指揮官を収穫する
帝国の貴族の内情を本家本元に聞いて見た。
情報収集は一番大事な事だ。
皇帝派は、四大公爵が本元である。
しかし、一枚板では無かったそうだ。公爵とは皇帝と血縁関係が有る。
表向きはと言う注釈が付くが。裏では、色々な暗躍が有ったそうだ。
人は皆そうだろうな、上向き思考も有れば現状維持も有る。
俺みたいに何もしたく無い人間も居る。此の世界では無理だけど。
前世なら、とにかく何もしなくても平穏無事に一日が過ごせた。
治安が良かったのだ、日本国内に限れば不安は無かった。
日本国内全てが安全とは言わない、危険な場所も有る。
その辺りに行かなければ火の粉は降って来ない。
この異世界では、まだ長期間暮らした訳では無いが。
最初に出くわした、角兎も狼も鷲も安全では無い。
相手より弱くて隙があれば、殺されて餌に成る。
知らなければ、ならない事は沢山有ると言う事。
一番勢力の大きかった公爵家。ストロガノフ家。
皇帝の正室出身家、軍事力も大きくて従える伯爵も十家と多かった。
帝国の伯爵家は三十家程、元々の国の数と同じである。
大小様々な国が集まって帝国が出来たのだ。
従える伯爵家の数で言えば、二番目のベンケンドルフ家。
八家の伯爵を傘下にして居る。
クラーキン家は、五家の伯爵家を従える。
レプニン家も同じく、五家の伯爵家を傘下にしている。
只、従えている伯爵家の数が多い少ないは、戦力には繋がらない。
治める地域差が有るのだ。
そりゃそうだ、北の方で寒くて痩せこけた土地は幾ら耕しても作物は
多くは取れないだろう。
それに比べて、南の暖かい国では養分を十分に与えれば年に二度取れる
事も有る。雲泥の差である。
食料事情は生物の生育にも影響が出る。
スポーツの世界では、体格差でルールが造られるスポーツも有る。
それが、ルールの無い戦争なら。体格差は如実に表れる。
生と死、運を考えなければ体格の大きい方が有利に成る。
戦争では、数の有利も有るけど。
相撲取りと赤ちゃんが相撲を取っても、勝ち負けは歴然だ。
数が多くても貧弱な戦士ばかりでは勝てない。
前世でも昔は、北国の高校野球は優勝旗を持って帰れなかった。
冬場の練習量に違いが有る。最近は体育館等の関係で少なく成ったけど。
軍隊も同じだな、鍛錬量と食事で兵士の質は桁違いに成る。
帝国も、南部と北部の貴族では、兵士の質に違いが有る。
滅びたストロガノフ公爵家は、領地も兵士の数も多かったが領地は北部である。
クラーキン家と、レプニン家は傘下の貴族家は少ないが両家とも南部が領地だ。土地も豊かで作物も良く獲れるが、フロル王国とアルザックス王国に近い。
正式な交易は出来ない間柄だが、有力な商人同士では密かに交易は行われて居る。経済的にも帝国南部の貴族が有利に成る。
食料にも余裕が有り、懐も温かい南部の貴族は出来る事が多いと言う事。
北部の貴族の懐柔工作が出来ると言う事だ。
北部の貴族の娘なら少しでも暖かくて食料の豊富な南に住みたい。
小さい頃からの憧れでも有る。その事を知って居ればだけど。
逆に南の貴族の娘達は、北部には行きたくは無いだろうな。
俺が、姫の立場に成っても嫌だな。
それが原因で政略結婚が破談に成る場合も有った様だ。
大貴族なら断れても、子爵や男爵程度では無理だろうな。
「アドラ殿、此の肉は何の肉だ?」
貴族間の事を思い思考の波に漂って居たらの質問。
「フロル王国の南部に住む、ブルガと言う牛に似た動物の肉ですね」
「儂も色々な物を食べたがこれ程の肉は初めてだな」
「此のブルガは、体の部位によって硬さや柔らかさが色々で御座います。
料理長の腕も良いのでしょうね。肉は有りますのでお持ち帰りに成られても
良いですよ」
「それは有難いが、料理人も連れ帰る訳には行かんな。ハハハ」
「公爵様、永遠には困りますが数日程度なら教えに行かせますが」
「流石だな、ガビアン家の家宰ドミトリー。此の度は仕えた主に運が無かったが。
俺が父に、我が家の家宰にと上申した事も有ったのだがな。先祖代々ガビアン家
家宰を務める家系だから許されなかった」
「公爵様、お褒め戴きありがとうございます。此れからも、シュルツ坊ちゃんを
支えながら精進致します」
「お前の息子もこの度の争いで亡くなったのだな。お前の代でガビアン家の家宰の家系は、途絶えるのだな残念な事だが。只教えを乞うだけでは出来ない事だが」
「そうですね、貴族と言う振舞いは一長一短には身に付きません。長年の
