一年は365日
努力目標は五日毎かな(笑)
仕方ないよな、歴然たる職人としての腕の差を見せつけられたら。
石工としての長い経歴も、棟梁としての立場も石工達の目の前で打ち砕かれたのだ。
俺のズルな職人の技で。
それからは、石工達に家作りは任せた。
完璧な芸術作品は今の所要らない、仮設住宅なのだ、練習有るのみだ。
石切り場は、陸のアルカトラズ北側の山にした。
良質の御影石が採掘できる。
そこで、煉瓦状に加工して建設現場に運ぶ。
鉱山もその近くから坑道を掘り始めている。
犯罪奴隷達の仕事も必要なのだ、危険で厳しい仕事は必要なのだ。
多少は犯罪の抑止力に成る。
カリペド男爵領の鉱山に送られると、知った犯罪者たちが小便を漏らす。
その様な恐ろしい思いをする事が常識に成れば犯罪も減るかな。
でも、どの世界にも石川五右衛門は現れる。人類の宿命なのだろう。
石工達の仕事の段取りは付けた。
カリペド男爵領の区画を、東西南北に四区画に分けて工事を行う。
最初は、北東部分を先にする予定だ。
俺達が住んで居るのは町の中心部だ、其処は一番後に成るかな。
土地が狭いのだ、廻りの建物を取り壊さないと広げる事は出来ない。
何をするにも、仮設住宅完成が待たれる。
待って居ても始まらないので、北東部分の仮囲いをする事にする。
解体をするにも、人を入れさせない様に塀を造らないといけない。
色々と忙しく建築の事もして居るけど。
エルフ母の両親の事も有るのだ。今は、孫との触れ合いに任せている。
アンジェラは転移が出来るので、転移の練習に付き合わせている。
いずれは、エルフのエンゲル村にも行って見たいな。
しかし、隠れ里みたいな処なのだろうな。
村長とか族長的な人に認められないと、入村は出来ない掟の様な物が
有るのだろう。
一週間程したら、仮設住宅も何軒かは出来て来た。
長くは住まないので、内装は簡素にして居る。
冬なので暖房は要るだろうけど、それ程は寒く成らないらしい。
それと、気になったのは宗教的なイベントが無いのだ。
教会らしき物も無い。大都市には有るのかな。
『ご主人様、宗教は有りますよ。カリペド男爵領は忘れ去られて居るのです。
宗教は農業に大きく依存しますから。不毛の土地には宗教団体も布教に来ませんよ』
俺も、貴族教育で聞いた様な記憶は有ったけど興味は無いな。
でも、爺さんに遭ったからな、神は居るな。
ヘラが見せてくれた資料だ。
主神 ゼブルス 此の世界を創った全知全能の神。神の中の神。
月の神 イシュル 神の裏側、死を司る神でゼブルスの妻。
大地の神 ヴァルナ ゼブルスとイシュルの息子。
火の神 アグニル ゼブルスとイシュルの息子。
水の神 ソルマ ゼブルスとイシュルの娘。
風の神 ビュルマ ゼブルスとイシュルの息子。
農業神 リティ ゼブルスとイシュルの娘。
戦 神 ランドラ ゼブルスとイシュルの息子。
職人・商人の神 ソカル ゼブルスとイシュルの娘。
此の世界を創り、自分達の分身も創った。
神話の様な話を作り出して金儲けをするのが宗教だ。
此処には教会は造らなくても良いだろう。
宗教団体が来てから対応したら良い。
それから、暫くしてから仮設住宅は出来た。
入居者は、クジ引きにした。公平だろう。
引っ越しを済ませた所から古い家屋を解体する。
此れは、俺の仕事だ。
仮囲いを作って居るので外部から見えない。
収納を使ったら、解体では無い。
騒音も埃も出ない。前世なら大儲けが出来たな。
産業廃棄物が出ないのだ、前世の解体業者は一般人では出来ない。
色々なノウハウが有った。
普通の人では、騒音等の苦情が来ても対応は不可能だ。
専門のお方が居ましたね。最近では厳しくなって居たけど。
産業廃棄物処理も難しいです。
俺は、収納した解体物を、山を削った平地に出す。
夜間に、駆逐艦アルカイックが魔力に替えてくれる。
一石二鳥ですね。
更地に成った町に区画割を行う。都市計画道理に。
一番先に、道路の下に下水道を造る。
此の世界には塩ビ管は無い。
そこで勿体ないけど、オリハルコンで管を造って埋設する。
半永久的な下水管に成る。
マロニーさんが知ったらビックリ仰天だろうな。言わないけど。
下水管の取り出し口を建築する家の傍まで配管して置く。
それから、同じ様に水道も配管する。
オリハルコンなら、高強度なので少々水圧が高く成っても大丈夫だろう。
最後に成るけど、領主館の屋上に高架タンクを設置する予定だ。
一番高い建物にするつもりだから。
水道と言えば浄水場が必要になる。出来れば滅菌とか紫外線が当たる
地上が良いのだけど、毒物でも放り込まれたら大変な事に成る。
やはり、地下しか無いな。
それと、何か所かに分けて配置した方が安全保障上も安心だ。
最初の一工区目だからトライアル・アンド・エラーだな。
失敗をしても大丈夫、次からは上達する。
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アドラが、カリペド男爵領の都市計画に邁進して居た頃に。
とある国のとある部屋では、侃侃諤諤の激論が交わされて居た。
「俺達の息子達は帰って来なかった! 王は、仇討ちも何もしないのか!」
「 「 「 「そうだ! そうだ!」 」 」 」
「お前達! 静まれ! よく考えて見ろ。二万もの兵が一瞬にして全滅
