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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
生後100年の歴史
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開花と分離

(え…)


 目が覚めた?気づいたら?どっちかはわからない。ただ、目が覚めたらと言うことにしておいて…目が覚めたら、物凄い高いところにいた。多分木の上。しかも結構高いところ。高い風景から枝が見える。なんだろう。遠くに木々がたくさんあることは分かるが、それよりも自分は高いところにいる。それは間違えない。とりあえず、周りを見渡し…いや、出来ない。と言うより体が動かない。と言うか、体なのか?手や足とかそういう感覚もない。


(何これ…)


 想像でしか言えないけど、多分木の高い枝にくっついているんじゃないか?体は動かないけど、視界だけなら辛うじて動かせる。とりあえず、人間と言う意識はあるが今の自分は人間じゃないと考えた方がいいと思う。視界的に木の高いところ。まあ細枝よりはちょっと太いところにくっついているとして、人間ならばまず枝が折れて落ちるだろう。後、動かせる限りの視界を頼ると、真横は…


(花弁…?)


 ピンクと言うべきか、橙と言うべきか…とりあえず花弁であることは間違いない。右見ても左見ても花弁。勿論前は高いところからの風景である。


(もしかして私、花?)


 どっから突っ込めば言いかわからないけど、そう言わないと説明が付かない。ただ、花って意識があるのだろうか?第一ここが何かしらの木と仮定して生き物に意識が仮にあったとしても木本体に宿るのじゃないのだろうか?まあ、人間の意識と仮定して木に意識があるとはとても思えないが。


(それにしても…)


 仮に私がこの木の花として…他に花が見当たらない。それどころか恐らく自分が付いている木に葉っぱが一枚もない気がする。勿論遠くにある木々は青々しいのではあるが…


(私が付いている木は枯れている?…いや、じゃあ私はなんで意識があるの?何故開花したの?)


 突っ込みどころ満載ではあるが、気づいたら花になっていたと言うことはもうどうしようもない。とりあえず受け入れざるを得ない。


(どうしよう…)


 どうしようもこうしようもなく、花である以上いつかは萎れる。まあ直近数日であろう。数日も持つか?まあ言えることとしては…


(余生を楽しもうかな)


 それだけである。と言うより、どうせ高いところから地上を森を見下ろすことしか出来ないんだから数日で十分である。風景も全部見えないから数時間で飽きる。とりあえず、一通り見える範囲で周りを見た後、眠ることにした。まあ、多分自分は木に付いた花と言う存在だと思うので眠るの定義も良くわからないけど。そうして一週間がたった。


(おかしい…)


 まず異変は枯れないことである。普通に考えて1週間枯れない花なんてあったかなぁ。冬でも咲く花はあるかもしれないけど、1週間以上咲き続けるなんてものは聞いたことがない…もしかしたらあるのかも知れないが、私の知識にはない。花びらが落ちてしまったり枯れてしまうのが常識だろう。枯れた後実とかになるならまだわかる。そうじゃない。咲いたままなのである。花弁も枯れている様子すらない。


(枯れないなら私はこれからどうすればいいの?)


 景色は1週間程度で変わるわけがない。どうせ見えるものも変わらない。せめて雲が動く程度。飛んでいる生き物が見える程度。地上は木々が多く下は見えない。まあ、真下は方向的に見えないけれど。


(早く枯れてほしい。。)


 はっきり言う。咲いていてつまらない。存在自体がつまらない。だってなんのために咲いているのかすらわからないんだから。その時、不愉快な感じがした。背中?なんてあるわけないが、後ろの方…要は木の枝とくっついている部分がむずむずするというか風が入って来たというか…と考えるか考えないかのうちに背中が取れた感じがした。


(あ…落ちる…)


 漸く、時が来たのだろうか?私という花はどうやら枯れるのではなく根本から落ちるタイプの花らしい。そういう木なら聞いたことというより見たことはある。ただ、こんなに高かった記憶はないけど。というより、


(ちょ…死ぬ!死ぬ!!!)


 木の高い所から転落である。人間の記憶を持つ私にとってみたらビルから落ちたのと同じ感覚。まあ、そんな経験はしていないと思うが…とりあえず高いところから落ちたら死ぬ!


(あ…あれ?)


 地面に落ちたのは分かった。ただ、痛みらしい痛みはなかった。


(私が花だから助かった?)


 軽かったからか?まあそれは説明出来なくはないが…


(どっちにしても、これで私の人生は終わりかな…短いようで長かったなぁ。)


 木から落ちたということは別れたということである。要はもう栄養が送られてくることはない。そもそもこの木葉っぱ一枚もついていないし、どっから養分作ってるかわからないけど、まあ花である私は養分なんて作れるわけがない。


(それにしても、この木ものすごく大きかったんだなぁ…)


 私が落ちた時、たまたま視界が上を向いてくれた。左右の花弁は健全。上を見ると、物凄く高い木が一本のみ見える。逆にいうと、その枯れかけた木以外視界に入る木は1本もない。首を動かせないし、視界もそれほど広くないから全貌はわからないけど、多分見えている木の周りは草原なのではないだろうか?上から見た感じだと、ちょっと遠くに離れると木々が沢山あったはずだが。


(うーん…)


 一瞬これからどうしようか考えたが、木から落ちた花に何もやることなどない。枯れるかそこら辺の生き物に食べられるかどちらかである。それ以上もそれ以下もない…ない、はずなのだが???


(…な、何?)


 視界の真反対側、要は背中?というより、花と木が繋がっていた接触部分から何かが生え始めている感じがする。


(な、何?何?何?!)


 意識が花からその生え始めている何かにちょっとずつ移っていく。もう訳がわからない。


(もうどうにでもなれー)


 気持ち悪い。その違和感だけで私は意識が遠のいていった。まあ、これで死ねるなら十分だろう。生きたと言っても花が咲いただけ。それだけの価値しかなかったが、それだけの存在価値なら寧ろこの木から養分をもらって行きていた私自身が馬鹿らしくなる。そう思いながら意識を手放していった。。。

 うつ病のため復職準備中です。うつ病初期の頃から記載を始めた創作が溜まってしまったので、なろうに投稿することにしました。復職訓練のための投稿にもしております。

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