積み重ねとそれを伝える技も必要です。見様見真似でしたけど」
優秀な人だとは思ったが、長年に渡って帝国貴族の家宰を務めた家系だったのだな。長きに渡ってなら何処かに身内、血DNAが残って居るのでは無いのか? 平和に成った時の宿題かな。
「公爵様は此れからはどの様に動かれますか?」
「どの貴族も帝国の中心地、皇宮を目指して来る。先に攻めるか
迎え撃つか。戦争のやり方は専門家に任せている。将軍達に」
「何方にされても、やはり情報でしょうね。明日雨が降る様なら雨具は
必要に成ります。斥候部隊に探らせて居るのですか?」
「そうだ、しかし帝国は広い。攻めて来そうな貴族が居る方を重点的に
探らせては居るが中々難しいだろう」
「それなら、私の方でも調べて見ます。公爵様の斥候部隊は区別が付きますか?」
「斥候は隠れて調べるのが得意な部隊だからな。此れを持って行け」
手渡されたのは帝国の白金貨と言われて居る物だな。
特別に鋳造されたレプニン家の紋章入りだ。
「此れは!大金ですね。金貨千枚でしょうか?」
「そうだ、貴族でも持って居る者は滅多には居無いな。アドラ殿から
十枚分は貰って居るからな。一枚位なら良いだろう。真似て作るなよ」
いやあ、バレて居たか。
「大事に使わせて戴きます。敵軍の動きはお知らせ致しますが。戦闘には
極力参加は致しません。火の粉が降りかかれば払いますが」
「アドラ殿一人に助けられても困るからな、金銭と武器に食料の助けで
十分な助力だよ。有難う」
それから、公爵様一行は土産を持って帰って行った。
ヘラには駆逐艦アルカイックの搭載艇での監視活動をさせている。
帝国の南部は友好的で、北部貴族は怪しいと言う基準で監視して居るが。
何処に落とし穴が有るのかは不明な為に広く浅く探査して居る。
軍隊の終結は人が多く集まると言う事だ。
赤外線での探査だと良く分かる。生きて居る人間は体温が有る。
生きて居ない人間。異世界ならスケルトンは難しいな。
それと、軍隊を発見しても何方側の軍隊かを判別する方法だな。
逐一、レプニン公爵様の手を煩わせる訳には行かないな。
レプニン公爵様も裏切りの可能性は分からない。難しい所だな。
敵軍隊の監視作業はヘラに任せて。俺は、先手必勝を目論む。
軍隊が駐屯出来そうな広い所は少ないだろう。水も必要だし。
場所は限られる。フロル王国とアルザックス王国が何時も戦って居た。
ヤガラ平原見たいな所を探せば良いだけだ。
数か所の軍隊が駐屯出来そうな平原を探して、罠を仕掛ける。
落とし穴の様な物は駄目だな、敵味方の区別で使えない。
友好的な軍隊が来た時には危険だ。前世の地雷だな。
使える罠には色々と縛りが有る。
無害な物で起動しなければ未来永劫に渡って罠に成らない物が良い。
地面の下に色々埋めて置く。
『ご主人様、北東より軍隊らしき集団が来ていますね』
『北東と言えば、滅んだストロガノフ家の領地だな。旗印とかは分かるか?』
『まだ遠距離なのでもう少し距離を詰めてから確認致します』
『詳細が分かる様に成ったら、転移して飛ぶから座標を教えて』
『ご主人様、了解いたしました』
高空で帝都より西に居た様だ。三十分程した頃に連絡が来た。
『52°58’14.51”N 103°54’29.21”W 高度千m入力完了』
転移する。
上空千mに浮遊して徐々に降りながら地上を確認する。
隊列を保ったまま行軍して居る。数えると二万人位は居る様だ。
全てが敵なら、ヤガラ平原のアルザックス王国軍と同じ運命だな。
帝都方面に進軍する様だ、野営が出来そうな所は少ない。
罠を仕掛けた平原は少し先に有る。
此の軍隊が敵なら、飛んで火に入る夏の虫だな。
少し様子を見ようか。
東の方からも数は少ないけど、軍隊らしき者達が集まって居る。
着て居る服装から考えると、同じ貴族では無いのだろう。
ストロガノフ家は、傘下に十家の伯爵家が居たそうだから。
色々な思惑も有っての集まりみたいだな。
滅んだお家の再興を考えての行動かも知れないし違うかも知れない。
情報収集は大事だ、でも普通に考えれば徒党を組んで帝都方面に進めば
反乱を疑われても仕方ないだろうな。
この辺りは帝都からの距離が二百kⅿ位は有る。
早馬を使っても一日に走れる距離は五十~六十㎞だと言われて居る。
レプニン公爵様の斥候達も、連絡手段の関係で帝都からの防衛線は百㎞位に
設定して居るのでは無いだろうか。
俺が此処で下手人を捕まえても、レプニン公爵様の所に連れては
