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情報収集

シュルツ・ガビアン視点。


 俺は、どうして此処に居るのだろう?

リスタル・ガルバー様の従卒として従軍して居たはずだ?


 徐々に記憶が甦る。

シュルツ・ガビアン家、ガビアン伯爵の六男シュルツ 十五歳。

正室に三人と側室に三人で俺が一番の末っ子。

戦場に送られても問題は無かったな。


 それにあれだ。古い遺跡の発掘品だ。

あれの、威力が凄かったな。

皇帝でなくとも、戦争がしたくなるだろう。

隣国フロル王国に攻めて行った。


 連戦連勝。古代の遺物に敵う物は居なかった。

我が軍の戦力も十万人、数の力でも敵を上回った。

負けることを疑う者は居なかったな。


 あの、見えない敵が現れるまでは。

古代の遺物を引き取りに来た様にも見えた。

一瞬にして古代の遺物が消えたのだから。


 それからだよ、俺達帝国兵の地獄が始まったのは。

古代の遺物の戦闘力が子供の火遊び程度に見えた。

見えない敵からの攻撃力は、桁が違う。光と熱の攻撃。

防ぐ物は無い、食料も武器も放り出して逃げた。


 逃げ遅れた者達には死が待って居た。

猟犬に追い立てられる羊の群れの様に、帝国兵達は逃げ帰る。


 俺達数百人は、一般兵と比べると体力は有った。

大部分が貴族家の出身だ。食事の差と体力も有るが、魔力量の差だな。

俺達の役目は、古代の遺物様の魔力補充が目的。

魔力だけは随分有った。身体強化に魔力を使っても数日持つほどに。

三日三晩軍隊の先頭を走って逃げた。


 しかし、その後は意識を失って居た様だ。

気が付けば、何処かの国の畑仕事を手伝わされて居た。

まあ、リスタル様と一緒だったから驚きもしなかったが。


 驚いた事も有った、リスタル様がエルフと結婚した事だ。

後から聞いた話だが、此処はフロル王国で辺境の男爵家領地だと言う。

其処の娘がハーフエルフで双子の妹がリスタル様を気に入った様だ。


 残念な事に、独身のエルフはもう居ないらしい。

俺も、リスタル様の様にエルフ嫁が欲しい。

でも無理だな、俺はリスタル様の様なイケメンでは無い。


 国に帰れば、許婚らしいのが居た様だが。

伯爵家の跡継ぎでは無い俺では、良い女は当たらないだろう。

その様な事を思いながら畑仕事をして居たら、又意識を失っていた。


 再度、気が付けば冒頭の言葉だ。

今の状態は、何処かの屋敷の床の上に仰向けに寝た状態。

何処かで見た事の有る様な、天井が見える。


 幾度か瞼を開け閉めしても、見える景色は変わらない。

此処は、十五年間暮らして居たガビアン家の俺の部屋だな。

帝国の伯爵家の屋敷だ、末っ子にも小さいけど個室が与えられて居た。

長兄の跡取りの部屋よりは小さいけれど。


 けれど違和感も多少は有る。間取りとか内装関係は変わらないけど。

随分新しい様だ、最近建てられた様な木の香りがする。

此処で懐かしんで居ても駄目だな、廊下に出るドアを開けて外に出る。


 部屋から一歩出たら、景色が一変する。

床も壁も石壁だけだ。内装が一切施されて居ないのだ。

でも、何故か分かる。廊下の壁には傷が付き易い高さまでは硬い材料を貼る。

その上には漆喰とか柔らかくても良い物で施工する。

建築工事の事がまるで昔からして居たように思い浮かぶ。


 あッ! そうだ俺には仲間も居たのだ。

幼馴染が二人、アルとドットだ。

アルは、アルフレッド。父親が俺の親の部下だった。

子爵位だったが色々有って、我が家で育てられた。


 ドットは、騎士の息子だ。

後二人は、今回の戦争で知り合って仲間に成った。

どうしてかは不明なのだが?

