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その19 敵の根城にうかうか入り込んだ事に気付いていない箱入り娘。

お待たせしました―――!!

 


 おいおいおい!

 何事だよ、この証文は? うちのお父様が取引する時に使う判まで押されちゃってますよ? 

 って事はあれですかね、これは幼い娘をそそのかして書かせやがったとかいうヤツですかね?

 それを後生大事に保管している、この目の前の若造だよ、問題はさぁ!

 こ、怖いぃぃぃ!


 そんな内心で渦巻く色々な想いを押しやって、精一杯、しおらしく猫なで声を出してみたさ。


「んっね! ラス?」


 対するラスも負けちゃいなかった。


「何だい? かわいいマチルダ」


 にっこり。

 きらきらと何か飛んだよ! 飛んできたよ!

 この王族ならではの人を魅了し、なおかつ人を圧倒し平伏させる威力を振りかざすのは、止めぃ!!


「こ、これってどういう意味なのかしら?」

「ん? 見たままだけれど。ちゃんと声に出して読んでみるといい。そうしたら、もっとよく理解できる」

「そうね。そうかも。ラスへ。マチルダは……って!! 読めるか―――! 何、言わす気だ―――!!」

「ちっ」


 もう少しだったのにとか呟いて、舌打ちしたよ! この男! 

 どれだけきらきら王族スマイルで己をねじ伏せてはいても、顔を覗かせる腹黒暗黒魔人の本性ってヤツっすか。


「ところでマチルダ。疲れただろう? もう、休みたくは無いかい?」

「そりゃ心身共々、疲れきっているけど」


 こんな恐ろしいモン突きつけられたら、誰だって眠気も疲労も吹っ飛ぶと思わないのか。


「そうだろう、マチルダ。もう休もうか。一緒に」

「何言ってんの頭大丈夫? じゃなかった、もんね、ラス。しっかり」


 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★


「え?」

 身体に力が入らない。


 しかも目蓋を開けていられない。


「ははは。どうしたんだい、マチルダ? 急に眠気を自覚したかな」


 どうもこうもあるかい!

 おま、ちょ、一服盛りやがっただろう!


「マチルダ……。目が覚めたら、楽しみだな」


 うっわ。これ、犯罪だよ! ラスめ!

 は、嵌めやがったなぁぁぁぁ!!


 抗う目蓋の向こうで見たのは、これでもかという極上の笑みを浮べたラスの顔だった。

 ラスの指先が額の髪をくすぐるように払う。


 ほっぺたの辺りに温かい感触。

 押し付けられるそれは、ラスの唇だと知っているワタシ。

 慣れって恐ろしいね。


 最後の気力を振り絞って手中にある恐ろしい、まちるだちゃんのお手紙をぐしゃぐしゃにしてやろうと思ったんだけど……無念。


 意識を保てたのはそこまでだった。


『なんかもう。』


マチルダが面白いくらい素直に罠に掛かるので、ラスは笑いが止まりません。


それでいて、もう少し追いかけて遊びたかったなぁとかほざくの止めぃ。


このまま、イタダキマスって感じ?


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