魔法の修め方
薬草のマネーロンダリングを終えてから薬師様に昼食を奢って貰った。
冒険者組合の中に併設されて居る食堂で。
「サンスさん、今日からは何処かの宿屋に泊まろうと思います。
今までありがとうございました」
「そうですか、何時までも泊まって戴いても良いのですけどね。
色々有りますからね。それと、マニストには帰りますか?」
「暫くは王都で冒険者として活動してみたいと思いますけど」
「そうですか、私は直ぐに帰らないとマニストが私の棲家なので
妻と子供が待って居ますからね」
そうだろうな、三十五歳なら嫁も子も居ても可笑しく無いな。
嫌、逆に居なかったら困りものだよ。
俺も早く結婚相手を探して置こう。
「それでは、お気を付けて帰って下さいね。マニストに行きましたら
又よろしくお願いいたします」
サンスさんとジャンさんに別れを告げてから定番の薬草採取に行く。
王都は大きな街だから、薬草採取地は遠い午後からでは野宿確定だな。
何処かに野宿に適した処を確保したいな。
『ヘラ、昔の遺跡とかは近くに無いのか?』
『近くに有りますよ。王城の地下に』
それは近すぎだろう。
文明の発祥地は昔も今も同じだろう。
人は不便な所には住みたくは無いな。それと温暖な所が良いな。
酷寒な土地は暖房燃料も必要だし、雪搔きは嫌だな。
ドナルド・ハルゼーⅢ世閣下の頃から変わらないと思う。
『王都から適当に離れた所で薬草採取や魔物が討伐出来る所で
遺跡が有りそうな所は無いか?』
『〈検索 3.28秒〉三十八件ヒットしました』
『今回は検索に随分時間が掛かった様だね』
『五千万年前の施設の位置を、現在に置き換えるには不確定要素が大き
過ぎます。三十八件の内どれ程残って居るかは分かりませんよ』
『ハルゼー三世が居た所も、僅かにエネルギーが残って居たから施設も
生き残って居たのだろう。エネルギーが無ければ維持管理や自動修復も
出来ないので機能は停止して居るだろうな』
『ハルの記憶領域も地図機能は粗全滅して居ますね。地形が変わり過ぎて
居ますから、覚えて居ない方が良いと判断したのでしょう。
それと、昔は衛星情報で位置が分かりましたけど、戦争で一番先に
衛星は破壊されますから、今は宇宙空間には一機も残って居ないでしょう』
そうだよな、戦争もだけど他人を出し抜くには情報戦は必須条件だな。
特に戦争に成る前に相手の目と耳は封じるな。
そうなると、予備の衛星は確保するだろうな。
まだ打ち上げていない衛星か宇宙船等が何処かに眠って居るのかも知れないな。
まあ、見つけても使用不能だろうけど。
取り敢えずは、薬草採取しながら遺跡探しでもして見るか。
薬草も魔物も山が有る方に居る確率が高い。
王都の西に大きな山脈が有る。西門から出て人通りが途絶えた所で
ハルに抱えて貰って空中遊覧をしながら山脈方面に運んで貰う。
西には南北に連なる巨大な山脈が横たわって居る。
標高は、三千メートル以上は有りそうだな。
中腹の辺りに降ろして貰う。
『ハル、この辺り一帯の地図を作ってくれるか?』
『ご主人様ぁ~、了解しましたぁ~』
『ヘラは、地図が出来たら過去の遺跡とのズレを調べたら生き残って
居そうな遺跡が分かるのでは無いか?』
『そうですね、前世でも地殻の移動速度は年間四センチ程度です。
此の惑星も同じ様でしたら、五千万年も移動を続けたらとんでもない距離です。
でもそう単純では無いですね。移動距離も造山運動で相殺もされます』
『地図が出来るまでは、シュミレーッションでもして居てくれ。俺は
薬草でも探すよ』
『了解いたしました』
例の薬舗で値段の高そうな薬草一覧と薬草の群生地情報を仕入れて来た。
日当たりが良い所に育つ薬草と、日陰を好むもの薬草も色々だな。
前世で見た事が有る様な気がする。木を見つけた。
【鑑定】
名称:ザンショウ
種族:薬木 (別名実ザンショウ)
年齢:12
職業:木職
状態:良好
【能力値】
(生命力) :13/13
(魔 力) :32/32
(体 力) :8/8
(効 能) :スパイシーさと爽やかさ、フルーティーな香りが混じった
様な芳香が特徴。
そのまんま、山椒だよな。
でも残念ながら、今は春だ。実の採取時期は夏だな。
【鑑定】
名称:甘草
種族:薬草 (別名リコリス)
年齢:1
職業:草職
状態:良好
【能力値】
(生命力) : 3/3
(魔 力) :12/12
(体 力) :3/3
(効 能) :砂糖の数十倍の甘さがある、甘み成分のグリチルリチンを含
む。世界各地で古代から薬用として使用。日本では、明治維新以前まで調理の
際の甘味料として重視された。
ほう、此れは良いな。砂糖だよな。
この辺りで大量に採取して糖分を分離したら当分は(* ̄▽ ̄)フフフッ♪。
これも、根に養分を貯め込む蔓性植物は採取に適した時期が有る。
秋だよな、残念ながら。
その他にも色々な薬草を採取した。
それにしても、薬草は豊富に山の斜面に咲き誇って居る。
でも、何処にでも居るゴブリンとかの魔物が全然居ないのは何故だろう?