何故か、誰かに勧められた様な不思議な関係。


 名前は、ヴィクトロとグレーボだ。

ヴィクトロは黒髪の筋骨隆々の偉丈夫。

冒険者なら前衛の盾役が似合う。


 年齢は二十代後半位かな。嫁も子も居たのかな。

何故か話さないので過去の事は聞かない。


 グレーボは、ヴィクトロとは正反対の体つき。

小柄で細身、冒険者なら斥候役が似合いそう。

年齢は二十代前半か十代後半位かな。

彼も、家族の事は話さない。俺も聞かない。


 食堂は、料理が造れる程度の工事がされて居た。

伯爵家の家宰と数人のメイド達と馬丁が生き残って居た様だ。


 家宰のドミトリーに聞いた話だ。

俺の両親兄弟に側室の子供達一族郎党全てが殺されたそうだ。

今までの貴族の柵が一気に爆発したのだろうな。

皇帝一族も同じ末路の様だし。


 今まで生きて来た過程で、好かれて居たか嫌われて居たか。

その結果が、生き残れるか絶滅するかの分かれ目だったのだな。


 俺も、生き残ったのだから此れからも生き残れる様にしたい。

その為には、どうするか。嫌われない様にする。

全ての人達に好かれる事は至難の業だろうな。


 取り敢えずは、身近な物に嫌われない様にする。

万が一嫌われる、裏切られる様な事が起きるかも知れない。

その為には、やはり。情報収集に尽きるだろう。

それと、自分自身と家族や身内を守れる力を持ちたい。


 忠誠を誓ったアドラ様の為にも。

アドラ様からは、色々な力を授かって居る。

魔力量しか能の無かった俺に、魔法を使える様にしてくれた。


 一番の能力は、収納魔法だな。

容量はそれ程多くは無いけれど、色々な武器が隠し持てる。

体に寸鉄一つも持って居なければ、どの様な場所でも怪しまれない。

街の出入りでも、門を管理する衛兵の身体検査も大丈夫だ。


 手に入れた情報類も隠し通せる。

他の仲間も同じ様な魔法を教わって居る。

姿を隠す魔法と、一度しか使えないけど転移魔法。


 転移魔法は、伯爵邸に造られた転移部屋に帰れる魔法だ。

緊急避難魔法だな、捕まえられない様にする為の。


 雪が解けて動きやすくなるまでは、伯爵邸の内装を仕上げる。

その合間に、帝都の地図造りをする。

地図は、アドラ様から貰って居る。

その地図に情報を上書きするのが俺達に与えられた任務なのだ。


 俺達の情報収集相手は、貴族と比較的大きな商人が相手だ。

一般庶民は、別ルートで人数のみ把握する程度だ。


(シュルツは、知らない。アドラは国勢調査と住宅地図造りして居たのだ。

それも、全ての国の)


 地道に伯爵邸の仕上げ工事をしながら、貴族教育も受けて居た。

貴族の六男、万が一にも跡継ぎの目は無かった。

時代が変わったのだ。


 家宰のドミトリーから、貴族のマナーや知識を教わる。

皇帝亡き後は、貴族の勢力図は大いに変わって居るはずだ。

アドラ様からの任務も、戦国時代と成った帝国を知る事は重要事項。


 地面から雪が姿を消した。

マダマダ泥濘の道だけど、色々調べないと行けない事が山積なのだ。

仲間と手分けをして情報収集を始める。

生き残って居る貴族階級の勢力図は今一番欲しい情報だ。


 そして我々も戦国時代を生き残る為にも軍備は必須項目。

父が持って居た軍事力は残って居ない。父と共に壊滅して居る。

帝都の館は、貴族の嗜みで必要だった居場所。


 ガビアン伯爵領は、フロル王国の国境に近い所に有った。

父が居なくなった今は、多分誰かに乗っ取られて居る事だろう。

帝都からは距離が有る、今から出かけても数か月は掛かるだろう。


 帝都の此の屋敷だけでも守れる軍事力は欲しい。

守れそうも無い時には、地下に避難施設が造って有る様だ。

アドラ様から、命を粗末にしない様に指示を受けている。

生きて居れば何とかなるそうだ。


 夏が近づいて来た頃に成ると、帝都も騒がしく成って来た。

戦乱の世だ、各地の貴族の崩壊で統率も取れて居ない。

軍人崩れが、野盗と成って暴れ始めたのだ。

力の強い物が残る、弱肉強食が始まった。


 とうとう、我が屋敷にも野盗達が目を付けた様だ。

特に目立つ外観なのだ、塀の高さが七メトル位は有るだろうな。

御影石製で表面は鏡の様に磨かれている。

とにかく、お金持ち感はタップリと有るだろう。


 門扉も重厚な金属製で、分厚く造られて居る。

攻城兵器をもってしても破れそうには無い様に思われる。

見張り用の塔の上から覗いて居ると。

数十人の野盗達が、門と塀の廻りに集まって居る。


 館には、俺と仲間の五人と家宰にメイド達位しか居ない。

本格的に攻められたら、何時間も持たないだろう。


「お父様お母様。シュルツも、もう直ぐ其方に逝きます」


 お祈りを捧げて居たら。


「ピッシャ―!!ドドン!!」


 野盗達の傍に雷が落ちた様だ。数十名の野盗達が地面に転がって居る。

だが、其処からが可笑しい。野盗達の体が消えて行くのだ!


「フッ! フッ! フッ! フッ! フッ! フッツ!」


 信じられない事が起こって居る。

何度見ても不思議な光景だ。


「シュルツ、今から帝国を纏めに行こうか」






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