後始末
「おいおい、気になって見にきてみればなんかとんでもない奴相手にして来たんだってか?」
ハンターの男共総出で荷物を荷馬車に担ぎ上げる。2匹を乗せたのちに荷馬車を引っ張りながら聞いてきた。なお、子供2人はここまでよく頑張ったということで魔物と一緒に荷馬車の上に乗っけてもらった。
「全く大惨事でしたよ。個人的にこの火を吐く鳥は今後の課題です。こんなに浪費していたら集団で来られたら私死んでしまいます。」
「いや、それはお前だけじゃなくどのハンターも共通なんだが…。氷魔法でなんとかならねえのか?」
「うーん、確か火炎鳥だったっけ。ツルでぐるぐる巻きだから見えないけど。あれ、かなりすばしっこいって聞いてるから当たるか不安だなぁ。」
「ファスモグラだよなこれは。どうやって動き止めたんだ。俺が栄光タンク役だが…俺でも吹っ飛ばされるレベルのスピードって聞いたんだが。」
「秘密です。」
「お姉ちゃんは強いもん!僕もお姉ちゃんみたいになる!」
ここにいる全員が悟ってた。マイはやばい魔物である。そしてシュウはマイにたどり着くなどおそらく不可能だと。そしてマイは自分なんておばあちゃんに比べれば雑魚なんだよなぁと思っていた。マイに警告しておくが、比較対象間違えすぎである。マイのおばあちゃんは論外である。第一自分の100倍生きている生物とは経験が違いすぎる。勿論マイはそんなこと把握していないが。シュウがマイを理想とするかの如く、マイがおばあちゃんを理想にするのは理想像が大きすぎるのであった。まあそれはさておき、守衛を抜け…門は人が通る場所だけでなく荷馬車が通る場所もあるので魔物の死骸も運べる…私達は別れることにした。
「すいません。そもそも今日はシュウ君と遊ぶ約束だったのです。ギルドに行くとまた余計なことが増えそうなので私達は帰ります。」
「私は?」
「ミサさんはおまけですよ。」
「相変わらず扱い酷いですね。」
「おいおい、お前達が駆除したんだろう。それで残りはお任せか?」
「え?魔物の後始末はハンターの仕事ですよね。シュウ君はハンターではありません。シュウ君、私達は孤児院へ行くよ。」
「あ…わかった!お兄さん、お姉さん!ありがとう!」
「あ…」
シュウ君は8歳の男の子である。更にマイの魔物の恐ろしさを感じ取ってしまったハンター達。何も言えないのであった。
「はぁ。私は今日オフなので帰っていいですか?」
「お前受付嬢だろ。仕事しろ。」
「今日はオフですよオフ!!見て分かりませんか!受付嬢の制服着ていないでしょ!」
「知らん。あいつらと一緒にいたんだろう。話は多分ギルマスからも聞かれるぞ?」
「そんなぁ…。」
ということで、シュウとマイのやらかしは全部ミサが抱えることになってしまうのであった。まあ、マイがゴリ押しで逃げた理由も同じである。今日はシュウ君と楽しむ日。どうせギルドに行ったらその目的が果たせない。今日はシュウ君に全力投球と決めていたマイであった。なお、この後ギルドの解体施設でマイのツルが中々切断出来ずツルの除去だけで数時間作業になってしまったというのは別の話である。マイの両腕についているツルはマイでさえも歯で噛み切れるレベル。ただ、引っ張る強度は物凄いのだが…。しかし、マイが地面から作成したツルはそれこそ変幻自在。ノコギリを使って漸く対処出来たレベルだったらしい。更にミサはギルマスに事情聴取を受けていた。
「すいません。ギルマス。今日は私は休暇です。なんで呼び出されないといけないんですか。」
「自分の心に問い合わせてみるのじゃ。大体わかるじゃろ。」
「そうですね。明日でも問題ないと思います。」
「出来るだけ早急に情報が欲しくてのぉ。」
「ミサさん。ハンターの話ではどうやら街道にその魔物は転がっていたとかどうとか。もし、街道にBランクの魔物が出没しているのであれば直ちに対応しないといけません。」
ギルドマスターの秘書が正論を言ってきた。
「あー、マイさん〜シュウさん〜助けてくださいよ〜。」
仕方なしにミサは森に行って散歩していて云々と色々話した。まあ、約束があるのでマイが魔物を倒したがどうやったかは話せないと正直に話したとのこと。
「そんなに森の奥に入ったのかの?」
「いえ、距離換算で歩いて1.5時間ぐらいかと。」
「中途半端な距離じゃの。」
「ただ、マイさんの強さ的にあそこら辺に住んでいれば、この街に魔物が来る前にマイさんが全部駆除しちゃいますよ。それぐらい強かったです。マイさんは。」
「うーむ。見境的にBからAの間ぐらいとな?」
「はい。3匹目は分かりませんが、Bクラス上位の魔物2匹ともう1匹を1人で同時駆除です。マイさん昔、森に住み着いていてハンターに襲われたことがあるじゃないですか。私的に良く縛り付けて終了にしてくれたか疑問ですよ。今日の討伐時の殺気的に本来であれば全員ツル団子ですよ。」
「それはシュウがいるからじゃろう。あの魔物は頭も良い。人間を殺したとなったら自分の主であるシュウの立場が危ういからのぉ。」
「私はここの事務が仕事なので詳しい判断は出来ませんが、聞いているだけでもマイさんはとんでもない魔物っぽいですね。やろうと思えばBクラスの魔物を駆除でき、それでいて人間との過ごし方もしっかり理解している。」
「ますます研究しがいがありますね!ギルマス!」
「お主がまず戦犯にならないかが心配じゃが…うーむ。確か、マイと同種の魔物の棲家が見つかったとか言っていたのぉ。」
「ええ、マイさんがある程度いざこざを沈めてくれていますが…今度の伯爵様との会議…彼らに手を出すのはやめて下さいよ。マイさん敵に回したら絶望しか見えません。」
「それは伯爵次第じゃが…まあ、付き合いもあるし、こちらのハンターの犠牲もかなり出ておる。折り合いは付けておくので任せるのじゃな。」
「お願いします。では、今日の休日出勤分の給料も下さい。あ、出来れば代休も欲しいです。いやー魔物とやり合うなんて思っていませんでしたら、休ませて下さい。」
「そうじゃな。休んだ分は減給とその分仕事が増えるが大丈夫かの。」
「なんでですか?!私間違ったこと言ってます?!」
残念ながらハンターギルドもブラック企業なのであった。