行かれないよな。転移が出来る事はバラしたく無い。
やはり、首謀者を捕まえて聞き出した方が良いな。
レプニン公爵様に敵対する事が明白に成れば、野営地で処分しよう。
此の軍隊を率いて居る人物は優秀だな。
夕方に成る前には、野営予定地に到着した。
先に到着した部隊が野営の準備をテキパキと始めている。
夕食を終えて幹部クラスが明日の予定を話し合って居る。
ステルスモードで近づいて聞き耳を立てる。
「ところでミローノ様を討ったのは誰だ?」
「ベンケンドルフ家とクラーキン家にレプニン家だ。一番影響力の強い
我が主を三家の公爵が纏まって討ったのだ。賢いやり方だな」
「そうだな、一つの公爵では難しい」
「だが、南部のアニキータ・デュク・レプニンなら単独でも出来ただろうな」
「兵の数と財力は我が主と同等だったからな。それ以上に出来る男だ。石橋を叩いても渡らない様な男だからな。他の公爵を引き入れて
余裕を持って襲ったのだからな」
「此れからその男を討ちに行くのだが、出来るのか?」
「普通に行っては無理だろう、我々は兵の数が減って居るのだ。色々な所に応援を頼んだが集まらなかった。其処で、ストロガノフ家の財宝を使う事にした。主要な血筋は討たれたが財宝は隠して居たから残って居る。
今使わなかったら何時使う!」
「それを使って傭兵や冒険者を雇ったのか?」
「それだけじゃ無いぞ、他にも金が欲しい奴は一杯居るからな。ハハハ」
なるほど参謀の様な奴が主導して居るのだな。
【鑑 定】
名前:ボリス・ユスポフ
種族:人間(純白人種)
年齢:38
職業:ボアルネ伯爵家 将軍
状態:良好(軽微な疲労)
【能力値】
(生命力) : 250/280
(魔 力) :230/250
(体 力) :82/85
(筋 力):75
(攻撃力):68
(防御力):59
(素早さ):62
(知 能):88
(器用さ):82
(感 知):63
(抵抗値):61
(幸運値):80
【スキル】
両手剣Lv3 格闘Lv3
【マスタースキル】
火魔法 Lv2 水魔法 Lv1
『ヘラ、ボアルネ伯爵家とは、帝国ではどの辺りの貴族なの?』
『ストロガノフ家傘下の伯爵家で東北地方が領地です。帝都からは遠隔地
なので生き残って居たのでしょう。誰も手を出さない領地でも有ります』
『遠いと連絡が来るのも遅いからな。でも、隠れた人材の宝庫でも
有ったな。洗脳して連れて帰りたいな』
『了解いたしました』
大体の様子も分かったので明日の朝だな。
今夜は、家に帰ってゆっくりしよう。
家族との団欒が出来るのも平和だから出来るのだ。
数十万の軍隊が押し寄せて来ている時にのんびりとは出来ない。
次の日も平和が続く様に戦場に出勤です。
昨日のボアルネ伯爵家駐屯地上空に転移します。
俺が仕掛けた罠の上で朝食の準備をして居ます。
其処は辞めた方が良いのにな。とは、言えませんよね。
地面の下には広範囲に、木片が敷き詰められて居ます。
帝都のガビアン家改修工事で出た廃材を処分しました。
翼竜の糞を精製した火薬の原料と共に、爆発はしませんが燃焼性は良いです。
軍隊の駐屯地外側には、有る物を置いて居ます。
少し風向きを考えると移動もしなければいけませんが。
暫くすると。
「オイオイ!なんか地面が燃えて無いか?」
「朝食の準備で竈の火が燃えて居るんだよ」
「それにしては、竈以外でも火が出て居るぞ!」
「あ!本当だ!早く水を持って来い!」
火の勢いが激しくなって居る。
硝酸入りだものな、良く燃えるよ。
季節は初夏、気温も高い。
近くに小川が有るけれど、人力のバケツリレーでは間に合わないな。
火の勢いが激しくなると上昇気流が発生する。
そうなると、廻りから冷たい空気が入って来る。
風が周囲から中心部に吹き始める。
軍隊の駐屯地周囲に配置して居た草に火を掛ける。
カリペド 男爵領の西隣に有る、【スメルナ】と言う町に有る。
有名な産物、魔薬草と言う特殊な草。
元々の領主たちは、帝国との国境近くに領地替えに成って居ます。
スメルナを新たに治めるのは、カリペド男爵の義兄である。
母親は違うけど、俺が翼竜の肥やしを撒きに行って居る。
出来た魔薬草の要らない所を貰って来ている。
産廃処理だな。でも、薬効は少し残って居るのだ。
煙を吸うと、気持ち良くなって眠くなるのだ。
全ての兵士には効かないけど、中央近くに居た幹部クラスは効いただろう。
さあ、収穫の始まりだ。




