魔力球
此れから、第五章に成ります。
今日が、此の世界に来てから一年か。
色々激動の一年だったが、最重要目的は達成された。
後は、子孫繁栄か。
それは、嫁の特性に任せないと行けない。
俺は、頑張って妻子が過ごし易い環境を整えるだけだな。
そうだろう、平和な世界を。
平和な世界は、やはり持つべきは力だな。
攻めようとは思わせない武力は必須条件。
経済的な武装も必要だ、札束で顔面を張り倒す。
経済戦争の常套手段。
今の所、金は有る。カリペド男爵領の改造をして居て少しは
使ったけれど。
金は天下の回り物。タンス預金では経済が廻らない。
散財は駄目だけど、お金も使って遣らないと可哀想。
『ヘラ、山脈の掘削状況はどう?』
『目標の標高二千mまでは、進捗状況八十五%です』
『金属の採取状況は?』
『それが、問題が有りまして。魔力を貯める魔力球が満タンなのです。
土砂を魔力変換しても無駄になります』
『そうだったな、魔力球かぁ~。何処かに落ちてない物かな』
『ご主人様が最初に居られた、ハルゼー三世の倉庫なら有るかも知れません』
『駄目元で行って見るか。一度家に帰ってからアンジェラも連れて行くよ』
『了解いたしました。不測の事態も有りますので駆逐艦アルカイックで
行きましょう』
『そうだな、準備はして居てくれるか』
・・・
今の時間はお昼前なので、昼食を済ませてから行こう。
「お父様、用事が出来ましたので出かけます。数日は帰りません」
「そうか、深くは聞くまい。アンジェラと二人でか?」
「そうですね。新婚旅行ですね」
「ああぁ~、良いなぁ~、私達も行きたいなぁ~」
「エイミー達は、王都まで馬車で行ったらどう?」
「お父様、お金は出してくれるのですか?」
「お金は、ほらあぁ~。家には金庫番が居るだろう」
「アドラ様ぁ~、お願い致します」
「金貨十枚有れば良いよね。足りなく成ったらマロニー商会で借りたら
良いからね」
「やはり、持つべきはお金持ちの義兄ね。うふふ」
「エイミー、それよりは。早くリスタルの子供を産んでくれよ」
「どうして? そんなに急がなくても良いでしょう?」
「俺達の子供を育てる環境が良く無いと危険だよ。帝国は今、荒れ放題だ。
群雄割拠した状態だから、纏まらない。御旗が有れば纏まり易いからね」
「アドラ、帝国を併合するつもりなのか?」
「そうですね、出来れば話し合いの窓口の数は減らした方が良いでしょう」
「そうだな、敵の数は少ない方が良い。多いと背中も気にしないと行けないからな」
「帝国は四大貴族と四大商人居る様です。お金で買収しましょう。其処に
元皇帝の忘れ形見が登場すれば結果は歴然ですよ」
「数の力は歴然で、金も持って居る。負ける要素が無い訳か」
「そうです、戦う前から勝利が決まって居る戦争に加わる馬鹿は居ません」
「しかし、情報収集もしないバカも居るからな。何も知らずに猪突猛進な
武将も居る事も考えないとな」
「はい、肝に銘じて置きます。それでは行って来ます」
アンジェラと二人で転移して、駆逐艦アルカイックの転移
旅行期間は数日と言ったので、巡航速度で向かう。
距離的には三千㎞程度だ。音速の手前の速度でも三時間余りだな。
艦内でアンジェラとイチャイチャとする訳には行かない。
『ヘラ、三号はどうなって居る?』
『破損部分は修復して居ますが、下半身の欠損は修復不能です』
『やはり、代替え部品が必要になるな。あそこの地名は分かるのか?』
『正式な地名は付けて居なかった様です。秘密基地ですからね。でも、
ハルゼー三世は、ヤンバルガ―と付けて居た様です』
『ヤンバルガ―か、俺達もその呼び名で呼ぼう』
『了解致しました』
『ところで、ヤンバルガ―基地の復旧をしたら、探し物も探しやすいのでは
無いのか?』
『そうですね、駆逐艦アルカイックの予備魔力球を一つ持って行きましょう』
『でも、最下層迄歩いて降りないと行けないのだよな。地下千階だったな』
『そうですよ、頑張ってぇ~』
畜生、お前は良いよな。
「アドラ、何処まで行くの?」
「フロル王国のずーーと南だな。地図を見せるよ」
ヘラが造った。此の星アルネサン球儀を見せる。
操舵室の端に直径が一m程度の球体が浮かんで居る。
ホログラムである。
もうそろそろ、ヤンバルガ―基地が有る山が見えて来る頃だな。
グレイプルは、居るだろうか。
『ヘラ、ドラゴンは帰って来ているか?』
『ご主人様、モニターに映します』
やはり、此処がグレイプルのテリトリーなのだな。
一回り小さな、色もグレイプルより少し薄いドラゴンが居る。
グレイプルの嫁だろうか?