邪魔をされないので良いのだが。全く居ないのも不自然だよな。
『ご主人様ぁ~終わりましたよぉ~』
『ハル、終わったか。ご苦労さん。何処か変わった所は無かったか?』
『ご主人様、ハルにその様な事を聞いても無理ですよ。生まれたての
赤ちゃんですからね。ゆっくり寝かせて挙げましょう』
『そうだな、今からは野宿の準備をして夕食後に聞こうか』
『了解いたしました。ハルが調査した情報を精査して置きます』
近くの山肌で岩盤状の所を収納で掘削する。
最初の頃の様に背中を押しつけなくても良いので楽になったな。
収納量も無限状態なので、一㎥単位に綺麗に切り揃えて建材に仕える様に
収納する。
幅は四mで高さも同じ位にする。上部は半円状にして崩落予防に。
奥行きは取り敢えず十m程度で良いだろう。
入り口は塞いで置く事にする。防犯対策だな。
夕食を食べるのは俺だけだから、今日は収納食で終わらせる。
夕肉だよな、何か文句は有るのか。
マロニー商会で調味料は仕入れて居る。
食生活は随分と向上して居るのだ、嫁を貰っても大丈夫だぞ。
「遺跡の場所は分かりそう?」
「ハルの上空からの調査では、この国の周辺地域に巨大なクレーターが
所々に見受けられます。多分ハルか敵方のどちらかの攻撃の跡だと
思われます。その場所は大きな都市か軍事基地だった所でしょう」
「と言う事は、殆どの街が消えて無くなって居るよな。残って居たのは
ハルゼー三世が居た所だけなのかな」
「時間が経ちすぎて居ますから、エネルギーが残って居て何かが動作して居たら、熱感知とかで探せますけど。この辺りの山には火山も有りますから、
難しいです」
「良いよ、遺跡を絶対に探さなくてはいけない事では無いのだから。
有ったら良かった位で良いのさ。それより、この辺りには魔物が居ないね?」
「それは多分アレの性では無いでしょうか。A― 003号と言って居た。
ハルの後継機じゃないですか。魔物をクールタンとか言って居ましたよ」
「あいつらが魔物を造ってこの惑星に送り込んで居るのだな」
「転送装置の事も言って居ましたから、何処かで魔物を造って居るのでしょう」
「でも、魔物もタダでは出来ないよな。原材料とエネルギーは居るだろう。
前世でも、栄養分の有る海水中とかで植物プランクトンが出来てそれを
動物プランクトンが食べて食物連鎖が起きて頂点に人間が居たよな。
A― 003号も誰かの手足となって働いて居るのだろうけど。
何かメリットが無いと魔物を造ってこの惑星に送っては来ないだろうな?」
「そうですね。誰かがこの惑星で利益を得たいのでしょう」
「良くは分からないけど、此の惑星のエネルギーは魔力か魔力の元に成る
魔素が足りないのじゃ無いか?ハルが修復中に卵状態から完成形に成る
時間が三年掛かると言って居たけど、俺の魔力で早まったよな。
ハルゼー三世が居た地下施設のエネルギーも魔力不足だった可能性が
有りそうだけど」
「ご主人様が居た世界も、化石燃料の枯渇が問題に成って居ましたね」
「他人より良い生活をしたい。人類の欲望の為だったな。個人の欲望
家族の欲望、集落の欲望、国家の欲望。皆が幸せならボランティア活動も
出来るけど。他人を幸せにするには、自分に余裕が無いと出来ないよな」
「お腹一杯食べても食べる物が余って居ないと、お裾分けは出来ない
ですよ」
「この惑星のエネルギー不足も情報不足だな。知って居るのは爺さんだけ
かも知れないな。俺を送り込んだのも訳が有るのだろう」
「とにかく情報を集めましょう。この大陸の国勢情報も分かって居ませんから」
「それも大事だけど俺自身が強くなりたい。ハルが居るから大丈夫だと
思うけど、余裕は多く有った方が一番だからね。例の魔法が使えるも
進めて見ようか」
「はい、角兎が魔法を使えるか試して見ましょう」
「魔力が少ない魔物は大丈夫だと思うけど、ゴブリンクラスに成ると
魔法が使える物が出そうだから、ハルに待機して貰ってくれよ」
「了解いたしました。角兎にコピーしましたからやりますか?」
「今日はもう寝よう。明日から始めよう」
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朝起きてから、朝肉を食べて腹ごしらえを終える。
さあて、俺が魔法を使えるようになる階段を一段上る為の準備だ。
魔法使いの脳内からコピーした、魔法マスタースキルになるのかな。
それをコピーした角兎を収納から出す。
山裾の少し広くなった地面に横たわる角兎。
【鑑定】
名称 角兎
年齢:3
種族:魔物(ウサギ亜科)
状態:良好 (仮死状態)
【能力値】
(生命力) : 4/7
(魔 力) :3/5
(体 力) :7/7
(筋 力):8
(攻撃力):8
(防御力):8
(素早さ):13
(知 能):5
(器用さ):6
(感 知):8
(抵抗値):6
(幸運値):1
【スキル】
跳躍 Lv3 穴掘り Lv3
【マスタースキル】
土魔法 Lv1
俺が鑑定した初魔物になるのかな。栄誉を君に与えよう。
土魔法を取得して居る様です。
俺は、五m程離れて観察して居る。ハルは上空で姿を消して監視体制。
数分経過した頃に、やっと仮死状態から覚醒した様だ。
長い耳がピクピクと動き出した。瞼を数回上下に動かして視覚情報が
脳内に届いた様です。
俺を視認すると、勢い良く立ち上がり助走を付けて跳びかかって来ます。
この世界に着た頃の俺とは違うのだよ。最小限の動きで華麗に躱す。
数メートル行き過ぎて、此方に向き直ります。
態勢を整えて、暫く考えている様な素振りがします。
口元が歪みニヤリと笑った様な気がします。思い過ごしかな?
が! 突然に砂埃が角兎周辺に舞い上がります。
姿が消えました。地面に潜った様です。
主人公の命運はいかに。




