傷付けられた「花」
「こもる?うーん、私はこのままでもいいと思ってるけど…。」
「えー、お姉ちゃん!もっと外見ようよ!おばあちゃんの木の上から見てみると凄いよ!」
「まあ、景色は凄いけど…」
人間の頃からそもそもインドア派であった私はそこまで外に興味がなかった。いや、全くないかと言われればそんなことはない。とりわけ、植物が多い森とかは好きだったし気分転換でおばあちゃんの木に登ったりすることもあった。ただ、現状は妹2人と後おばあちゃんと他の植物たちと色々会話が出来るのである。まあ、ここの草原から出れないと言う制限は若干不服ではあったが魔物軍団がいて出たら食べられてしまうと言われている以上、出ようとは思わない。無防備で治安が悪い場所や戦地に行くのは得策とは言えない。
「ムー、もういい!メイに聞いてみる!」
「あ…ちょ…」
メイは生き延びた3番目の子である。私は3人の中では積極性があまりなかった。勿論やりたいことは自分で研究していくタイプであるが、誰かを巻き込もうと思って動いてはいない。ユイが行ってしまったので仕方なしにおばあちゃんの木にツルを使って登っていった。枝が細すぎるところでは多分折れて転落してしまう。高いところは好きなので折れない範囲で高いところまで行き草原をその先の木々を湖を…色々眺めていた。それから数日後、いつもの様に私は鹿を捕まえる訓練をしていた。とは言ってももう殆ど感覚で捕まえれるので、複数相手にしたりとか自分で勝手に難易度を上げていた。とその時、泣き声がした。鹿を解放し、泣き声の方へ行ってみると草原の端の方からメイが歩いてやってきた。なんだろう、直感で嫌な予感がした。メイが私の方を向くと泣きながらゆっくり近づいてきた。
「お、お姉ちゃん…お姉ちゃんが…お姉ちゃんが…うわーーん!!」
メイが大泣きしているのも問題だが、もっと問題なのはメイの頭に付いていた黄色い大きな花である。…そう、付いてい「た」。今、メイの頭には黄色い花弁1枚しか付いていない。他の部分が何かにもぎ取られた様な有様になっていた。
「メイ!何があったの?!」
「うわーーん!!」
これでは会話にならない。とりあえず、おばあちゃんの木のところまでメイを連れて行った。それが更に間違いだった。
「394番目の子と、553番目の子よ、どうし…」
おばあちゃんが突如黙ったのである。
「何があったのじゃ…」
おばあちゃんの声は怒りと絶望と悲しみをごちゃ混ぜにした様ななんとも言い難い声であった。
「おばあちゃん…私も分からないの。メイが落ち着くまで待って…」
「ダメじゃ!緊急じゃ!急ぐのじゃ!」
おばあちゃんの大声に私もメイも飛び上がった。その声で吹っ切れたのか、メイが少しずつ状況を話し始めた。どうやら、ユイに急かされて森に入ってしまったらしい。そしたら不意ところで魔物が襲いかかりメイの花が吹っ飛んでしまった模様。ユイは「私が戦うから逃げて!」と立ち向かいそのまま…だったらしい。魔物はその後どうなったかは分からないが、メイは自分で出来る限りで逃げてきたとのこと。メイはまだツルについてそこまで上手く扱えない。私たちの体は走るイコール転ぶなので早く動くにはツルが必須になる。そう言う意味ではメイは上手く扱えないながらもちゃんと逃げてこれた辺り有能であった。
「分かったのじゃ…394番目の子よ。後はお主の好きな様にせい。」
「…え?」
「そのまんまじゃ。じゃが、511番目の子を助けに森へ行くのだけは許さぬ。お主は頭が良い。森に入らなくても511番目の子を見つけれるじゃろう?」
おばあちゃんはその後何も喋らなかった。ただ、おばあちゃんは、ユイを見つけてほしいと言っている様な感じがした。
「メイ?頭は大丈夫?…えっと、お花…。」
「スースーするけど平気だよ!むしろ軽くなったみたい!」
まあ、頭の花はユイやメイをみる限りでも頭の半分ほどの大きさがあった。私もそんな感じだろう。ただおばあちゃんが散々『頭の花は命』と言っていたことを思い出し、気がかりではあった。ただ、とりあえずはユイの所存である。
(大体おばあちゃんが言いたいことはわかるよ。)
当時で95年の付き合いである。それと、今まで学んできた事から何すべきかはすぐに分かった。
「誰か!ユイの場所調べてきて!」
『はい姫様!』
「え?」
「メイ。ちょっと待っててね。直ぐわかると思うから。」
そして、自ずと数分後報告が入ってきた。
(うーん。)
方向と場所はある程度分かったが、確信して「ここ!」と言うものはない。あくまで植物達の見たものであって私が見ていないのだからしょうがないと言えばしょうがない。
「メイ。ちょっとここで待っててね。」
「はい!」
ツルを使っておばあちゃんの木に登っていく。出来るだけ高いところ。そして、指摘された方向の方を向く。まあ、木々の羅列で木しか見えないが。