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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
立入禁止区域
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植物VS火炎鳥

『姫様!上から来ます!』


 そのとき焦げ臭い匂いがした。上を見ると、私が仕掛けたトラップが燃え始めていた。相手は火を纏っていると言っていたので地上に比べ上空は網目をより細かくしておいた。そのため、ツルは燃えるが火がここまで来ることはない。


「さて、一番面倒臭い相手とやり合いますか。」


 マイが一番苦手とするのは敵が空中にいるときである。或いは火を使ってくる魔物。空中の場合、ツルで捕獲するのは不意打ちを仕掛けても難しい。空を飛ぶということから、そもそも論移動速度が早いのである。また、地上からツルを生やすという条件上、どんなに場所が分かってもタイムラグの都合上ツルで捕獲は困難であった。更に火を使えるということはツルを燃やして焼き切れるということ。相性最悪の魔物であった。ただ、ツルも枯葉ではない。引火したところで燃え上がらず、そこだけ焦げると言った感じである。


(ほら、突っ込んでこい!)


 私は燃えたツルの下に既に次の網をかけていた。燃えたところを狙って突っ込んできたら捕獲完了である。しかし、魔物は更に火を吐いてきた。


(あー面倒臭いなこれは。)


 上空を網で覆っているため、敵が何処にいるかわからない。網目は炎を通させないようにとほぼ密集状態にしているからなおさらである。なお、場所がわからないといえど…厳密にいえば目視が出来ないだけで植物達の情報から場所はある程度わかる。私は網状のツルから適当な場所にツルを伸ばしぶつからないか試すが…地面に触れている足と違ってそんな攻撃が当たる訳がなかった。


(持久戦だなこれは。)


 定期的に炎が飛んでくる。ツルが燃えるが、私が新たなツルを作成し速攻でトラップを再構築していく。敵が火を放つタイプとわかった瞬間に私は上空のツルを3枚構造にしていた。1枚の場合、焼かれた後そこに突っ込まれたらおしまいである。複数にすることにより、突っ込まれたら奥に引っ掛けようと考えていた。しかし、今回の敵は突っ込むのではなく焼き切ろうとしている模様である。そのため、燃やしても燃やしても…網が崩れても違う網が直ぐ下に見える。敵にとってみても面倒臭いのであった。


『姫様。相手は諦めて帰っていきそうです。』

「あ…うーん、まあ逃げるなら逃げるで…」

『いや、違うな。姫様の広げた網の端っこ…姫様からみて左側を探っているように見える。掻い潜ってきそうだぞ?』

「わかった。」


 私は戦法を変えた。ツルの生成を一生懸命やっているが、それだけ私だって浪費する。向こうもイライラしているだろうが、こっちだって浪費は抑えたかった。相手が、ツルの網を抜けてこっちに迫ってくると情報が来た。


(さて、博打に出ますか。)


 博打とは言っても私はここまで大量に情報が溜まっている状態で九死一生の様な戦術は取らない。相手が見えるのを待つ。相手の戦術的に次どう来るかもう予想は出来ていた。オマケで敵の魔物の情報も植物から聞き出している。抜かりは一ミリも無かった。


(伊達に150年生きている植物の魔物を舐めるなよ?)


 私はこいつはぶっ殺すという意志を持って攻めてくる方向を睨みつけていた。そして相手の姿が見えてくる。


「あ、あれは…火炎鳥!」


 ミサさんが叫んだ。まあ、地面から何か出てきたときも何か叫んでいたが、マイは一切聞いていなかった。火炎鳥と呼ばれた魔物は木々を抜けながら一気に私に突っ込みながら火を吐いた。


「お姉ちゃん!!」


 シュウ君が叫ぶ。…と同時に、火炎鳥の前に3本のツルが壁の様にドカンと地面から生えてきた。ツル…と言っても1本のツルの太さは1m程度。それが3本。本来そんなものは存在出来ない。木の幹ではないのである。しかしそれが一気に生えた。マイの最終手段であった。火炎鳥は口から火を吐きながらツルにぶつかる。ツルは多少は焦げるが、その程度で切れる訳がない。直径1m級の丸太を軽いバーナーで焼くイメージ。短時間で燃え尽きる方がおかしい。むしろぶつかったのが原因で火炎鳥は動きが鈍る。勿論、高速で突っ込んできたとは言え火を吐くとき反動がかかるので更に動きは鈍っているはずである。火炎鳥は気づいたらツルに束縛され始めていた。火を吐こうが体が火でまとわっていようが関係ない。ツルの猛攻にどんどん束縛されていく。火というのは酸素がなければ燃えることができない。こういう魔物は適当に縛っておいてもツルが燃えてしまい逃げられてしまう。そのため、全身をツルで覆い酸素を0にして鎮火するのがマイ流であった。まあ、そうなってしまった魔物は餓死ではなく窒息死なのであるが…自分の炎が原因で死んでいく。酷い仕打ちであった。まあ、敗者に死に方は選べない。現実とはそんなものであった。


「あいつは死んだ?」


 火の魔物は流石に相性が悪い。中途半端は私にとっても困る。


『不完全燃焼の中毒症状でしょうか。恐らくもう少しツルを多めにしておけば問題ないでしょう。』

「了解。地面のは?」

『束縛状態なので生きていますね。』

「じゃあ殺しとくわ。私の側にいる私に手を出した奴は問答無用で殺す。」

『森の奥の魔物はどうしますか?』

「こっちには来ないよね。」

『まだもがいている様です。もう少し念入りにしたほうがよろしいかと。』

「じゃあ、一生動けない様に束縛するだけで許してあげる。」

『それは許すとは言わないと思いますが…お任せします。』


 かくして、3匹の魔物の駆除を終えた私であった。ちょっと疲れた。光合成がしたい。

 自分の弱点は弱点を補うのではなく、得意で覆い被すものって何となく思っています。

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