その21
何だか、相方みつなさんは放置しすぎだと思います。
気まぐれな森の妖精トゥインコー(TWINKLE)がまたやってきました。
…とりあえず、お腹が空いてしょうがないので、腹を満たすため、食卓に座る。
目の前にはなぜかの、ラスがいるけれど。
腹が減っては戦は出来ぬ。
目の前の私の戦の相手を見つめながらも、まずは、空腹を満たすのみ。
それまで、一時休戦だよ、ラス!
空腹を満たしてから、再び闘いの舞台に立ってやるわ!
決して、あきらめたりはしないんだから。
☆ ★ ☆
料理を次々と口に運ぶ私をラスは、嬉しそうな顔して見つめている。
ちょ…
そんなに見つめないでくれる?
穴があいたらどうすんのさ?
「マチルダ」
「ん?」
私は口を動かすのに夢中で、返事なんてする暇ないっつていうのに、ラスは優雅にコーヒーを飲みながら話かけてくる。
「この肉は、一晩ワインに漬けて長時間煮込んだ羊肉だ」
そう言いながら、私にお肉の皿を差し出す。
「この、フルーツは甘味と酸味が絶妙に混ざっている」
また私にフルーツの皿を差し出す。
「このデザートは甘すぎず…」
「餌付けしようとしてない!?」
さっきから食べる暇も与えない程、いろいろ勧めてくるけれど。
そんなに次から次へと料理を勧められても目移りするわ。…まぁ食べるけどさっ。
ラスは笑い出したと思ったら、急に真剣な顔つきになり、テーブルの上で手を組みながら、こちらを真っ直ぐに見つめる。
「こうやって、マチルダと毎朝見つめ合いながら朝食をとれるなら、俺はどんなに幸せな事かと思う」
「そ」
だったら、永遠に夢に思い描いていて下さい。
毎朝、こんなに見つめられていたら、それこそ私に穴があくと思うのでご遠慮します。
「マチルダ、選択肢をあげようか」
何だか、爽やかそうな笑顔を浮かべるラスだけど、次の瞬間あの口からは、きっと真っ黒な台詞が紡がれると本能で察知した。
「これから先、マチルダは、借金と不敬罪を抱えて生きる日々と…」
次の台詞は、聞いてはいけない、いけないと本能が発する…
「俺と共に、生涯を生きる事。どちらがいいと思う?」
案の定、私は口に含んだ、コーヒーをむせた。
何じゃ!その究極の選択!
「その二つしかないんかい!」
「あっはっは!」
愉快そうに笑うラスに、つっこむ私。
「まぁ、マチルダと俺がこうなるのは、昔から決まっていたという事だ。ここに、昔交わした署名つきの手紙まであるし」
「キモッ!」
何だか、爽やかに強引に笑顔を浮かべるラスを見ながら、背筋がうすら寒くなる感覚がしたが、きっと気のせいだ。負けてはいけない、負けられない、流されてはいけない。
きっと、食べたりないのかも、私!
そう自分自身に言い聞かせ、テーブルの上の料理に再び手を伸ばす。
以上、森の妖精トゥインコー(TWINKLE)でした!