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その4 マチルダの下僕はたまに手を噛む

お久しぶりです。


得意の放置プレイをしていたら

マイブログにどこかのカメからの足跡がストーカーばりにつき、無言の圧力を感じて、おびえて更新しました。


 トニアに己の立場を理解させるべく、くぅ〜っと握り拳を作り、男にしては華奢な胸倉を掴んでいたその瞬間、先ほど、こちらを振り返りもせずに去って行ったイヤミ眼鏡が再度戻ってきたのだった。

 トニアの胸倉を掴んでいる私の格好を、上から下まで、冷めた非難めいた視線を浴びせ、

さすがに私も『ヤバっ』と思ってあわてて手を離したって訳。

 けど、あわてて手を離したところで、先ほどのシーンはバッチリ見られてしまっている訳で、もぅ遅いよね。ワハハハハ…。

 眼鏡は冷たいブリザードな視線を送り、私を見つめている。

 何だよ、何しに来たんだよっ。

「先ほども言いましたが…。」

「何でしょうか?」

「アナタの行動によってはまた新たな罪を負う事になります事を、くれぐれもお忘れなく。再度申しあげなくても、十分理解なされているようですけど。」

 

 くー!このイヤミ眼鏡めっ!

 

 トレードマークの眼鏡の中心を片手で押し上げ、冷やかな視線をよこす、眼鏡に負けてなるものかと、投げやりに

「はいはい。わかりました。」

「返事は一回で結構です。」

 

 くっ!細かい奴!内心イラッとしながら、

 

「で?何かお忘れ物でもしたのでしょうか?」

 眼鏡の正当な主張も無視して訪ねた。

「先ほどは、大事な事を告げるのを忘れました。王宮でお預かりする際には、それ相当の教養・知識などが身についているのがごく、

当り前の事ですので明日からでも、早速専属の教師をお付けするよう、

陛下にお伝えしておきますので。」

 

余計な事をするなぁ〜!このイヤミ眼鏡めぇ〜! 


 

 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

「トニアー!あんたのせいでまた怒られたじゃないの〜〜!」

「ストップ、ストップ!『暴力は反対だ!』ってマチルダいつも言ってるじゃん!」

「それは、私が受ける暴力は反対だって事!あんたが受けるのは一向に構わないわ。」

「わぁ、すごい、さすがマチルダ自論だね〜!」

 

 呑気でどこか楽しそうなトニアは、私についていれば人生退屈しないだろうと奴なりに踏んでいるらしく、私にどんなに理不尽な扱いを受けても受けても私の後を付いてくる。けど、たまにコヤツは私を裏切り、おとしめる。先ほどの一人でトンズラがいい例だ。だから私もたまにトニアをおとしめる。やるとなったら、とことんやる!ゆわばこれは、二人のおとしめ合いの二人の友情!?でもあるのだ。

 

「で。どうするの?マチルダ?」

「…逃げる。」

「でも、ドアは無理だよ〜衛兵2人もいたじゃん!」

「はっはっは!甘いな!トニア!ドアだけが出口だと誰が決めた?ドアが無理なら出口は他に作るまでよっ!」

 

 私はおもむろに窓際に近づき、窓を開け放つ!高さはそれなりだけど、隣には、うっそうと茂った木々が密集している。アレに飛び乗れば、下までは降りる事も可能なハズ。

 

「さっすが、マチルダ〜。先ほどのクロード様の言葉も全然聞いちゃあいないね。」

「人生あきらめたら負けよっ!」

 

 そうだ、そうだ!立ち止まって悩むより、思う道を進む!道がないなら、作るまで!

 

「で、どうするトニア?あんたもついてくる?」

「ううん。木登り昔から苦手だからやめておく。」

「そうでしょうね。小さい頃から苦手だったもんね。トニア、木登りのセンスないもんね!それは私が胸をはって保障したげる!」

「そんなセンスあっても嬉しくないな〜。それにそんな事で保障されても微妙だよ。」

 

 グダグダ言っているトニアを横目に、片足はすでに窓枠にかけたのち、

 

「じゃあ!トニア!あんたは自力で抜け出して、私の家で落ちあいましょう」

「うん、わかった。僕も後から行くよ!」

 

 その言葉を合図に、勢いよく片足に力を踏み込み、目をつけた丈夫そうな枝ぶりに飛び乗る。そこまで行ったらあとは早い。

 するするっと木から木を伝い、下に無事に着地した私は上で楽しそうに見つめるトニアに

 下からピースサインを送った。どんなもんだい!木登りなら得意中の得意なんだから!任せてよね!

 誇らしげにトニアに笑顔を送る。笑顔の先のトニアは、にっこり微笑み返しをし、いきなり窓際から姿が見えなくなった。

 ??? 奥に引っ込んだのか??

 

「誰か〜。チェルンザ商会のマチルダ様が〜。止めるのも聞かずに、下に降りて行かれました〜!」

 

 !!!!!

 

 トッ、トニア〜〜〜〜〜!!!

 

 おっ!おっ!お前というヤツはっ!!!

 

 一度ならず、二度までもっ!

 

 お前、本当にどっちの味方なんだよ!!

 

 

 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 執務室で先ほどの少女― というより珍獣を思い出し、自然に笑みが出てしまう。

 ついつい興味が先走り、手の内に置いておきたいという考えが頭をよぎったのは、

 ただの好奇心か、

 ただのきまぐれだろうか。

 それとも−。

 

「思い出し笑いとは、らしくありませんね、ライザス陛下。」

 

 私とは逆に難しい顔をしているのが、目の前の男、クロードだ。

 

 クロードはいつもお硬い表情だが、今日は眉間に皺をよせ、一段と硬い表情をしている。

 その硬い表情の理由は、もちろんアレの事だろう。

 

 クロードのいつものポーカーフェイスを崩させるとは、さすがだな。

 

 ある意味感心してしまう。

 

「先ほどのお話の続きをさせていただきますが。」

 と前置きし、例のアレについて、事細かく、細部に至るまでの行動を詳しく聞かせてくれた。

 

「ライザス陛下の気まぐれの意図が私めには、理解できかねます。」

 

 なおも熱く語るクロードに視線を投げ、クロードの熱弁を聞いていると、クロードの後ろの窓から何かが見えた気がした。

 

 んん…?

 

 なんだ…?窓から何かが飛び出た…?

 

 よくよく眼をこらして見ていると、茶色のふわふわした髪の毛の一部のようなもが木々の間から、チラホラ見える。

  じっと観察していると、どうやら木々の間をうまくすり抜けているようにも見える。

 

 猫か…?

 

 いや……!?

 

 

 !!違う!!!!

 

 

 

 猫だと思われたソレが地面に無事に着地し己が飛び出した窓を見上げている姿を見た瞬間、全てを理解した。

 

 思わず、勢いよく立ち上がってしまったため、クロードは、いつものポーカーフェイスを一瞬崩し怪訝そうな視線をこちらに投げかける。

 

 窓辺に近寄り、窓の先のアレに視線を投げる。遠目なので、目の悪いクロードは気付いていないだろうが、

 あの木々の間を上手く伝い、あっというまに下に着地してしまった。あまりにも見事に一瞬で下に降りてしまったので、

あの高さからと心配する余地もなかった。

どうしても逃げる気なのだろう。 

 


 逃がすものか、おもしろい。せっかく捕まえたのに。

 

 さて、どうしてくれようか。

 

思いもよらない行動力の凄さに、自然に笑みが口元に浮かんでしまう。

ヘイ!カメよ!受け取れ!


パアァァァァ〜〜〜〜スゥゥゥ!!!!


ありがとうございました。

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