩としてシュウ君のベットでシュウ君と休んだり話したりすることは今までもあったのだが、こんな早朝はあり得ないのであった。
「あー、すいません。昨日の記憶がなくて…向こうの廊下で寝ていました。ごめんなさい。」
「あ、あー、飲みすぎましたか。私も昔は羽目外したことあって…」
この女性の先生は昔飲んだときに、とある特に関係ない男性にベタベタくっついて歩き回ってしまったらしい。後日謝罪したらしいが。私はうーん、と思いながら聞いているのであった。
「まあ、お詫びも兼ねて今日の午前中また子供の面倒見ますよ。」
「あ、それはありがたいです。よろしくお願いします。」
一応だがマイは孤児院の先生ではない。その為、給料は0。マイは時折なんのために子供の面倒を見ているのか分からないのであるが…もう思考放棄していた。前世社畜であったが性格は変わらないのであった。
(二日酔いとか魔物の体質ではあり得るのかしら。)
そんなことを考えながら私は子供立ちと遊ぶ…今日はケンケンパらしい…マイはジャンプも出来ないし、根っこで出来た疑似足なので股を開くことが出来ないのだが…まあ、ツルとか駆使して何とかしていた。
(時折子供にいじめられてるんじゃないかと思う。)
それはさておきお昼。いつものように私は外で光合成していると、シュウ君が孤児院から外に出てきた。もう、シュウ君ももうじき10歳。孤児院でも最年長になっていた。
「お姉ちゃん!手紙がきたよー。」
「手紙?」
私宛?と思ったが、シュウ君宛で魔物使いの教育訓練であった。魔物使いになると、この街では時折ムサビーネ夫人より講習を受けることを義務付けられている。この街は他の街より魔物使いが多く昔からテイマーの魔物でのいざこざが多かったらしい。それ故、何匹飼っているか知らないが…経験豊富なムサビーネ伯爵夫人から教えて貰うと言うルールがあった。
(シュウ君って時折不思議よね。)
昔ちょっとしたトラブルでムサビーネ夫人からシュウ君に雷が落ち、以降…まあ、それ以前も貴族と言うこともあったが…彼女に対し震えていることが多い。その為彼女に抵抗があると私は思っているのであるか、それにしては手紙がきたときに元気良く私に声掛け出来るのはいつも謎であった。
「訓練かぁ。あれ、私達行く意味あるのかしら。」
何回も行っているので大体内容は分かるが…人害を起こす可能性がある魔物と人間がどうやって共同生活するのかが最終目標である。そして内容は主従関係。魔物が問題を起こさないように主人がストレスを試させないような行動とか、異常行動はどう行った内容とか、そのときの対処法とかそんなものが多かった。勿論コミュニケーション的な内容が無いわけではないが…犬を具体例にすると分かりやすい。犬とのコミュニケーションの場合…主従関係が正しく出来るようになると犬は命令を聞くようになり主人の行動を聞くようになる。しかし、それが上手く作れないと犬は主人を見下すようになり勝手にどっか行こうとしたり走り回ったりしてリードとかを引っ張ってしまうのである。
(私は犬じゃないんだよなぁ。)
対して、私とシュウ君は根本的に違う。私は自由気ままだし、シュウ君も私を縛ることはしない。私は独断でシュウ君を守ったりするし、シュウ君も出来る限りで同じことをやっている。要は上下ではなく共に支え会う友達なのである。長年参加していて…まあ、一時期シュウ君がトラウマ期間になり半年程訓練について通知がなかったが…私は常々疑問に思うのであった。補足であるが、シュウとマイが異常なのである。他についてはムサビーネ夫人の指導が正しいのである。しかし、ムサビーネ夫人にとってもシュウとマイの関係は却って理不尽すぎて指導しようが無いと言う問題があった。