先に挨拶に行った方が良いだろうな。
機嫌を損ねさせたら厄介だ。
『ヘラ、先にグレイプルに挨拶に行って来るよ』
「貴方、ドラゴンが二頭も居るわよ。大丈夫なの?」
「一頭は、俺の知り合いだから大丈夫だよ」
「ドラゴン何て本当に居たのですね。初めて見たわ」
「今から、挨拶に行って来るから。此処で見ていてくれ」
「分かりました、お気を付けて」
前にも上って行った、山の麓の道に転移する。
ゆっくりと昇って行く、グレイプルは多分知覚して居るだろう。
『おい、アドラ久し振りだな』
『ああ、グレイプル久し振り。一年振りになるのかな。嫁さん貰ったのか?』
『親の介護が無かったら、俺だってモテるのだぞ。フフッ』
『良かったなあ、可愛い嫁さんだな』
『お前、ドラゴンの美醜が分かるのか?』
『その位分かるよ。鼻筋が通って居て短い角に口の牙の並び方』
『アドラ!お前はドラゴンの生まれ変わりなのか?』
『そうじゃあないけど。分かるんだよ』
『俺の嫁の、ドレシアだ。宜しくな』
『貴方、人間の知り合いが居たの?』
『ああ、一年前になるのかな。親父の事で世話に成った』
『そう言えば、お父様の介護をされて居たそうね。早く出会って居れば
私も手伝って挙げたのに』
ドラゴン女性にも、介護が苦にならない女性も居るのだな。
『私の両親もまだ生きて居るから、何れは介護が有るわよ。その時は
貴方頼むわね。介護経験者でしょう。フフッ』
しっかりして居るよ、此の奥様。
何処で知り合ったのだろうな、此の世界にはネットの婚活サイトは
無いだろう?
『グレイプル、良い奥様を貰ったな。何処で知り合ったの?』
『ドラゴンの里に行けば定期的にお見合いパーティーが有るのさ』
何じゃあ!合コンかよぉ~!
でも、俺も混ぜて貰うわけにはいかなかったな。
『でもな、親の介護をして居たら絶対に無理だからな。参加を
見送って居たのさ、五十年間。だから、改めてアドラ有難う』
『感謝は要らないさ、俺もこの世界に適応出来たのだから。逆に
お父様には有難うと言いたいよ。それと爺さんにもな』
『アドラ!気安く爺さんと呼ぶなよな! あの方は此の世界を創った
神様だからな』
やはり、そうだったのか。
出会った事は、グレイプルには言わない方が良いよな。
『えぇー! そうなの、知らなかったな。夢の中で聞かされただけだったからな。爺さんの名前はゼブルスと言うのか?』
『ああ、そうだ。でも気安く呼ぶのじゃないぞ!』
『分かった。教えてくれてありがとう』
『はは~ん、それじゃあお前は、此の世界の生まれでは無いな。あの方に
呼ばれたのか。何を言い付けられたのかは知らないが頑張れよ』
『グレイプルも夫婦仲良く暮らしてね。その、お父様の遺体はそのままなの?』
『俺達は手先が器用では無いのでそのままさ。時間が解決するさ』
『それなら、埋める場所を決めてくれたら、俺が埋めてやろうか?』
『埋めてくれるのか? それならこの平地の端の方で良いから埋めてくれ』
『分かった』
グレイプルの父親、アドミラルの遺体は野生生物や微生物の働きで
鱗や骨を除いて殆どが無くなって居た。
遺体や排泄物を全て収納して、平地の端に掘った穴の中に入れる。
土を埋め戻してから、重力魔法で押し固める。
その上に特製の御影石製で墓石を置く。
【アドミラル 此処に眠る】
裏面に、今日の年号とグレイプルが建立と書いて。
しっかりと、適当な数の鱗と魔力石は戴いた。
糞は肥料や爆発物の原料に成る。
『グレイプル、これで良いかな?』
『アドラ、有難う。でも、お前は俺に会いに来ただけでは無いのだろう?』
『この山の地下に遺跡が有ってね。良い物が無いか探しに来たのさ。
人間の世界も色々と有ってね。物騒がしいのさ』
『俺に出来る事が有れば言ってくれよ。手伝ってやるぞ』
『有難う、その時は頼むよ。それじゃ』
グレイプルに別れを告げてから、駆逐艦アルカイックの転移室へ。
「アンジェラ、待たせたね。行こうか」
アンジェラの手を取って一緒に転移する。
転移先は、ハルゼー三世の居室だった所である。
地上から掘り進めて、地下五百階までは降りたくはなかった。
アンジェラに地下千階まで歩いて降りるか?