したのだぞ、何か対策を考えて居るのか?」
「 「 「 「・・・」 」 」 」
「それに、お前達は現地を見た物は居るのか?」
「 「 「 「・・・」 」 」 」
「ベネ叔父、皆に説明をしてやってくれ」
「此の国の宰相として聞かせてやる。現地に行って調査をしようとしたが
フロル王国軍が駐屯して居る。その為に正確な測量は出来て居ない。しかし、
直径約五キロメイルで深さが約三十メイルの窪地が確かに有る。今は大量の水を湛えた大きな池に成って居る」
殆どの者が、行って居ないのだ。静かに聴き入って居る。
「その様な巨大な窪地が出来る程の、魔法が使える魔法使いを抱えて居る。
諸侯は居るか?居るので有れば、早速ヤガラ平原に行ってフロル王国軍を
絶滅してくれるかな。その様な事が出来なければ黙って俺の話を聞け!」
「 「 「 「わいわいがやがや」 」 」 」
一頻り落ち着いてから話の続きを始める。
「我が国も、密偵をフロル王国には入れている。王城までは鑑定魔法
持ちが居るので入っては居ない。街の中に忍び込ませては居る。
噂話位は入って来る。その神の如き力を持った者はフロル王国の
何処かに隠れ住んで居る様だ。それと、帝国の現状を知って居る者は
居るか?」
「宰相殿、俺は帝国の商人に知り合いが居て聞いた話だが。
皇帝一家が殺された様だ、反乱と内戦が有った様だと」
「そうだ。その前に帝国は十万の兵を率いてフロル王国を攻めた様だ。しかしながら、フロル王国から追い返された様だ。十万の兵を
だぞ。北部のフロル王国軍は壊滅して居たのにだぞ。誰が出来る。
ヤガラ平原に大穴を開けた奴なら出来るとは思わないか?」
「俺も聞いたが、十万の兵は殆どが帰って来なかったらしいぞ」
「そうだ、脅しだな、フロル王国を襲えばこうなると。恐ろしい相手だ。数名の者が帰されたそうだ、伝令としてだろうな。それで俺は
王と話をした。フロル王国とは和議を結ぼうかと」
「 「 「 「ええええぇ~!」 」 」 」
「国宝の宝玉を取り返したいのは分かる。だが、国が無くなったら
どうなる。機嫌を損なえば、国が消えるぞ」
「皆の者! ベネ叔父の説明は分かったか! フロル王国と我が国が
今の様な事に成ったのは、およそ千年前だと聞いて居る。元フロル王は
我が建国王の弟だったのだ。兄と袂を分かち、宝玉を奪って
遁走してフロル王国を建国したのだ」
「 「 「 「そうだったのか」 」 」 」
「その、宝玉もその頃から何に使う物かは分かって居なかった様だ。今でも分かって居ないのだが。しかし、我が軍二万人が殺された事件の前に僅かな変化が確認されて居る。使い道の分からぬ物を盗って
逃げたフロル王も困ったモノだがな。フハハハハ」
「それで、俺とベネ叔父で話し合ってきめたのだ。俺達の決めた事に反対の者は、意見を言ってくれ。と言っても変える事は出来ない。嫌な者は、
一族郎党を伴って帝国でも南の大陸でも行ってくれ」
「まあ、アルザックス王国が一方的に決めた事だ。フロル王国がどの様な
対応を取るかは、未知数だ。お互いの国力は拮抗して居る。一度書簡を
送る様にして居るが。結果が分かるのはそれからだ、反対する者はそれまでに
進退を決めて置けよ」
アルザックス王国の重要会議は終わった。
伯爵以上の役職者を集めて行った。
「カルミネ、チョット良いか」
「宰相様、何でしょうか?」
「今回の事は、どうしてこうなったのかは、我々も良く分からなかったな。
お前の所だけに被害が偏ったな」
「いえいえ、我が領の問題ですな。フロル王国との国境に近いですから。
ヤガラ平原に駐屯して諸侯の到着を待つ。何時もと同じ事をして
居たにすぎません。両国の国情を知らない者の仕業でしょうな」
「そうだな。フロル王国が建国をした頃は、王都フローラルの
近くまで攻め込んで居た事も有った様だが。今では、帝国との
戦争の為の軍事訓練と化して居た様な諍いだったからな」
「戦死者たちへの見舞金に、税の減免までして戴いて居ますから。
領民の不満も少ないですよ」
「そう言って貰えれば有難い事だが、そうは思わない者達も居るだろう。お前の領地を通らなければフロル王国には行けないのだ。
不測の事態も起きりうる事も有る。監視は頼むぞ」
「宰相様、了解致しました」
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アルザックス王国がフロル王国との和議を画策して居る事も。
フロル王国の建国歴史も知らないアドラは、今日も呑気に
カリペド男爵領の都市計画に励んで居た。
カリペド男爵領の町を四等分しての建て替え工事も数か月。
随分捗って来た。
石工達の技量向上も一役買って居る。
犯罪奴隷達は、鉱山送りなのだが。一部軽微な犯罪奴隷は
石工として使って居る。
労働者不足だから、それでも他の領からも人の流入は続いて居る。
砂糖に蟻が群がる様に。
去年植えた麦の収穫も始まった。人骨と翼竜の糞が効いたのだろう。
大豊作に成って居る。
鉄の販売も伸びている、でも増産はしない。
価格の高騰で売り上げが良いのだ、カリペド男爵領だけで独占をすると。
他領からの反感を買うだろうな。
その様な日常を送って居た。
何気なく、時計を見た。
【365】 今日は、アルガス歴千二十四年三月一日だった。
俺が此の世界に来て一年が経った。