と聞いたら、流石に嫌だと言ったね。
アンジェラは、駆逐艦アルカイックに帰った。
俺だって独りぼっちでハルゼー三世の居た部屋には嫌だよな。
それから、トボトボと地下に続く階段を降りて行った。
前の時は体力も少なかったけど、今は基本性能が違う。
ゆっくりと降りたけど楽だった。
それでも、地下千階は深いな。
前世の建物の階高は大体三m程度が普通だった。
此の基地は、軍事施設なので階高も色々に作ってある。
平均三mでも三㎞は有るな。
やっと、最終階に辿り着いた。
此処は機械室だよな、僅かながらエネルギーが残って居る様だ。
ヘラが、制御権を持って居るので入り口のドアもスムーズに開いた。
大体が、スライドドア。
ヘラの案内の元、エネルギーを管理して居る部屋に入る。
駆逐艦アルカイックの動力室と同じ様な造りの部屋。
大きさは桁が違うけれど。
巨大な、魔力球が鎮座して居る。その数は十個。
大きさは、直径が一mは有りそうだ。
『其方の倉庫内にも予備が有りますね』
ヘラが教えてくれた部屋にもズラリと並んで居る。
大きさも直径五十㎝程の物から数㎝の物まで。
色々な物の動力源に出来るのだな。
取り敢えずは、遣って見ないと始まらない。
駆逐艦アルカイックの魔力満タンの予備魔力球を取り付けて見ないと。
直径が一mの魔力球を取はずしてと言うか、収納する。
空いた置き場に予備魔力球を置く。
魔力球の大きさに制限は無い様だとヘラは言って居た。
貴重なエネルギーだから、柔軟な対応を考えて設計されて居るのだろう。
でも、三十㎝程の魔力球では残りの大きな魔力球には焼け石に水の様だ。
見る見るうちに、予備の魔力球の色がくすんで来る。
オーロラの様に光り輝いて居た物が、色が消えて行く。
でも、色の付いて居なかった残りの九個の魔力球に僅かながらの光が灯る。
成功だな。
「ヘラ、遣ったな。予備の魔力球に魔力を充填しょう」
「了解いたしました」
倉庫の中から十個程の魔力球を収納してから、駆逐艦アルカイックに帰る。
俺達は、ハルゼー三世の居室で新婚生活を過ごす。
エプロンは、勿論作ったよ。
夜の内に駆逐艦アルカイックは山脈を削って魔力球に魔力を補充する。
それを数日繰り返した。
俺とアンジェラは、ハルゼー三世の部屋の探検をしたり。
時には、地上に転移で出て観光をした。
此の基地の魔力球にそこそこの魔力=エネルギーが貯まらないと。
先に進めない。
ハルには南の大陸の調査及び地図造りをさせている。
二晩を過ぎた頃には、魔力が十数%程に成った。
『ご主人様、貴方様の魔力を充填したら三十%程に成りますが』
『やれと言う事だよな!』
俺の魔力が枯渇寸前まで充填する。
何とか ヤンバルガ―基地が最低限で稼働できる様に成った。
基地の制御室で色々試して見る。
僅かなエネルギーで生き永らえて居た軍事基地。
多分当時は十名位居たと思われる。椅子の数での判断だけど。
基地司令官席に座って見る。
駆逐艦アルカイックの制御室と同じ位の大きさと機器の配置。
国が同じなら同じ様な仕組みを考えるよな。
駆逐艦アルカイックの起動の時と同じように。
モニター画面が明滅を繰り返す。
パソコンの再起動だな、何度か繰り返す。
数十分後に、司令官席のモニター画面に認証の為の画面が現れる。
『ご主人様、指紋認証と眼球の虹彩認識です』
ヘラに言われた様に、画面に指を当てる。
画面を見る。
画面に俺の顔が映る、金髪の白人顔だ。
何処かで見た記憶がある様な。
そうだよ、ハルゼー三世のホログラムじゃ無いか。
やっぱり、爺の性だよなぁ~!




